「脱炭素の次は水」。企業が迫られるリスク対応 先進企業から学ぶべき「流域での連携」戦略
東洋経済オンライン / 2024年4月20日 8時0分
EDEKAは、こうした土地で生産されたバナナを販売する企業として、流域の水リスクである渇水や水質汚染に対し、取り組むことにした。
具体的には、特定された重要な拠点や流域で責任ある水利用管理を始める際に、優れた指針のひとつとして参考にすることが可能な「AWS(Alliance for Water Stewardship)認証」 を複数のバナナ農地で取得した。責任ある水利用管理ができていることを、第三者機関による認証を得ることで証明し、透明性や信頼感の確保につなげている。
「流域」視点で考える協力の枠組みづくり
しかし、水リスクへの対応は、特定の農地・産品での生産改善や認証取得だけでは不十分だ。一農地や一事業所ではなく、「流域」という広い視点を持ち、協力体制を構築する必要がある。
例えば、自社拠点や特定の農園だけで水の取り組みを進めても、流域全体で見たときには、効果は非常に限定的になる。流量の確保や水質改善、淡水生態系への影響など、効果を生み出すには、流域全体で取り組まなければならない。
そこでEDEKAは筆者が所属する環境保全団体WWF(世界自然保護基金)と協力し、関連企業、農業者、行政、学術機関など複数のステークホルダーによる流域全体での協力の枠組みを立ち上げた。このような協同活動は、コレクティブアクション(Collective Action)と呼ばれる。
コロンビアでのコレクティブアクションは、流域全体で水や淡水生態系への正の影響を生み出すため、中下流域のバナナ農地だけでなく、より水への影響力が大きい上流で取り組むことに意義がある。
コレクティブアクションの取り組みは、現地の人々の暮らしにも貢献している。農業者にとっては、農薬・化学肥料の削減はコスト削減にもなり、この枠組みに参加することで、販路や取引価格が安定する。健全な水と淡水生態系を守ることで、水質の維持・改善につながり、下流の漁業対象種の保全にも貢献し得る。
「ローカルな知識を生かしながら、食料生産をよりサステナブルにしていくことは、現地コミュニティの食料供給の確保、ひいては流域に関わる人々同士の連携や信頼を深めることにもつながる」と、EDEKAの水担当者は述べる。
企業の目標設定に関してはいくつか指標がある。EDEKAが採用したのは、WWFが開発した「責任ある水利用管理/ウォーター・スチュワードシップ」というプログラムだ。
責任ある水利用管理のポイントは、自社拠点などでの水使用量や環境基準の順守といったマネジメントの枠を超え、バリューチェーンも含め企業にとって関わりのある流域での持続可能な水利用管理が求められる点にある。
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