「コスパ主義者」に感じてしまう薄っぺらさの正体 Z世代が気づいていない「コスパ志向」の弱点
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 9時0分
若者言葉として浸透し、もはや誰もが目にする「コスパ」。できるだけ低コストで高い成果を得たいと思うのは当然だし、それが実現するなら素晴らしいことだ。しかし同時に、なんとなくコスパを信じきっておらず、どこか薄っぺらく感じている人もいるはずだ。
企業組織を研究する東京大学の舟津昌平氏は、経営学における効率(efficiency)と効果(effectiveness)の概念を用いて、コスパに傾倒する「コスパ主義」がなぜ危険なのか、どう回避すればよいのか指摘する。
本記事では、舟津氏の著書『Z世代化する社会』の内容に沿って、Z世代を中心として社会を席巻するコスパ概念について、その問題点を浮き彫りにする。
理解できるけど、どこかモヤモヤする「コスパ」
コスパ・タイパという言葉が浸透して久しい。コストパフォーマンス・タイムパフォーマンスの略語で、かけた費用・時間に対して得られる成果(パフォーマンス)の比率のことを指す。「コスパ」で検索すると、「コスパ最強の資格」とか、「コスパの良い受験勉強」とか、関連検索では「結婚」なんてワードすら出現する。結婚にもコスパを求める時代なのだ。
またコスパ・タイパは、Z世代と呼ばれる若者の特徴だとも言われる。Z世代「だけ」コスパ志向が強いような言い方をしつつ、実際は社会全体に浸透している気もするが……。という話を拙著『Z世代化する社会』では解説しているので、ぜひご一読いただきたい。それはおいておくと、このコスパという言葉は、現代で本当に強い影響力をふるっている。
少ない労力で大きな成果を得る、がコスパの本義だとしたら、そりゃ万人にとって良いことのはずであって、なんら非難されるようなことではない。だがしかし、コスパという概念を扱うとき、どうしても侮りが生まれるというか、薄っぺらさを感じてしまう方も少なくないだろう。
明らかに魅力的なのに、軽薄さも備えている。流行りに対してマジメに異議を唱えるのも難しいこの世の中で、この矛盾の謎について考えたい。
行きたくないです、コスパが悪いので
「コスパ」が現実で、かつイマドキな感じで用いられそうな例を考えてみよう。職場で、上司が若手社員にアドバイスする。
「今度来られる方は、この業界のベテランで、とても経験ある方だ。夜に食事をご一緒できるみたいだし、気さくな方だから、ぜひお話を聞いてきたらいいよ」
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