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「コスパ主義者」に感じてしまう薄っぺらさの正体 Z世代が気づいていない「コスパ志向」の弱点

東洋経済オンライン / 2024年4月24日 9時0分

「これだけ費用がかかるなら止めよう」となることもあるだろうし、「結果的に少しでも顧客が増えるならやりましょう」という結論も納得できる。企業や部署の置かれた局面、あるいはKPIによって、どちらを優先すべきかは異なる。しかし、コスパ重視に偏りすぎると、前者ばかりを採用してしまうことになる。

すべての意思決定において費用主義を採用する「コスパさん」は、きっとこんな生き方をしている。

「あの資格、試験勉強のコスパ悪いので切りました。やる意味ないです」

「懇親会?仲良くなるために数千円ってコスパ悪いですよね。不参加で」

「結果が不透明な新しいことするのって、コスパ悪いんじゃないかな」

これらの物言いに嫌悪感をもった方もいれば、わりと共感できるという方もいるだろう。ただ気にしないといけないのは、コスパさんは、これらの意思決定の結果として特に何も得ていないという点だ。資格も取れてないし、同僚と仲良くもなれていない。新しいことにチャレンジして得たものもない。何も払っていない代わりに何も得ていない。コスパさんは悲しいことに、成果ゼロさんでもあるのだ。

「パなきコスパ」に気をつけて

コスパ志向をのたまう人々がどこか薄っぺらい原因も、ここにある。なんでもコスパで決めているから、ほとんどの機会を放棄してしまって、結局たいした成果は得られていない。コスパは「パ」も大事なのに、コスパ主義者は「コス」ばかり気にするケチんぼなのだ。「パなきコスパ」こそ、コスパ主義の最たる弊害だといえるだろう。

コスパはとても重要な概念だ。結果的に多くの成功を収めている企業や人も、コスパを気にしていないわけがない。ただ、そういった成功の多くは、費用主義と結果主義という二つの基準をうまく使い分けているから得られるものだ。ときには「急がば回れ」の結果主義で、コスパ主義者が卒倒しそうな効率の悪い努力を重ねて、やっと得られる成果もある。そして、そういう成果ほど他者(社)にはマネできない、模倣困難なものになる可能性が高い。だって、みんなそんなコスパの悪い努力をしないのだから。

10得るために10を費やしている状況から、それを9、8、7と減らしていくのが費用主義。ところがコスパ主義が行き過ぎると、その7や8がもったいなく感じて、努力を止めてしまう。結果的に得られる成果は0である。

みんな5を費やして10を得ている。じゃあ30費やしてでも15得たら、勝てるんじゃないか? コスパの時代である現代では人気のなさそうな考え方だが、ときにはそういう考え方もアリじゃないだろうか。というか、そういう考え方をしないと勝てない勝負もある。コスパコスパと誰もが標榜する世の中だからこそ、逆に泥臭い結果主義が優位に立つ可能性が高まるのだ。

大事なのは使い分けの妙

ただ、費用主義が悪くて結果主義が良い、と言いたいわけではない。結果主義が先鋭化すると、いずれ「24時間働けますか」と、過重労働を肯定する世の中になっていく。無限にコストをかけられるわけじゃないし、無限にコストを投入するのは愚策でもある。二択にするんじゃなくて、二つをうまいこと使い分ける器用さこそが求められる。

コスパはたしかに大事である。ただコスパのみに傾倒するんじゃなくて、費用主義と結果主義の長所短所を理解して使い分けないと、薄っぺらいヤツになってしまう。経営学は、そういうことも教えてくれている。

舟津 昌平:経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師

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