「コスパ主義者」に感じてしまう薄っぺらさの正体 Z世代が気づいていない「コスパ志向」の弱点
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 9時0分
ところが若手社員は、ぶぜんとして答えるのである。
「その経験とかの話って、2~3時間や数千円使って得るようなものなんですかね? コスパ悪くないですか?」
そもそもそんな物言いは失礼でしょ、というまったく正当な意見は無視しておくと、上司はキレそうになる心を抑え、でも同時に納得感をもつかもしれない。まあ、考えてみると数千円は安くはないし、それだけの価値があるかと言われると……。数千円の本を買って読めって言われたら躊躇するしなあ。今まで自分は何千円も払って何度も飲み会に付き合ってきたけど、あれってすごくコスパ悪いのかもしれない。
そういう場合はだいたい多少は奢ってもらえるし、会社から補助が出ることもあるよ、とか細かい追加情報はあれど、たしかに「2時間3000円のコスパ」といざ突き付けられると、ウっとなってしまう。それはまったく安い買い物ではない。じゃあ、行く意味なんてなくなってしまう。若者の飲み会離れとか言うけど、これが、現代を支配するリアルなコスパの論理なのだ (ちなみに、若者は別に飲み会離れしていない。拙著参照)。
ここで、経営学の知見を紹介したい。企業組織の成果を測定するときによく用いられるのが、効率(efficiency)と効果(effectiveness)である。「効率」は日本語での用法ほぼそのままで、わかりやすい。ある程度結果が見えていることに対して、いかに効率よく結果を得るかを重視する考え方。「コスト削減」や「カイゼン」は発想が近く、日本のものづくり企業が得意としてきた分野である。コスパも、ニュアンスはちょっと異なるものの、効率にのっとった概念であるといえる。
対して、「効果」である。これはeffectivenessの訳語で、日本語で効果と言ってしまうとかえってわかりにくいので、ここでは意訳して「結果主義」とでも表現しよう。effectivenessは、「結果的に成果が得られたのか」を気にしている。つまり効率(efficiency)と効果(effectiveness)の違いとは、「費用(コスト)主義」か「結果主義」か、という違いだといえる。
「コスパさん」は「成果ゼロさん」?
具体例を考えよう。メーカーが、自社製品の販促のためにあるキャンペーンを実施した。1回目は、まあ大成功ではないが失敗でもない。そして、2回目のキャンペーンを行うかを合議している。「このキャンペーン、コストがかかりすぎているよね」ということが主な議題になるなら、これは費用主義だ。対して、「このキャンペーン、結局どのくらい効果あったんだっけ」というのが結果主義。もちろん常にどっちが妥当であるか決めることはできず、状況によって採用される基準は異なっている。
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