米国の追加支援でウクライナ軍はどう変わるか パトリオットにF16戦闘機、砲弾枯渇状態に恵みの雨、
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 18時0分
一方、NATOの欧州諸国はロシアによるNATO加盟国への軍事的攻撃の可能性をめぐり、喫緊の課題として取り組んでいる。ドイツ軍のカルステン・ブロイアー総監は最近、今後5年から8年間で、ロシア軍が軍事態勢上はNATO諸国への攻撃が可能になるとの見方を示したうえで、これに備えた防衛力の整備を急ぐべきと指摘した。
NATO加盟の欧州諸国が現在のウクライナ侵攻について、もはやモスクワとキーウの間の2国間戦争ではなく、ロシアと欧州全体との「欧州戦争」に拡大する可能性があるとの厳しい現状認識を持っていることを示したものだ。
こうした欧州の新たな対ロ姿勢との関連で筆者には岸田文雄政権に注文したいことがる。対中関係と並んで、ウクライナ情勢に対する日本のあるべき対応について、きちんと国民に説明してほしい。
先の日米首脳会談は両国関係について、地球規模の諸問題で共同対処する「グローバル・パートナー」と位置付けた。おまけにアメリカ連邦議会の上下両院合同会議で行った演説で岸田首相はウクライナ情勢に関連して、北朝鮮によるロシアへの弾道ミサイル輸出によって「ウクライナの苦しみを増大させている」と直接的に述べた。
これは正しい情勢認識と筆者は評価する。しかし、ここまで言い切った岸田首相には、先述したように、ロシアのミサイル攻撃に苦しむウクライナが各国に求めているパトリオットの供与を日本も行う必要があることを率直に語ってほしい。
日本政府はすでに2023年12月、アメリカ企業のライセンスに基づき日本で生産するパトリオットの弾頭部分のみのアメリカへの提供を実施した。アメリカ経由でウクライナに渡る事実上の「間接供与」である。
日本政府による「間接供与」
直前に防衛装備品の輸出ルールを定めた防衛装備移転三原則と運用指針を改定したうえでのスピード実行だった。しかし大幅なルール緩和であるにもかかわらず、岸田首相は自民、公明両与党の実務者による密室協議で作業を進め、十分な国会論議も行わなかった。
岸田首相には、先述したように発射装置を含めてパトリオットの不足に苦しんでいるウクライナへの現状について国会できちんと説明し、そのうえで、攻撃兵器ではなく、住民を空爆から守る防御用兵器であるパトリオットの発射装置ごとの供与を実現するよう求めたい。
吉田 成之:新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
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