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氷の国なのに…アイスランドが「トマト大国」な訳 農業を支える火山大国ならではの資源活用

東洋経済オンライン / 2024年5月1日 11時20分

アイスランドのレストランで味わったトマトスープ(写真:筆者撮影)

あるときはキューバの家庭の台所に立ち、またあるときはブルガリアでヨーグルト料理を探究して牧場へ向かう。訪れた国と地域は25︎以上、滞在した家庭は150以上。世界各地の家庭を巡りながら一緒に料理をし、その土地の食を通じて社会や暮らしに迫る「世界の台所探検家」の岡根谷実里さん。今回訪れたのはアイスランド。氷に覆われた真冬の大地で目にしたのは、真っ赤な実をつけるトマト農園だった。

白い大地で存在感を放つトマト

世界地図を見ると、こんなところにも人が住んでいるのかと気が遠くなる土地がある。

【写真で見る】アイスランドのトマト生産最大手フリードヘイマル社の温室ではトマトの木が並びまるで「森」のようだ

アイスランドも、そんな国の1つだ。北の果て、特に日本を中心とした世界地図では左上(北西)の隅にぽつんと描かれていて、最果ての感がある。実際、北緯63〜67度という北極圏にぎりぎりかかる極北にあり、気軽に行こうとは思わない土地だった。

この国の家庭を訪れることにしたのは、「寒い土地の寒い時期の食事情を知りたい」という興味からだった。

滞在を経て印象的だったのが、自然環境の制約を受けた食事情の厳しさだ。冬が長い、木が乏しい、穀物が育たない。

しかしその中で、ことさら存在感を放っていたのが、真冬でもとれる真っ赤なトマトだった。本稿では、自然の制約を受けたアイスランドの食事情と、トマト生産について紹介したい。

アイスランドを訪れたのは、真冬の1月のことだった。付近を流れる暖流のおかげで寒さはそれほどでもないのだが、とにかく日が短い。昼間と言えるのは5時間ほどで、家にこもりがち。出会うすべての人に「来る時期を間違えているよ」と言われた。確かに観光で来るならば完全に間違えているが、厳しい時期の食を知りに来たのだから、仕方ない。

それでも雪に覆われた大地は雄大で美しく、滞在先の家族は街を離れてドライブに連れていってくれた。

首都レイキャビクから車で1時間半。真っ白で遠くまで見渡せるはげた大地を走り続け、「ランチにしよう」と言われて車を降りたら、ガラス温室が何棟も立ち並んでいた。こんなところで食事ができるのだろうか。

トマト畑の横には大型レストラン

中に入ると、温かくむっとした空気に迎えられた。トマトの木が列になって植えられ、上には人工照明、下には温水パイプが走っている。日照、温度、土壌水分を自動管理して栽培しているのだそうだ。この温室農場を運営するFriðheimar(フリードヘイマル)社はアイスランド最大手のトマト生産者で、毎日平均1トン以上のトマトを出荷している。

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