WBCを「クールで特別」に昇格させた大谷の功績 勝利へのこだわりとドラマチックな展開で魅了
東洋経済オンライン / 2024年5月9日 15時0分
大谷翔平選手のメジャーリーグでの軌跡を取材し続けてきた志村朋哉さんが、2人のアメリカ人記者と鼎談。1人は地元紙ロサンゼルス・タイムズでスポーツコラムニストとして働くディラン・ヘルナンデス氏。彼は、大谷にメジャー移籍前から注目して取材を続けてきた人物です。そしてもう1人は『ジ・アスレチック』で、大谷選手がブレークした2021年から番記者を務めるサム・ブラム氏。ほぼ全てのエンゼルスの試合を球場で取材するサムは、大谷を取り巻く環境に精通しています。
本記事では『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』から一部を抜粋、再編集し、2023年のワールド・ベースボール・クラシックにおける大谷選手の活躍を振り返ります。
志村朋哉(以下、トモヤ) 2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、僕は久しぶりに野球であんなに熱狂した。
【画像で見る】“侍ジャパン”がアメリカを下した決勝戦はドラマティックな展開に
特に決勝戦の最終場面で、大谷とマイク・トラウトが対戦した時は、「現実でこんなドラマチックなことが起こるのか」と興奮が最高潮に達したよ。
ディラン・ヘルナンデス(以下、ディラン) スポーツで一番難しいのは、みんなが期待している時に、それに応えたり、上回る結果を出すことだと思う。
たとえば、メッシでさえ、22年までは、ワールドカップで期待されているような活躍ができなかった。
僕らメディアにも責任があると思う。過剰に煽ってファンを期待させてしまうから、アスリートがその期待に応えるのは、なかなか難しい。
だからこそ、タイガー・ウッズのようなアスリートは特別。彼がプロになった時、史上最高のゴルファーになるんじゃないかと期待されていたけど、それを上回るようなパフォーマンスを見せた。
WBCでの大谷は、それに近い感じだった。しかも野球では、良いスイングをしても、運が悪くて結果に繋がらないこともある。頑張っても報われないことがあるスポーツで、チームを勝利に導こうとする意志が感じられた。
最後のトラウトの打席は、永遠に歴史に刻まれる瞬間だと思うけど、メキシコ戦で劣勢に立たされていた時の打席が、僕は印象に残っている。
たぶん6インチくらい外角に外れていたんじゃないか。それをヒットにするんだから。
試合後に確か、「出塁しようと決めていた」って言ったと思うけど、「決めていた」ってねえ。
確かに漫画の世界のことのようだった。彼の内面で起きていたことが、パフォーマンスとなって発揮されたシーンだった。
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