桃の節句に作りたい 盤台もうちわも必要なし!?「すし飯」の極意

ウェザーニュース

2月の後半は季節外れの暖かさかと思えば急に寒さがぶり返すなどしましたが、3月はじめは春らし暖かさになりそうです。

3月3日は桃の節句。子どもの健やかな成長への願いを込めて旬の食材を使ったご馳走を作るのも楽しみなものです。

そこで家庭で気軽においしいすし飯を作る極意を、日本料理の名店、和食料理人で家庭でも実践できる料理の極意を伝授している野﨑洋光(のざきひろみつ)さんに教えていただきます。

桃の節句に作りたいすし飯

桃の節句は菱餅や蛤のすまし汁、ちらしずしなどの行事食も楽しみなものです。地域や世代によっても様々ですが、最近は華やかな手まりずしやケーキずしの人気も高いようです。

すし飯作りは、やはりご飯の炊き方や盤台の使い方など特別なのでしょうか。「コツを抑えれば、誰でも米の味をいかした美味しいすし飯が作れます。実は家庭で作るすし飯は盤台やうちわは使わなくても、上手にできるものです」と野﨑さんは言います。

「すし屋のようなプロは、大量にすし飯を準備しなければなりません。余分な水分や熱がこもってしまわないように、盤台やうちわを使うのです。

しかし、家庭で2〜3合くらいの量を作るのであれば、ボウルやバットで十分に熱や水分は飛んでいきます。炊飯器でご飯を炊くのなら、内釜にすし酢を混ぜて作るのでも大丈夫です」(野﨑さん)

ほかにも、“常識”と思われていることに見直したいものもあるようです。

「米は“研ぐ”のではなく、さっと“洗う”ので十分です。昔の米にはぬかがたくさんついていたので研いで落とす必要があったのですが、精米技術の進んだ現代のお米では事情が違います。それどころか力を込め過ぎると米が割れる原因になります。

洗米で気をつけたいのは、最初の水を素早く捨てることです。ぬかを多く含んでいる水を米が吸ってしまわないようにしたいからです。

すし飯用のご飯を炊くときに、昆布を入れる必要もありません。最近のお米はとても美味しいので、そのまま炊いても素晴らしいすし飯になります」 (野﨑さん)

すし飯の作り方のポイント

野﨑流すし飯の作り方を教えていただきましょう。

（1）米を洗う
米はさっと洗い、15分浸水させ、ザルに上げてさらに15分おく

（2）ご飯を炊く
洗い米の2割減の水の量で炊く。炊飯器の場合は「早炊きモード」「かためモード」で

（3）すし酢を作っておく
ちらしずし用：酢180ml、砂糖120g、塩50g
にぎりずし用：酢180ml、砂糖90g、塩40〜50g
いなりずし用：酢180ml、砂糖10g、塩10g
※米1合につきすし酢大さじ2強を使う
※いなりずしは油揚げの味にもよるので、すし酢の味は油揚げに合わせて調整して下さい

（4）ご飯にすし酢を混ぜる
ご飯をボウルやバットに移し、すし酢をかける。しゃもじで手早く切るようにまんべんなく混ぜたら、すし飯を縁の方へ広げて水分や熱を飛ばす

（5）すし飯を冷ます
固く絞った濡れぶきんをかけ、人肌程度まで冷ます

「すし飯用のご飯は後ですし酢を加えるので、いつもより水を減らして炊きます。

すし酢のレシピは作りやすい分量で紹介しているので、米1合につきすし酢大さじ2強の割合を使って下さい。

すし酢は、作るすしによって味付けが異なります。ごはんを味わう料理であるちらしずしは味をしっかりつけ、にぎりずしはしょうゆをつけて食べるので薄め、いなりずしは油揚げに味がついているのですし飯はさっぱり仕上げます」(野﨑さん)

野﨑さんは、家庭料理には家庭ならではの楽しみ方があるといいます。

「プロの料理人は大勢のお客様に変わらぬ味を提供するよう準備するものですが、家庭では、家族が食べるぶんだけ食べる直前に作ることができます。家庭ではもっとシンプルに美味しくできるのです。

例えば、すし飯も少量ならば、普通に炊いたご飯の上の方を取って作るという裏技もあります。

すし飯も、必ずしも冷まさなければならないわけではありません。人肌程度の温かいすし飯に刺身をのせて食べると美味しいので、ぜひ試してみて下さい。家庭で作ってすぐに食べるのなら、生の刺身を温かいご飯に合わせても、衛生面での心配もありません。

なお、紹介したすし酢は蓋つき保存容器に入れて冷蔵庫で保管すれば3ヵ月ほどはもちます。思い立ったときにすしがパッと作れて便利ですよ」(野﨑さん)

野﨑流のすし飯の作り方を覚えておけば様々なすしに応用できて、季節ごとの楽しみも広がりそうです。