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追い詰められないと発揮できない力もある…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年3月4日 20時0分

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「remontada(レモンターダ/逆転劇)発動条件を満たさない日もあるのね」そんな風に私が溜息をついていたのは木曜日、コパ・デル・レイ準決勝クラシコ(伝統の一戦)1stレグでレアル・マドリーが最後まで1点差を返せず、バルサに0-1で負けてしまった時のことでした。いやあ、先日はリーガのマドリーダービーで残りたった15分しかなかったにも関わらず、アトレティコが追いつかれ、1-1で引分けるのを目の当たりにしたばかりだったんですけどね。でもよく考えると、マドリーがDecimocuarta(デシモクアルタ/14回目のCL優勝)を達成した昨季、あの尋常とは思えない決勝トーナメント3ラウンド連続レモンターダは全て2ndレグでの出来事。

要はまだ後がある場合、彼らもお家芸のスイッチが入らないのか、うーん、先週のCL16強対決リバプール戦1stレグでは2点差をつけられてから、最後は2-5の大勝に持っていきましたけどねえ。一発勝負のコパ16強対決ビジャレアル戦でも前半に2点リードされてから、逆転突破しているとなると、肝はもし、バルサに1点だけではなく、2点取れられていれば、サンティアゴ・ベルナベウの観客も再び、あの興奮を味わうことができたのかもしれないといった辺りになりますが、まあ、とりあえず、コパ・クラシコ第1弾がどんな試合だったのか、振り返ってみることにすると。

ヨーロッパの大会が中休みとなった今週は水曜からコパ準決勝1stレグが始まったんですが、先行したエル・サダルでのオサスナvsアスレティック戦では後半2分にアブデがゴールを決め、18年ぶりの決勝進出を夢見るホームチームが1-0で勝利。まあ、こちらも僅差ですし、サン・マメスでの2ndレグは4月4日(火)と随分、先のことなので、今からあれこれ想像しても仕方ないんですけどね。ただ、2020年、2021年には連続準優勝するなど、決勝には結構、頻繁に行っているものの、1984年以来、コパ優勝を果たしておらず、クラブとファンの悲願であるガバラ(ビルバオの運河で使われた木材運搬船)に乗っての水上パレードをやりたいアスレティックはかなり引きずってしまうかも。

それがこの週末、日曜にエスタディオ・バジェカスに彼らを迎えるマドリッドの弟分、ラージョにとって、有利に働くといいんですが、何せ、イラオラ監督のチームもこのところ、2分け1敗とペースを落とし、EL出場圏の6位とはいっても7位のビジャレアルと同じ勝ち点になってしまいましたからね。9位のアスレティックとも2差しかありませんし、あと6と迫った1部残留ほぼ確定の勝ち点40になるたけ早く近づくと共に、バジェカスのファンたちが歌う、「La temporada que viene Rayo Liverpool/ラ・テンポラーダ・ケ・ビエネ・ラージョ・リバプール(来季はラージョvsリバプール戦)」を実現できるといいのですが。

そしてまたコパに話を戻すと、木曜はもう3月になったというのに相変わらず極寒のサンティゴ・ベルナベウ夜9時、この先、ほぼ2週間ごとに3回もあるクラシコ祭りが開幕。キックオフ前にはfondo sur/フォンド・スール(ゴール裏南側スタンド)にマドリー紋章の巨大モサイクも現れ、まあ、スペイン2強の対決ですから、どちらも序盤から気合は入っていたんですけどね。残念ながら、12分にベンゼマが決めたシュートはオフサイドでゴールにならず、まさかビニシウスが最初にイエローカードをもらうことになるとは。そう、前半24分にデ・ヨングとボールを争い、2人で掴み合いになった挙句、マドリーの20番が相手の首に腕を回して倒すという感じだったんですが、え?それってもしや、今年の1月にあったお隣さんのサビッチとバルサのフェラン・トーレスのプロレス対決を彷彿させないかって?

そうですね。ただ、メトロポリターノの地面に転がってからも戦っていた彼らは両者レッドカードで退場、共に2試合出場停止という厳しい罰を受けたのに対して、この時はビニシウス1人がイエローをもらっただけで、うーん、翌日の記者会見でシメオネ監督も「Viendo las imágenes también nos lo preguntamos/ビエンドー・ラス・イマヘネス・タンビエン・ノス・ロ・プレグンタモス(映像を見ていて自分たちも疑問に思った)」と言っていたんですけどね。おまけに前節のマドリーダービーでは小柄なコレアが後ろ手で払っただけで194cmのリュディガーが倒れ、問答無用でレッドカードを出されたアトレティコだったため、このジャッジの温度差は何なんだろうと思う向きも多かったかと思いますが、退場は2ndレグにも影響しますし、とりあえず、ここは大ごとにならなくて良かったんじゃないでしょうか。

でも一難去ってまた一難。というのもその2分後にはスローインからのボールをカマビンガがロスト、フェラン・トーレスにボールを繋がれ、いえ、ケシエのシュートはGKクルトワが弾いたんですけどね。「Encajamos el gol con mucha mala suerte. La paro y de rebote da en Militao/エンカハモス・エル・ゴル・コン・ムーチャ・マラ・スエルテ。ラ・パロ・イ・デ・レボテ・ダ・エン・ミリタオ(とても運が悪いゴールを入れられた。ボクは止めたんだけど、リバウンドがミリトンに当たってね)」と当人も言っていたように、ケシエを追いかけていたチームメートがオウンゴールを献上してしまったから、さあ大変!

それも最初はオフサイドで無効とされていたのが、VAR(ビデオ審判)注進により、スコアボードに上がることになるとはツイていませんが、何せまだ時間はたっぷり残っていましたからね。私などもどうせ、残り10分ぐらいにはレモンターダが始まるだろうと達観していたところ、どうも様子が変なんです。後半に入り、マドリーは22分にはナチョに代え、アンフィールドでのケガが治って戻って来たロドリゴを投入。カマビンガを左SBに移す攻撃強化体制に入ったんですが、バルサをずっと自陣エリア付近に押し込みながらも全然、チャンスらしいチャンスが作れないのは一体、何故?

その相手の状態は「低い位置に引いて、11人の選手がエリア内で守るようなスタイルは理解できない。No es nuestro estilo/ノー・エス・ヌエストロ・エスティーロ(それはウチの流儀ではない)」と、まさにチャビ監督自身、昨年のアトレティコ戦の前に発言していた通りのものだったんですけどね。一応、当初はボールを持って主導権を握る計画だったようですが、「Hay momentos en los que el rival te puede dominar/アイ・モメントス・エン・ロス・ケ・エル・リバル・テ・プエデ・ドミナル(敵が支配する時間もある)。どうやってモドリッチやクロースからボールを奪えと?ウチはボールをキープできなくて、敵陣でのドゥエルにも勝てなかったが、ボールを持たずに上手く守った」(チャビ監督)という結末になってしまっては身も蓋もありませんって。

要はあまりヨソ様のサッカースタイルを貶めるように聞こえるコメントはしない方が身のためという教訓になるかと思いますが、そんなバルサでも再びケシエが絶好のチャンスを迎え、エリア内からフリーでシュート。直前にラフィーニャと交代でピッチに入った、バルサベンチにいたトップチーム唯一のFWアンス・ファティがゴール前でそのボールに当たってコースを逸らせなかったら、2点目が入り、いよいよマドリーもレモンターダモードに入れたのかもしれませんが…この日はダメでしたね。

何故か、アセンシオもセバージョスも出ないまま時間が過ぎ、39分にはアトレティコ戦で同点ゴールを挙げた18才のカンテラーノ(RMカステイージャの選手)、アルバロ・ロドリゲスが入ったものの、この日は2匹目のドジョウとはならず。結局、ボールポゼッションで65%と相手を大幅に上回りながら、枠内シュートが1本もなかったマドリーは最後まで、バルサに守り倒されてしまいましたっけ(最終結果0-1)。

おかげで試合後は、「Estoy satisfecho con el resultado y no tanto por el partido/エストイ・サティスフェッチョー・コン・エル・レスルタードー・イ・ノー・タントー・ポル・エル・パルティードー(結果には満足だが、試合の出来についてはそうでもない)」(チャビ監督)というバルサと、「Es el partido que quisimos hacer, no el resultado/エス・エル・パルティードー・ケ・キシモス・アセール、ノー・エル・レスルタードー(やりたいと思った通りにできた試合だが、結果は違う)」(アンチェロッティ監督)というマドリー、まさに真逆の感想を聞かされることになったんですが、いやあ。何せ、「No es la primera vez que remontamos/ノー・エス・ラ・プリメーラ・ベセウ・ケ・レモンタモス(ウチが逆転するは初めてではない)」とイタリア人指揮官も自信を見せていた通り、レモンターダはマドリーの十八番ですからね。

それを十分知っているせいか、チャビ監督も「Sigo viendo al Real Madrid como favorito/シゴ・ビエンドー・アル・レアル・マドリッド・コモ・ファボリートー(勝ち抜け候補なのはレアル・マドリーだと思っている)」と謙虚にしていたんですが、とにかく2ndレグは1カ月先の4月5日(水)。となると、ビニシウスを抑えるのに大活躍したアラウホも「Tenemos bajas importantes, que son titulares/テネモス・バハス・インポルタンテス、ケ・ソン・ティトゥラレス(ウチにはレギュラー選手の欠場者がいる)。でもvuelta(ブエルタ/2ndレグ)までには時間があるから、彼らを当てにできるだろう」と言っていたように、ida(イダ/1stレグ)にケガで出られなかったエースのレバンドフスキを始め、デンベレ、ペドリらもカンプ・ノウでは復帰していることも多いにありうるんですが、そんな先のことより、今考えないといけないのは週末のリーガ戦の方ですよ。

そう、前節はお隣さんと引分けたせいで首位との差が勝ち点10になるところだったのが、バルサがアルメリアに負けたおかげで災い転じて福となり、7差に縮めることができたマドリーでしたが、それも日曜午後9時(日本時間翌午前5時)から、ベニト・ビジャマリンでのベティス戦に勝たないと、またリーガ逆転優勝は絶望的に逆戻り。しかもバルサがその前の時間帯でバレンシア戦をプレーするため、キックオフの時点でかなりのプレッシャーが懸かっている可能性もあるんですけどね。ただ、ペジェグリーニ監督のチームは前節のエルチェ戦でヒザの靭帯を断裂して全治6カ月となったフェキル、そしてカナレスもケガで欠場。それだけにベティスと勝ち点2差で4位の座を脅かされているアトレティコもマドリーの勝利を当てにしているとか、していないとか。

そのアトレティコは土曜午後9時にセビージャをメトロポリターノに迎えるんですが、いやあ、今季後半はヨーロッパの大会もなく、コパも終わってしまったため、ホームスタジアムの稼働日が減ったせいでしょうかね。水曜にはフベニル(Bチームの下のカテゴリー)がプレーするUEFAユースリーグ16強対決ゲンク戦を1万人以上の観客を集めて開催していましたが、シメオネ監督やコケ、サウール、バリオスら、カンテラの先輩も応援に駆けつける中、フェルナンド・トーレス監督のチームは4-1で快勝。残念なのはこの先、準々決勝ミラン戦はアウェイ、準決勝からはニヨンで試合となるため、もうメトロポリターノでは見られないことですが、その分、大人のチームがファンを楽しませてあげればいい?

といってもあまり景気のいいことは私も言えなくて、何せ、ダービーでレイニウドが左ヒザ前十字靭帯断裂となったのが大ショックなのはもちろん、左SB控えのレギロンも負傷中。更に右SBのナウエル・モリーナも累積警告で出場停止、レッドカードを受けたコレアも1試合の出場停止、デ・パウルもまだ復帰せずと今回は選手の頭数が少なくてねえ。おかげでシメオネ監督も今週は最近、上手くいっていた4人DF制を諦め、サビッチ、ヒメネス、エルモーソの3CBを総動員。マルコス・ジョレンテと右、カラスコを左のカリレーロ(長い距離をカバーするSB)として5人守備体制で練習していたようですが、前線ではメンフィス・デパイの初先発が見どころとなるかと。

まあ、セビージャも来週木曜にはEL16強対決フェネルバフチェ戦1stレグがあり、忙しいんですが、こちらは14位とはいっても降格圏まではたったの勝ち点2。現在、19位に沈んでいるヘタフェとも3差しかないため、ここは絶対に援護射撃をしてあげたいところですが、そこは土曜の昼間、コリセウム・アルフォンソ・ペレスにジローナを迎える弟分チームも自助努力をしないとねえ。実際、ダントツ最下位のエルチェ以外はセビージャ以下、6チームが僅差にひしめいているとあって、2週間前のバレンシア戦のようにキケ・サンチェス・フローレス監督のチームが一たび白星を掴んだが最後、降格圏を脱出する可能性も大いにありますからね。唯一の問題は11位にいる相手のジローナがここ2連勝と調子を上げていることですが、是非ともこの24節、マドリッド勢の先陣を切って勝利を挙げてもらいたいものです。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。


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