海外で火をつけ、日本に逆輸入 アシックスの有力カンパニー・オニツカタイガーの復刻ブランド戦略
財界オンライン / 2023年11月7日 18時0分
〝復刻〟がなぜ今人気があるのか─。オニツカタイガーをはじめ、象印、喫茶店ヘッケルンなど、歴史あるもの、温かみを感じる商品に人気が集まっている。「銀座でオニツカに10万払う客がたくさんいる─」。海外での人気が、日本に跳ね返っていると話すのはオニツカタイガーカンパニー長の庄田良二氏。そこには先行き不透明な社会の中で、復刻ものなど歴史あるものを通じて、〝確かなもの〟を求める消費者心理があるようだ。
復刻ブランドが国際的ハイブランドへ
コロナ禍明け日本各地に溢れかえる海外旅行者の波─。表参道のとある店舗では、欧米、欧州、中東、アジア、髪を隠したインド人女性など国際色豊かな人々で賑わっていた。表参道ヒルズ裏に3店舗が並ぶ、ファッションブランドのオニツカタイガーだ。
同ブランドは歴史を遡れば、1949年鬼塚商会の創始者・鬼塚喜八郎氏がバスケットシューズを開発したのが起源である。しかし、1977年同社は他社と経営統合しアシックスとなり、オニツカの名前は一度消えた。
それが2002年、「スポーツブランドではなく、ファッションブランドとして生き返ります」と発表し、アシックスとは全く別のブランドとして〝オニツカタイガー〟を蘇らせた。今では靴だけでなく子ども服を含めた衣服・鞄等の小物類も扱う。
〝オニツカ〟という音を聞いて、昔のイメージを持つ世代と、真新しいイメージを持つ若者世代、両者で抱くイメージは全く違う。この世代間ギャップを埋めるべく、カンパニー長・庄田氏がやってきたことは、マーケティングとブランディングの完全切り離しである。多くの企業が同じと考えがちだが、この二つは全く違う性質のため、絶対に混ぜてはいけないと同氏は強調する。
マーケティングは技術を使えば比較的すぐに結果が出やすいため優先されがちである。一方、ブランディングは人々の集合意識からくる抽象概念であるため、時間もコストもかかる。すぐには売上に影響してこないが、未来に大きく影響する。
オニツカタイガーは軽視されがちなブランディングにしっかりと長期投資を行い、ロゴだけで商品が売れることを狙った「ロゴブランディング戦略」を行ってきた。
それが20年の長い年月によっていま熟成され、売上高も10年前の5倍、500億円(2023年3月期見込)まで成長し、勢いを増している。
守破離のバランス経営
「ブランディングも商品開発も、『破壊するもの』『残すもの』『新しく足すもの』のバランスを極限まで注視している」と庄田氏は語る。このバランスにより、オニツカはブランド復刻から20年で全く別のものとして生まれ変わった。
例えば象徴的なストライプのデザインも勿論残っているが、今オニツカで一番売れているのは厚底デザインのもので、もはやストライプの影は全くといってない。それでいて、顧客も世界のファッションリーダー、ハリウッドのセレブ達。それにより米欧で火がつき、その海外からの風がいま日本、アジアに向いている。今年8月には銀座一等地にコンセプトストアをオープンした。ビビットな黄色の外観が目を引く。
「銀座の地で高級ブランドと足を並べることが、世界に通じるブランドだと考え、10年場所を探し続けてきた。今、銀座のオニツカでは10万円払う客がたくさんいる。客層は外国人、日本人と半々」(同氏)。
経営はアシックス社内のカンパニー制で独立採算となっており、カンパニー長が権限を持つ。売上の8割を占めている海外店舗は、日本から社員を出向させ、サービスの質が落ちないようコントロール。日本が得意とする丁寧な商品の並べ方、おもてなしの徹底を行い、ハイブランドの競合他社との差別化としている。アシックスで培った70年余りの靴づくりのデータノウハウを共有し、ファッションブランドでありながら機能性も高い靴であるのも人気の理由だ。
若い世代のレトロブーム「エモい」の背景には
昨今、古着やレトロ柄などのレトロブームが続いている。Z世代では、2000年頃までのものは逆に斬新なデザインだと感じるものが多く、個性を表現しやすい。
これはファッション業界に限ったことではない。魔法瓶メーカー象印では、1960年〜1980年に発売された復刻花柄シリーズを再販。現在完売状態であり、ある時期から売れるスピードが加速したという(担当者)。
飲食業界でも、昭和レトロな食事を提供する虎ノ門の老舗喫茶店ヘッケルンの入口には、朝8時開店時から若者たちの行列。
このような社会的レトロブームの裏側には人々のどのような心理が隠れているのだろうか。庄田氏は次のように語った。
「デジタルで溢れかえっている時代に生まれてきた世代は、アナログなこと、歴史があるものなどの温かみを求めている。昔の物を持つことで、未来への不安を埋め、安心感を得ているのでは。オニツカにもその要素があるのでいま人気が加速しているのではないか」
このレトロブームの流れは日本だけではなく、アメリカでも同様のムーヴメントが起きている。
経済問題を始め、戦争、災害、環境、雇用─。あらゆる問題を抱え社会が不安定な時代だからこそ、歴史があるもの、古き良き時代を感じるものが人々のこころの安心につながっているのだろうか。だとすれば、このノスタルジーを重んじる風潮はまだまだ続きそうである。
https://modify.zaikai.jp/articles/detail/3181
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