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中小企業の死活問題「外形標準課税」適用拡大に懸念

JIJICO 2014年10月31日 15時0分

外形標準課税適用拡大、経団連や日本商工会議所が反対表明

消費税率の10%引き上げと同様に、法人事業税の外形標準課税適用拡大の是非をめぐり、平成27年度税制改正の動向がはっきりしません。

外形標準課税とは、資本金等及び付加価値など外観から客観的に判断できる基準を課税ベースとして税額を算定する課税方式のことです。法人の事業そのものに課されます。

法人事業税の外形標準課税適用拡大について、経団連や日本商工会議所は、法人の支払い賃金に対する課税であり安倍政権が標榜する所得拡大政策とは矛盾すること、赤字法人に対する課税は応能課税の原則を逸脱しており中小零細企業の経営を圧迫すること等を理由に反対方針を明らかにしています。もっとも、両者の主張には、多少の温度差があるようですが。また、同じ経済官庁の中でも、経済産業省は、別税目による増減税では、企業の実質税負担の軽減につながらないと拡大方針に慎重な姿勢を示しています。

従業員の確保に苦労する多くの中小事業者にとっては切実な問題に

こうした疑問や指摘に対し財務省は、「外形標準課税制度には雇用安定控除という配慮措置が設けられているので、雇用や給与水準を維持した方が税負担は抑制される」と反論しています。雇用安定控除を簡単に説明すると、支払給与が収益分配額(支払給与+支払い利子+支払い賃借料)の70%を超える場合には、その超える部分を付加価値額(収益分配額+単年度損益)から控除する、つまり付加価値割を課税しないという措置です。

70%を超える法人であればその通りなのですが、未満の法人については賃上げをすると付加価値割負担が増大するというパラドックスに陥ってしまいます。すべての法人に当てはまるロジックではありません。従業員の確保に苦労する多くの中小事業者にとっては、支払給与に係る付加価値割がそのまま労務費の実質負担増となる場合がありますので、切実な問題になりかねません。

新たに177万社に及ぶ赤字法人に税負担が発生する試算も

適用拡大の目的は、いうまでもなく、法人税率引下げのための代替税源の確保にあります。法人事業税単独で見れば、当然のことながら実質増税になります。東京商工会議所の試算によれば、外形標準課税の適用拡大により、新たに177万社に及ぶ赤字法人に税負担が発生すると見られています。確かに、法人事業税に占める付加価値割の比重を増やして所得割の比重は落とせば、計算上の法人実効税率は下がります。税収も安定することでしょう。しかしながら大企業の税負担が軽減される一方で、収益性の低い多くの中小企業にとっては増税となります。この議論を曖昧にして、あたかも既定方針であるかのごとく拡大方針を進めるのは適当ではありません。

この他に、無視できないのが納税事務負担の増大です。地方税の多くは、法人税の所得金額計算にスライドしているため税務申告は比較的簡単です。ところが、外形標準課税になると、付加価値割の課税標準の算定方法がかなり複雑ですので、専門の経理組織を持たぬ中小零細企業にとっては相当の事務負担になる懸念があります。この点も考慮する必要があるでしょう。

(松浦 章彦/税理士)

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