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【ロシア疑惑】「たとえ起訴されても、トランプは自分を恩赦できる」!?

ニューズウィーク日本版 2018年6月4日 17時50分

<「天は法の上にトランプを作った」と言わんばかりの顧問弁護士の主張に、「トランプは本物の独裁者になる気か」と懸念の声>

ルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長は、4月にドナルド・トランプ米大統領の顧問弁護士に就任して以降、トランプのロシア疑惑を捜査しているロバート・ムラー特別検察官への攻撃を続けている。

6月3日にはABCテレビに出演し、爆弾発言を行った。もし捜査が進展してムラーが大統領を起訴するなどの法的手続きを取った場合、トランプには自分自身に恩赦を与える法的権限が「たぶん」あると言ったのだ。憲法解釈次第ではそういうことになるという主張だが、もしそうなら、大統領にはどんな法律も及ばないことになる。専門家からは即座に、「自分を恩赦できるのは独裁者だけだ」と反発の声が上がった。

ジュリアーニは、そうした懸念を打ち消すかのように、たとえ権限があっても「トランプは、自分に恩赦を与えるつもりはない」と言った。だが、次のようにも続けた。

「一方で、大統領が自分自身に恩赦を与えることができるのかどうかは、非常に興味深い憲法上の問題だ。いろいろな見方があるだろうが、私は『憲法にはそう書いてある』というのがたぶん答えになると思っている。もしそれを変えたいのあれば、変えればいいだけの話だ」

捜査は9月1日までに終了?

トランプ起訴をめぐる法的議論は複雑を極める。

ジュリアーニと同じ番組に出演したクリス・クリスティー前ニュージャージー州知事は、「もし大統領が自分に恩赦を与えようとすれば、弾劾を受けることになる」ので、恩赦を受けるのは無理だ、と言った。

またABCニュースの主席法律アナリストのダン・エイブラムズは、そもそも「ムラーが現職の大統領の起訴することはないだろうし、大統領が自らを恩赦するような事態には至らないだろう」と語った。

ジュリアーニはまた、ムラーは11月の中間選挙まで十分時間がある9月1日までに捜査を終わらせるだろうとの見方を示した。2016年の大統領選挙では、ジェームズ・コミー前FBI長官が投票日間近になって突然、民主党の大統領候補ヒラリー・クリントンの私用電子メール問題の捜査を再開すると発表し、共和党候補だったトランプを有利にしてしまった。その二の舞はしたくないからだという。



ジュリアーニはまた、ムラー率いる捜査チームは必要な証拠や証言をすべて入手済みで、トランプの召喚は「必要ない」と述べた。

トランプの弁護士チームは今年1月、大統領がムラーの捜査を「妨害」することなど不可能だと主張する書簡をムラーに送っている。大統領である以上、トランプはあらゆる連邦捜査に影響を及ぼす憲法上の権限を持っているからだという。

この書簡を入手したニューヨーク・タイムズが6月2日に伝えたところでは、トランプには事情聴取に応じる法律上の義務もない、と弁護士チームは主張していたという。

ムラーを牽制

トランプ自身はそれ以前、事情聴取に応じる意向を示したこともあった。とは言えツイッターでは繰り返し、ムラーの捜査への非難を繰り返してきた。捜査の合法性に疑問を投げかけたこともある。4月には「特別検察官は違法な命令に基づいて設置された」とツイートしている。

「われわれは(事情聴取は)ないという方向に傾いている」とジュリアーニは言う。トランプが疑惑について公の場でいくつか矛盾した発言をしていることは認めたが、だからといって「大統領に証言させることにはつながらない」という。

ジュリアーニは必死にムラーを牽制するのは、ロシア疑惑の捜査が大詰めを迎えていることを察してのことだろうか。」

(翻訳:村井裕美)


ベンジャミン・フィアナウ

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