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謎の電波信号の正体は? “宇宙人探し”プロジェクトが発見した信号の分析が進行中

sorae.jp 2021年1月8日 21時8分

赤色矮星「プロキシマ・ケンタウリ」(中央)を周回する「プロキシマ・ケンタウリc」(右)と「プロキシマ・ケンタウリb」(左)のイメージ図(Credit: Lorenzo Santinelli)

2020年12月、オーストラリアのパークス天文台にある電波望遠鏡が自然現象に由来しない可能性がある電波信号を検出したことを英紙ガーディアンが報じて話題になりました。現在この信号の正体についての科学的な分析が進められています。

発端は、2019年4月から5月にかけてパークス天文台で実施された赤色矮星「プロキシマ・ケンタウリ」の観測でした。プロキシマ・ケンタウリはケンタウルス座の方向およそ4.2光年先にある太陽に最も近い恒星で、観測はプロキシマ・ケンタウリのフレアに関する研究の一環として26時間に渡り行われました。

いっぽう、ロシア生まれの資産家ユーリ・ミルナー氏の出資によってスタートした地球外知的生命体探査(SETI:search for extraterrestrial intelligence)を行うプロジェクト「ブレイクスルーリッスン」では、パークス天文台やアメリカのグリーンバンク天文台で得られた観測データを利用して地球外文明の痕跡を探しています。前述のプロキシマ・ケンタウリの観測データもその対象となり、2019年6月から分析が始まったといいます。

そして2019年10月、ブレイクスルーリッスンは982.002MHzを中心とした針のように鋭く狭い範囲の周波数帯で放射された電波をプロキシマ・ケンタウリの観測データから発見。自然現象に由来するものではない可能性があるこの電波は「BLC-1」(Breakthrough Listen Candidate 1)と呼ばれるようになり、分析が始められました。

BLC-1が注目される理由のひとつは、観測対象のプロキシマ・ケンタウリには現在までに2つの太陽系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」「同c」の存在が知られているからです。このうち2016年に発見されたプロキシマ・ケンタウリbは質量が地球の約1.3倍、公転周期は約11日で、プロキシマ・ケンタウリのハビタブルゾーンを周回しているとみられています。つまり、パークス天文台の電波望遠鏡はプロキシマ・ケンタウリの系外惑星に存在する地球外文明の発した信号をキャッチした可能性があるのではないか、というわけです。

関連:地球に似た系外惑星プロキシマ・ケンタウリb、発見当時の4倍の精度で再観測

パークス天文台の64m電波望遠鏡(Credit: S.Amy, CSIRO)

もっとも、ブレイクスルーリッスン自身が「Candidate(候補)」としているように、この電波信号は必ずしも地球外文明の存在を証明するものではありません。仮に地球外文明に由来する信号であれば同様の信号を再度捉えられる可能性があるものの、BLC-1の発見以降パークス天文台で実施された再観測では、同じような信号を捉えるには至っていません。コーネル大学のShami Chatterjee氏は「自分が間違っていたらいいのに」と断りつつも「独立した観測で同じ信号が再検出されない可能性を支持します」とコメントしています。

検出された電波が情報を伝達するための信号であればその兆候が見つかるはずですが、BLC-1には変調の痕跡が見当たらないといいます。過去には今回と同じパークス天文台において、施設内の電子レンジに起因する電波の干渉が捉えられていたケースもあります。SETI研究所のFranck Marchis氏やアメリカ国立電波天文台(NRAO)のTony Beasley氏らが指摘するように、BLC-1は人類の文明活動に起因する何らかの電波の干渉である可能性が高く、地球外知的生命体につながる可能性は低いのが実情です。

また、もしも自然現象に由来するのであれば、SETI研究所の上級研究員を務める天文学者のSeth Shostak氏が語るように、それでも極めて興味深い現象と言えます。宇宙にはクエーサーやパルサーのように強力な電磁波を放つ天体がありますが、その放射はBLC-1のような狭い周波数帯に限定されるものではないからです。人類自身による電波の干渉か、未知の自然現象か、あるいはそのどちらでもないのか。分析の結果に注目です。

 

関連:”宇宙人を探して”集められた観測データ「ブレイクスルー・リッスン」公開

Image Credit: Lorenzo Santinelli
Source: NRAO / Scientific American / SETI Institute (1) / SETI Institute (2)
文/松村武宏

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