アングル:1ドルショップに光と陰、犯罪化回避へ米で規制相次ぐ
ロイター / 2024年5月3日 8時2分
米国ではダラー・ゼネラルやダラー・ツリーといった「1ドルショップ」が各地で急激に店舗数を増やし、自治体当局にとって悩みの種になっている。写真はメリーランド州マウントレーニエのダラー・ゼネラル店舗。2021年6月撮影(2024年 ロイター/Erin Scott)
Carey L. Biron
[ワシントン 22日 トムソン・ロイター財団] - 米国ではダラー・ゼネラルやダラー・ツリーといった「1ドルショップ」が各地で急激に店舗数を増やし、自治体当局にとって悩みの種になっている。
格安の1ドルショップは、新型コロナウイルスのパンデミック期にも営業し続けて生活必需品を供給。その後も急速に店舗網を拡大している。
1ドルショップは低所得層にとって、ライフラインの役割を担っていると評価する声が出ている。
その一方、店舗の雰囲気が殺ばつとしていて万引きなど犯罪の温床となったり、食料品店が駆逐され、健康的な食品が手に入りにくくなったりするといった問題も起きている。
そのため、最近では1ドルショップの拡大に歯止めを掛けるため規制を導入する地方自治体が相次いでいる。今年2月にはシカゴ市が、既に1ドルショップがある場合、半径1マイル(1.61キロ)圏内で同一系列店舗の新規出店を禁じるなどの規制を設定。専門家の間では、1ドルショップへの締め付けが今後、拡大するとの見方もある。
昨年に「1ドルストアの侵略」というテーマの報告書をまとめたインスティテュート・フォー・ローカル・セルフリライアンス(ILSR)の上席調査員、ケネディ・スミス氏によると、1ドルショップの規制に成功した地域の情報が広まり、他の地域からも問い合わせが寄せられている。
ダラー・ツリーの広報担当者は、シカゴ市では規制により新規の出店や店舗の移転が実質的に不可能になったと述べた。
1ドルショップはこのところ、いくつもの困難に見舞われている。草の根の反対運動はその1つだ。
中国発のネット通販「Temu(ティームー)」や米小売り最大手ウォルマートとの競争で売上高が打撃を受け、需要の変化やコスト上昇などの逆風も吹く。
ダラー・ツリーは先月、年末商戦の不振を受けて傘下のファミリー・ダラーで約1000店舗を閉鎖すると発表した。
ILSRのスミス氏は、1ドルショップの閉店で健康的な食品を手頃な価格で買えるような体制に移行するチャンスが生まれると、店舗網縮小を評価する。
一方、シカゴ商工会議所をはじめとする企業団体は、新規則は「見当違い」であり「投資が最も必要とされる地域社会における新たな経済発展の機会を著しく制限する」と訴えている。
<家計の支え>
自治体の当局者によると、これまでのところ、1ドルショップの進出を禁止しても消費者からの反発はほとんどないという。これは主に1ドルショップが既に展開している地域で、規制が導入されていることが一因だ。
1ドルショップが消費者の需要に真に応えていることを示すデータもある。
非営利団体「公益科学センター」が昨年実施した初の全国調査によると、回答者の80%以上が、1ドルショップは地域社会の役に立ち、便利で、厳しい家計のやりくりの助けになっていると回答した。
一方、1ドルショップで買い物をしない人の60%近くが、質の低い農産物や店の外観の悪さを理由に挙げた。また、全体の80%がもっと健康的な食品の品ぞろえを増やすべきだと答えた。
UCLAアンダーソン校とトロント大学の研究者によると、半径2マイル以内に3軒の1ドルショップが開店するごとに、1軒の食料品店が閉店し、食料品の購入が制限されているという。
オハイオ州トレドでセンター・オブ・ホープ教会を運営するドナルド・ペリーマン牧師は、経済の発展と健康的な食の推進を結びつける広範な取り組みの一環として、1ドルショップの全面的な禁止に取り組んでいる。
ルイジアナ州下院議員のキム・ランドリー・コーツ氏は、ニューオーリンズの北に位置するタンギパホア行政区で1ドルショップの店舗数規制を支援している。店舗数があまりにも多いためだ。「5マイル圏内に9軒の1ドルショップがあった」という。
同行政区の計画委員会は昨年、住民の「健康と安全」を理由にダラー・ゼネラルの店舗建設申請を却下。住民は禁止を求める嘆願書で、1ドルショップの「飽和状態」によって交通量の増加、下水への負荷、中小企業の衰退、ゴミや犯罪の誘発といった問題が起きていると訴えた。
<街で唯一の選択肢>
ジョージア州デカルブ郡の元コミッショナー、ロレイン・コクランジョンソン氏は、1ドルショップの長所と短所のバランスを取る鍵は、協力体制の構築にあると考えている。
同郡では2019年に1ドルショップの店舗網拡大を一時的に凍結し、22年には貧困層のコミュニティーで店舗間の距離要件を導入した。以来、1ドルショップから営業許可の申請は1件もない。
コクランジョンソン氏は「1ドルショップに反対しているわけではない。ただ、地域社会に有害な影響を与えないようにしてほしい」と話す。生鮮食品の提供を奨励する法案を作り、今では多くの店舗に牛乳やチーズなどの冷蔵食品コーナーが設置されている。
「1ドルショップは街で唯一の選択肢であることが多い。最良の慣行を実践し、住民のニーズに応えてほしい」と同氏は語った。
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