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アングル:重要判決を左右する米最高裁「ロバーツ長官」の実像

ロイター / 2020年7月7日 17時6分

 6月29日、保守派とされるジョン・ロバーツ米連邦最高裁判所長官は、今月下された重要な判決3件においてリベラル派4人の側に立つことで、同裁判所の主役としての立場を固めた。2月4日、米議会議事堂で、代表撮影(2020年 ロイター)

Lawrence Hurley Jan Wolfe

[ワシントン 29日 ロイター] - 保守派とされるジョン・ロバーツ米連邦最高裁判所長官は、6月に下された重要な判決3件においてリベラル派4人の側に立つことで、同裁判所の主役としての立場を固めた。判決の1つが、中絶手術を大幅に制限するルイジアナ州法を5対4で無効としたものだ。

ロバーツ長官は2005年、共和党のジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)によって指名されたが、LGBT労働者の権利を擁護する6月15日の判決(6対3)、子どもの頃に米国に入国した数十万人の不法移民、いわゆる「ドリーマーズ」の保護を廃止しようとするトランプ大統領の動きを阻止した6月18日の判決(5対4)でもリベラル側についた。

ロバーツ長官は、制度としての連邦最高裁を擁護する伝統的な保守派であり、やはり保守派のアンソニー・ケネディ判事が2018年に引退した後、最もキャスティングボートを握る可能性の高い判事となっている。連邦最高裁は現在、保守派5人、リベラル派4人という拮抗(きっこう)した状況にある。

コロンビア大学ロースクールのギリアン・メッツガー教授は、「ロバーツ長官は明らかに連邦最高裁の焦点になっている」と言う。「つまり、今やまさに『ロバーツ法廷』になっている」

昨年10月に始まった今年度、ロバーツ長官が判決において多数意見となる頻度は過去10年間で最も高くなっている。

裁判所の年度は終わりに近づいているが、ウェブサイト「エンピリカル・スコータス」で裁判関連の統計を記録しているアダム・フェルドマン弁護士によれば、ロバーツ長官が多数意見となった判決は51件の判決のうち50件。5対4と意見が割れた判決10件ではすべて多数意見となっている。

ロバーツ長官が多数意見とならなかった唯一の例は、4月、重罪に関する陪審裁判において全員一致の評決を必須とした判決である(6対3)。

ロバーツ長官は2月、連邦議会上院におけるトランプ大統領の弾劾裁判においても裁判長の役割を担ったことで注目を集めた。民主党側は証人招致を含め共和党のトランプ大統領に対する裁判の延長を求めていたが、ロバーツ長官は、ほぼ儀礼的な役割から踏み出すことを拒否し、民主党側の失望を買った。

最近の判決におけるロバーツ長官の姿勢は、司法権力が社会政策に影響を与えることを重視する保守派の活動家をますますいら立たせている。

「ドリーマーズ」判決の後、トランプ大統領はツイッターに「最高裁判所が私を嫌っているという印象はないだろうか」と投稿した。

ブレット・カバノー、ニール・ゴーサッチ両氏の最高裁判事指名など、トランプ政権による司法人事を擁護してきた保守派の法曹グループ「ジュディシャル・クライシス・ネットワーク」のキャリー・セベリノ代表は、「これは厄介なパターンの1つだ」と話す。

「皮肉なことに、政治色を薄めようとするあまり、ロバーツ長官は実際には政治を前提とした判断を下してしまっているようだ」とセベリノ氏は言う。

<オバマケアをめぐる判決>

最近まで、ロバーツ長官は賛否が拮抗する事件についてリベラル派に賛同することはめったになかった。フェルドマン弁護士によれば、今年度が始まる前、5対4で決まった判決においてロバーツ長官がリベラル派4人の側に立ったのは5回しかない。

そのうちの1回が2012年、「医療費負担適正化法」、つまりトランプ氏の前任者である民主党バラク・オバマ大統領(当時)の国内政治における代表的な成果と見なされる、いわゆる「オバマケア」の存続を認めた判決である。

またロバーツ長官は2019年に、トランプ政権が2020年の国勢調査において市民権の有無に関する質問項目を追加することを阻止した判決(5対4)を下している。このトランプ政権の方針は、10年に1回行われる同調査に移民が参加することを妨げる試みとして批判されていた。

ロバーツ長官は2005年の連邦議会上院での指名公聴会において、裁判官の役割を、ボール/ストライクの判定を行う野球の審判に例えており、政治を超越した存在として見られるよう心がけている。たとえば「ドリーマーズ」判決のなかでロバーツ長官は特に、当該の制度、あるいはそれを廃止しようというトランプ大統領の試みが「健全な政策」であるか否かを論点とはしていないと述べている。

カバノー、ゴーサッチ両判事は、これまでのキャリアのなかでは安定して保守的な判断を示しているが、ゴーサッチ判事には中道志向が垣間見られる。たとえば15日のLGBT判決においては、ロバーツ長官、リベラル派の判事らとともに多数意見を示している。

いくつかの重要な判決においてリベラル派に同調している一方で、30日に5対4の僅差となった判決に見るように、ロバーツ長官が堅実な保守派であることには変わりない。この判決では、保守派判事全員が多数意見となり、リベラル派が少数意見となった。金融部門における消費者保護を担当する連邦機関に関してトランプ大統領の権限を拡大する内容である。

ワシントンで活動する上訴担当のリベラル派弁護士ディーパク・グプタ氏は、「消費者金融保護局(CFPB)判決は、司法をめぐる保守派の運動にとって大きな勝利になる」と話す。

グプタ弁護士によれば、保守派は、肥大化した連邦官僚制度が押しつける「過大な負担につながる規制」を縮小することを以前から主張しており、ロバーツ長官はこれに理解を示していたという。

「長官はこの点で非常に巧みだ。どの判決が大きな話題になるか、そしてどの判決がよけいな注目を集めないまま長期的に保守的な法解釈を示すことになるか、その見極めを心得ている」

(翻訳:エァクレーレン)

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