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アングル:日銀の国債買い入れ額、据え置き続く 減額へ需給動向を注視

ロイター / 2024年4月12日 17時24分

日銀が3月の金融政策決定会合で国債買い入れの継続を決めて以降、残存期間5年超10年以下の国債買い入れ額は据え置きが続いている。写真は2017年6月、東京都内で撮影(2024年 ロイター/Toru Hanai)

Takahiko Wada

[東京 12日 ロイター] - 日銀が3月の金融政策決定会合で国債買い入れの継続を決めて以降、残存期間5年超10年以下の国債買い入れ額は据え置きが続いている。日銀内では国債買い入れが政策手段でなくなった以上、金額の増減で金融政策を巡る思惑を生じさせるべきではないとの声が出ている。一方、日銀は国債の需給動向を精査しており、徐々に買い入れを減らしても金利の急上昇が回避できる局面がいつ来るのか注視している。

<国債買い入れ、政策上の位置づけが一変>

日銀は3月の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール(YCC)の廃止など大規模緩和の修正を決定。決定会合直後、3月22日の残存5年超10年以下の国債買い入れでは、4月から国債発行が減ることと併せ、オファー額が減額されるのではないかとの見方が市場の一部で出ていたが、オファー額は4750億円で変更されなかった。

YCCの廃止により、「(国債買いオペや残高の調整は)能動的な金融調節手段としては用いず、主たる調節は短期金利で行う」(植田和男総裁)こととなり、金融政策は短期金利の操作をツールとする「普通の金融政策」(同)に戻った。日銀では、こうした金融政策上の位置づけの変化を踏まえ、オペの金額の増減で政策の先行きの憶測を生まないようにする必要があるとの声が出ている。

日銀が標榜する「緩和的な金融環境」も、短期金利の調節によってもたらす、との指摘が日銀では出ている。このため、国債買い入れの調節は経済・物価情勢の変化に応じて行うのではなく、技術的に行っていくことになるとみられる。

<昨年11月から12月、減額の模範ケース>

国債の減額時期を占う上では、声明文に記された「市場の動向」と「国債需給」がカギを握りそうだ。実際に、この2つがかみ合うことで日銀は昨年11月から12月にかけて、国債の買い入れ額を段階的に減額してきた。

11月6日、残存5年超10年以下のオファー額は6750億円だったが、その後3回減額され、12月25日には4750億円となった。

背景には、米金利の低下基調が鮮明になる中で日本の10年金利も低下基調をたどったことや、国債の需給が引き締まる中、日銀の国債買い入れによってこれ以上需給に影響を及ぼすべきではないとの考えがあったとみられる。

需給の引き締まりを反映して、この間は国債買い入れの応札倍率が低下傾向になった。10月には、5年超10年以下の国債買い入れの応札倍率が2倍台になることが散見されたが、11月に入ると1倍台が常態化。12月8日の買い入れでは1.13倍と札割れ寸前になった。日銀は12月25日のオペでオファー額を5250億円から4750億円に引き下げた。

<金利上昇にも警戒感高まらず>

4月12日の5年超10年以下の国債買い入れも、オファー額は4750億円で変更しなかった。予想を上回る3月の米消費者物価指数(CPI)を受けて米金利が急上昇し、日本の10年金利も0.85%を上回って昨年11月以来の高水準に上昇した。しかし、YCCが廃止され、1%上限がなくなった今、警戒感は従来に比べて高まっていないとみられ、日銀は買い入れ額を増やさなかった。

日銀では、金利が上昇しても、極力市場に金利形成を委ねるのが望ましいとの声がある。もちろん、長期金利が急上昇する場合には、機動的に買い入れ額を増額するなどの対応をすると3月会合の声明文に明記しており、日銀は金利上昇の背景を注視している。

<「同程度」の国債買い入れ、下限は4兆円台後半>

3月の声明文では、短期の政策金利として無担保コール翌日物金利の誘導目標と、国債買い入れの方針が示された。金融政策の根幹をなす無担保コール翌日物金利の誘導目標は毎回の決定会合で議決が必要だが、国債買い入れの方針はより長い期間にわたるもので、毎回の会合での議決が必ずしも必要ではないとの指摘がある。

さらに、声明文で国債買い入れ額が「これまでとおおむね同程度」とされたのを踏まえて金融市場局が作成・公表した国債買い入れ計画によると、残存年限ごとの上限と下限を足し合わせた月間買い入れ額は4兆8100億円―7兆0100億円になる。このレンジが日銀が考える「これまでとおおむね同程度」ということになる。

日銀では、減額の際には決定会合での議論と議決が必要だとの声があるが、現行の月間6兆円から減額しても、4兆円台後半までなら金融市場局の裁量で可能とも読める。

12日の5年超10年以下の国債買い入れの応札倍率は2.49倍と、金利上昇局面でのオペのニーズの強さを示した。ただ、一部の落札価格は市場実勢より高いところで決まっており「需給の引き締まりを示す結果だった」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジスト)とされる。

日銀は、オペごとに市場参加者の需要動向などを詳細に分析している。植田総裁が「しばらく先に長期国債買い入れを縮小する局面に移行できればと考えている」とするなか、先行き、買い入れという形で市場に介入しなくても国債市場で金利が跳ねないようになる局面を模索していくことになる。

国債買い入れ減額のタイミングについて、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田氏は、オペの札割れが頻発するなど、市場の動向や国債需給などに大きな変化がみられれば執行部の判断で減額する可能性もあるが「基本的には、政策委員会が減額方針を決定するまで執行部の判断での減額は難しそうだ」とみている。

(和田崇彦 編集:石田仁志)

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