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焦点:求心力問われる日産・内田体制 改革遅れに社内から批判

ロイター / 2020年2月17日 8時13分

 2月17日、業績不振に苦しむ日産自動車で、内田社長兼CEO(写真)の采配に対し、社内役員や取締役から厳しい批判の声が上がっている。写真は2019年12月、横浜の日産本社で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

白水徳彦

[東京 17日 ロイター] - 業績不振に苦しむ日産自動車<7201.T>で、内田誠社長兼最高経営責任者 (CEO)の采配に対し、社内役員や取締役から厳しい批判の声が上がっている。同社が収益改善のために策定した様々な施策の実現が遅々として進んでいない、との懸念があるためだ。

内田社長はこれまでの計画を見直し、今年5月までに新たな中期経営計画を打ち出す意向だが、社内には「今は即決即断が必要な状況」(現取締役の一人)として改革のスピードアップを求める声が少なくない。今後数カ月以内に具体的な成果を示せなければ、経営体制刷新への圧力が高まる可能性があるとの見方も出ている。

<5月に新たな経営計画>

日産再生を期して昨年12月に就任した内田社長の新体制は波乱の中での船出だった。就任前の11月に発表した2019年4─9月期連結決算では、営業利益が前年同期比85%減を記録、20年3月期通期予想の大幅引き下げも余儀なくされた。

新体制が動き出して間もなく、副COO(最高執行責任者)として内田社長を支える立場にあった関潤氏が日本電産<6594.T>に社長として移籍することが決まり、12月25日に同氏の辞任と退社が正式に発表された。ほぼ同時期に、保釈中だったカルロス・ゴーン前会長が不正に国外へ逃亡するという騒ぎにも見舞われた。

厳しい市場環境に加え、経営を動揺させる出来事が相次いだことなどを背景に、日産が今月13日に発表した同年10─12月期連結決算は、261億円の最終赤字(前年同期は704億円の黒字)に転落。通期予想も再び下方修正に追い込まれ、期末配当も無配を決めるなど、収益悪化が一段と進んでいる実態が鮮明になった。

日産は昨年7月、当時の西川広人社長のもと、不採算事業のリストラを柱とする世界規模の事業改革を発表。23年3月期までに営業利益を8700億円(今期予想は850億円)に拡大する大胆な収益目標を掲げた。

この計画について内田社長は昨年12月2日に開いた就任初会見で、事業変革は「(自らが)直接指揮を執って進める」と述べ、内容の見直しを表明。今年1月30日には、仏ルノー(RENA.PA)、三菱自動車(7211.T)との3社連合(アライアンス)の会談で、3社それぞれの強みを生かした協業戦略を盛り込み、今年5月をめどに新たな中期経営計画を発表する方針を明らかにしていた。

<「状況は急速に悲惨に」>

しかし、経営不振が予想以上に深刻化する中、同社幹部の間には、これまでに決まった改善措置の実行が遅いとして、内田体制の意思決定のスピードに対する不満が高まっている。内田社長ら経営陣の動きをよく知る関係者の1人はロイターに対し、「(昨年7月に改善方針を示していながら)12月以降も何も変わっていない」と語り、構造改革の現状に危機感を募らせた。

幹部らが問題視している案件のひとつは、日産が積極投資しながらも売り上げを伸ばせず、18年のマーケットシェアが2%以下に落ち込んだインドネシア事業の取り扱いだ。現地生産から撤退し三菱自に委託するという方針はあるものの、その実行にまだ踏み出せていない。

さらに、内田社長の就任時に日産が「クライシス(危機)・モード」の施策として申し合わせた役員賞与の大幅カットについても明確な方針は発表されていない。

こうした改革の遅れは、同社のネットキャッシュポジションをさらに劣化させる懸念がある。日産には自動車事業の純現金残高が昨年12月末時点で8475億円あるが、販売不振や高い固定費の削減が進んでおらず、営業活動による新規のキャッシュはほとんど確保できていない。

自動運転車の開発やパワートレインの電動化推進など、今後の市場拡大に欠かせない事業にはコストがかさむ大規模な技術投資が必要。それを進めるうえで、キャッシュポジションの劣化は日産にとって大きな足かせになりかねない。

幹部の1人は「(内田社長は)十分なスピードで動いていない。状況は急速に悲惨になりつつある」と指摘する。

<「試用期間」との指摘も>

内田社長は今月13日の会見で「(業績)立て直しに向けての固定費の削減はしっかりできていた」と言明、業績不振の原因は「販売台数が想定を下回ったことに尽きる」との認識を示した。役員報酬カットなどの検討も進め、今後も「現経営陣の代表として覚悟をもって経営にあたる」と強調した。

会見に同席したラケッシ・コッチャ専務執行役員は、キャッシュフローの悪化は認めつつも「キャッシュは十分にある」とし、同社の流動性に問題はないとの見方を示した。

だが、同社内にはすでに現経営体制の刷新が必要との議論も出始めている。ある関係者はロイターに対し、内田社長の立場を「プロベーション(Probation、試用期間)」と表現した。日産立て直しの実績をいかに早く示すか、その力量とスピードが試されているという意味だ。

同関係者は通期連結決算の内容や具体的な改革の成果次第では、「最悪のシナリオとして、内田氏の立場も含め、経営体制の見直しもありうるだろう」と予想した。

内田社長は就任にあたり、COOのアシュワニ・グプタ氏、副COOの関氏との「トロイカ体制」で日産再建にあたる考えだった。3氏が「ワン・チーム」として結束すれば日産に業績回復への新しい夜明けをもたらすだろう、と期待された。

しかし、新体制はその期待通りにはなっていない。複数の関係者によると、昨年12月、2人の取締役が内田社長と面談し、経営執行にあたっては関、グプタ両氏とより緊密に協議するよう訴えたという。

その後、関氏は退社し、日産再建への推進力となるべきトロイカ体制は崩壊した。関係者によると、グプタ氏は内田氏との関係がうまく機能していないとの個人的な懸念を周囲に漏らしていたが、内田氏とともに日産再建に向けて尽力するとの意思を示しているという。

内田社長に対して社内から批判があることについて、同社長を支持する関係者からは、日産の現在の業績不振は同社長の失策が原因ではないとの反論がある。一方、社内には、今後、日産が再建へのスピードを早め、成果を確実にするためには、内田社長がグプタCOOと今まで以上に協力を強化する必要があるとの声が出ている。

ロイターの取材に対し、日産は、内田社長について「社長兼CEOに任命され、プロベーションということは全く無い。そのような概念もシステムも日産には正式に存在しない」(広報)とし、業務改善の進展や内田氏とグプタ氏の関係についても「両氏は連絡を緊密にとり、情報をシェアしながら日産の固定費削減などを含めたリカバリープランや改革を進めている」(同)と答えている。

(取材協力:白木真紀 編集:北松克朗)

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