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やっぱり罰ゲームなのか 課長の95%はプレイングマネジャーという調査報告...なぜ?自分が活躍したいから? 産業能率大学 経営管理研究所・原義忠さんに聞く「課長の悲哀」(2)

J-CASTニュース / 2024年3月22日 18時43分

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課長の95%はプレイングマネジャー…それはいいことなのか

「課長はつらいよ」というため息が聞こえてきそうだが......。

「課長は罰ゲーム」という議論が広がるほど、管理職になりたがらない若者が増えているなか、課長の95%が部下と同じ仕事をこなす「プレイングマネジャー」であるという研究報告が発表された。

課長は管理職ではなく、プレイヤーに生き甲斐を見出しているのか。課長が本来の元気を取り戻すにはどうしたらいいか。報告をまとめた研究者に「課長へのエール」を聞いた。

Z世代は叱られるのもダメ、ほめられるのもダメ

<やっぱり罰ゲームなのか 課長の95%はプレイングマネジャーという調査報告...なぜ?自分が活躍したいから? 産業能率大学 経営管理研究所・原義忠さんに聞く「課長の悲哀」(1)>の続きです。

――ところで、6割以上の課長が、部下の育成力に自信を持てないでいるという調査も悲しいですね。
これは、組織が課長に対する研修などの教育を怠ったせいなのか。それとも「タイパ」(タイムパフォーマンス)や、「コスパ」(コストパフォーマンス)を重視する若者との「世代間ギャップ」のせいなのでしょうか。

原義忠さん まず、20数年前の新人時代に自分が教わった環境と、現在の環境が違い過ぎることが大きいと思います。特に、若い部下の意識が違っています。Z世代では、みんなの前で叱ることはもちろんNGですが、ほめることもNGだと言われます。

たとえば、A君が成果を上げたからと、課長がミーティングの席で「A君にチーム全員で拍手しよう!」と呼びかけたら、Z世代の若者はうれしくないそうです。「恥ずかしいから」と。叱られるのもダメ、ほめられるのもダメ。じゃあ、どうすればよいのか。

――面倒くさい...いやデリケートなのですね、いまの若者は。では、どうすればいいのですか

原義忠さん 「私にだけわかるように、ほめてほしい」のだそうです。向き合って、じっと自分の目を見つめて......(笑)。だからいま、ワン・オン・ワン(=1on1、上司と部下が1対1で行なう面談)が必要なのです。

昔は課長に呼び出されて1対1で話すことなど、何を言われるか、とても怖かったものです。ところが、いまの若い人は「私の話を聞いてほしい」「ひとり一人をしっかり見て欲しい」と、非常に重要視しています。

二軍コーチのように、部下ひとり一人に別メニューを

――課長は、具体的に若者をどう育成すればよいでしょうか。

原義忠さん 一人ひとりを育てる徹底的なプランニング(計画立案)が重要です。

また野球の話でたとえると、プロ野球の二軍コーチになれということです。二軍コーチは選手一人ひとりに別メニューを考えます。

たとえば、二軍投手陣のレベルアップのため、全員の球のスピードを10キロ速くすることを目指すとします。

その際、いまの若者は「タイパ」を重視します。短い時間で大きな効果を上げることを望んでいます。

そこで、もともと剛速球を投げるA選手には筋力アップのトレーニングを、足腰が弱いB選手には徹底的な走り込みを、投げるフォームが硬いC選手には、やわらかいフォームへの改造をと、ひとり一人の個性に合った練習計画を立てます。

――なるほど。それこそワン・オン・ワンによって、それぞれのプランを練り上げるわけですね。ところで、会社側は課長の部下育成力を高めるためには何をすべきですか。

原義忠さん 「大過なく過ごせばいい」といったリスペクトに欠ける冷たい対応をせず、課長が「部下の育成」に前向きになれる環境づくりに努めるべきです。もっと大きな権限を与えて課長のやりがいを引き出したり、課長が自由に発言しても組織の誰からもとがめられない「心理的安全性」を保証したりすることが大切です。

課長を心理の専門職がカウンセリングして、「心理的安全性」が高いか、低いか、職場で自由にものを言えずに悩んでいるかどうか、しっかりケアしてあげることも必要です。

何より、課長が若い世代から尊敬される役職であることを示さないと、「育成効果」があがりません。時間外手当は課長には支給されないので、係長より給料が安くなる課長も少なくありません。

課長になれば給料は減る、忙しさは増す、責任は重くなる、おまけに権限があまりない。それこそ「課長=罰ゲーム」になり、課長は部下から気の毒がられているありさまです。

会社は、課長個人の「善意」と「諦め」を利用するな

――たしかに、そのとおりですね。

原義忠さん 「大過なく過ごせばいい」といったリスペクトに欠ける対応をせず、会社は、課長個人の「善意」や「あきらめ」をあてにして、都合よく利用することをもうやめなさい、と強く言いたい。

プロ野球ならプレイングマネジャーとしてチームを優勝に導いたら、監督の年俸がグンとアップしますが、それがこと課長においては胴上げする機会さえ与えていないじゃないですか。

――最後に、それでも頑張っている全国の課長さんへのエールをお願いします。

原義忠さん まず、ご自身が「課長になったら、こんなに面白いことがあるよ」と部下に勧められる部分を、たった1つでもいいです。ぜひ見つけてほしいです。

そして、監督として采配を振るい、自分が目をかけて育てた部下が「大事なところで1本出た!」と勝った時、かつて自分が活躍した時以上にうれしくなってください。そんな課長になれば、部下からリスペクトを受けることは間違いありません。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)



【プロフィール】
原 義忠(はら・よしただ)
学校法人産業能率大学 経営管理研究所 人事・マネジメント研究センター主席研究員

人事コンサルタントとして企業・組織の人事制度設計および導入支援に従事するとともに、講師として管理職研修や評価者研修に携わる。

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