兵庫知事失職へ 出直し選に臨む大義あるのか
読売新聞 / 2024年9月27日 5時0分
公益通報への知事の対応に問題があったのは明白だ。議会が突きつけた不信任決議の意味を無視して出直し選に出馬する判断は間違っている。
兵庫県の斎藤元彦知事が30日に自動失職し、次の知事選に出馬する方針を表明した。
不信任決議に対し、辞職するのか、議会を解散するか、何もせず自動失職するかの選択肢の中で、失職を選んだことまではよいとして、問題はその先にある。
知事は記者会見で、辞職や解散は当初から考えていなかった、としている。辞職しないのは自らに非はないと言いたいのだろう。
議会の不信任については、一連の問題を巡り、「知事が職を辞すべきことなのか」とも述べ、納得できないとの考えを示した。
議会の不信任は、知事の資質そのものを全会一致で不適格と判断したものだ。議員の総意をあまりにも軽んじている。
失職後に、再出馬するという説明は、さらに理解しがたい。
不信任を受け、出直し選に挑んだ知事は、過去2人いる。長野県の田中康夫氏と徳島県の大田正氏で、2人とも政治理念や政策で議会と対立し、改めてそれらの是非を問うため選挙に出たものだ。
公益通報の対応を巡る知事の資質そのものが問われた今回とは様相が全く異なっている。
不信任に至った要因は、県幹部だった男性の内部告発を知事が公益通報として扱わず、側近職員による尋問まがいの調査で男性を懲戒処分した点にある。男性は7月に死亡した。自殺とみられる。
県議会の百条委員会では、知事や県の公益通報を巡る対応は、通報者への不利益な取り扱いや、通報者の特定を禁止した公益通報者保護法の趣旨に反していたことが明らかとなっている。
法律で認められているからといって、自分の誤りを認めず、県民のお墨付きを得て続投しようという判断は筋違いだ。率直に議会の意思を受け止めるべきだった。
知事は出馬理由について、改革を進めるためと説明した。仮に当選すれば新たに4年の任期を得るが、議会との信頼関係が失われている現状では、自分が考えるような改革を進めるのは難しい。
百条委や県の第三者調査委員会による調査は、いずれも年度内には終わる予定だが、結論が出た段階で知事の重い責任が改めて問われることになるだろう。
3月の告発後、県政の混乱は深まるばかりだ。これ以上、県民不在の政治を続けてはならない。
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