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必要な作業を推測・実行するAIエージェント、孫正義氏「2~3年以内に普及」…失業への懸念も顕在化

読売新聞 / 2025年1月11日 11時0分

富士通の「会議AIエージェント」は自ら必要な作業を推測する(昨年12月20日、東京都千代田区で)

[AI近未来 第1部]<4>

 昨年12月20日、東京都千代田区の富士通のオフィス。4人の社員が広告の費用対効果について議論していると、大型スクリーンに利益の推移を示す折れ線グラフが現れた。

 「利益のデータを組み合わせて、新しい情報を示してくれましたね」

 参加者の一人が語った。グラフを作ったのは人間ではない。会議に「参加」しているAI(人工知能)だ。

 同社の新サービス「会議AIエージェント」は、会話の内容や文脈から必要な作業を推測し実行する。会話を聞き取ってからグラフを表示するまで1分足らず。人間の指示は不要で、約10分間のデモ会議中、あたかも優秀な社員のように次々とグラフを出力してみせた。

 AIがこなす業務は、もはや質問に対して自然な回答をする「チャットGPT」などの対話型にとどまらない。ビジネスの現場では、人間の指示を受けず自律的に動くAIエージェント(代理人)と呼ばれる新たな機能が普及しつつある。

 先行する米国では、AIエージェントが取引先との交渉を一部担う例も出てきた。小売り大手ウォルマートは2021年から、商品を納入する取引先との購買交渉でAIを活用。従来は数週間から数か月かかった交渉が数日で済むようになったという。

 「AIエージェント同士がやりとりする世界の到来」を予想するのは、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長だ。昨年10月の講演で、生成AIが自ら判断して仕事をこなす個人向けのAIエージェントが、今後2~3年以内に急速に普及するとの見通しを示した。

 「ありとあらゆるあなた専用の相談相手になる」(孫氏)。近い将来、AIエージェント同士がスケジュール調整をしたり、打ち合わせをしたりする未来が訪れるとみる。

 ただ、AIは今のところ特定のタスク(作業)をこなすことは得意でも、全体最適を考えるには不向きだ。自部署の都合だけを考えて他部署にしわ寄せが出たり、リスクを踏まえた判断ができず会社に損害を与えたりする可能性もある。

 AIが業務を代替することによる雇用への影響も見過ごせない。

 米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は昨年11月の講演で、AIエージェントについて「誰かのタスクの50%を担うことが可能だ」と指摘。AIが50%の雇用を奪うわけではないとしたものの、すでに一部の業界では失業への懸念が顕在化している。

 米ブルッキングス研究所が24年10月に発表した調査によれば、米国の労働者の30%以上が生成AIによって業務の半分超を代替される可能性がある。製造業やサービス業では比較的影響が小さい一方、金融や法律などの職種が影響を受けやすいとした。

 それでもAI導入の動きは止まらないとの見方は多い。AI活用に詳しい電通グループの児玉拓也氏は「AIエージェントを適切に使いこなせれば人間の業務範囲が拡大し、非常に強力なツールになる。実用化が進むにはまだ数年かかる見通しだが、ネットやSNSのように浸透していくのでは」と予想する。

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