靴磨きで出会ったルワンダ女性、虐殺生き延び「笑顔の運び屋になりたい」…世界を旅する30歳「たくさん物語もらった」
読売新聞 / 2025年1月11日 13時7分
靴磨きをしながら世界中を旅している佐原
大阪市出身。大学4年生の頃、英語を学ぶためフィリピンに2週間留学したことが、世界に目を向けるきっかけだった。
ゴミ拾いで生計を支え、学校の屋根の下で寝泊まりする家族を目にし、タクシー運転手には料金をぼったくられた。日本では想像もしなかった人たちと出会い、「もし僕が他の国に生まれていたらどうなっていたのか」と考えるようになり、広い世界を見てみたいとの思いを募らせた。
大学卒業後、テーマパークに就職したものの、夢が頭から離れず、2年後に退職。資金を稼ぎながら旅をするために思いついたのが靴磨きだ。
小学生の頃から野球に打ち込み、グラブやスパイクを磨くのは日課だった。職人が手がける専門店で新品より輝いて見えるようになった靴に、心が弾んだ。「靴磨きは『上機嫌を売る』仕事なんだ。きっと世界中で喜んでもらえる」。動画や本で方法を学び、まずはヒッチハイクで日本各地を巡った。出会った人の靴を磨いたり、専門店を訪ねて職人に教えを請うたりして技術を身につけた。
2020年春、初めて海外での靴磨きを行った台湾で、現地で商売を手がける日本人男性に「目の前のお客さんを大事にするのが仕事や」と言われた。以来、「どんな靴でも“一磨き入魂”」がモットー。22年にアジアなど9か国、23年にヨーロッパなど12か国を巡った。
路上や駅で靴を磨く人を募り、料金を支払うかどうか、金額も相手任せだ。1足に向き合う約15分間に、様々な言葉を交わす。
アイルランドでは、高級そうなスーツを身につけたビジネスマンの依頼を断り、先に声をかけてきたホームレスの男性のぼろぼろの靴を磨いた。喜んだ男性が、持っていた2ユーロを渡してくれたことが忘れられないという。
スペインでは、到着した日に靴磨きの道具一式を盗まれた。だが旅先で知り合った靴磨きの世界大会優勝者らが「困っているなら」と道具をプレゼントしてくれた。
昨年4~11月にアフリカを中心に16か国を旅した。コンゴ民主共和国では高額なスーツで街に繰り出す「サプール」というオシャレな男性たちの靴を磨いた。「服が汚れるから戦わない」という哲学を持つといわれる。着飾る理由を佐原さんが問うと、「外見に見合ういい紳士であろうと、内面を律することができるからだ」と答えが返ってきた。
1994年に80万人超が犠牲になったルワンダ虐殺を生き抜いた女性に「残りの人生、何をしたいか」と尋ねると、「笑顔の運び屋になりたいね」と返されたという。
靴磨きのお礼として抱きしめてくれたり、食事をごちそうしてくれたりする人もいた。「僕は靴磨きをして、相手からたくさんの物語をもらった。お互いに相手にあげられるものを交換しているような気持ちだった」と振り返る。
旅の報告会や学校での講演を始めたのは、国内で出会った人たちから「旅をする理由や感じたことを子どもたちに話してほしい」と言われたことがきっかけという。旅の最中はインスタグラムなどで出来事を発信する。「息子は難病で車いすを使っている。自分では飛び回ることが難しいけれど、世界を見せたい」と親子で楽しみにしてくれている女性もいるという。
アフリカ旅の報告会は香川も含め、1~4月に18都府県で開かれる。海岸寺での報告会は午後2~5時。定員60人。参加費は一般3000円、高校生以下無料。次回の旅の資金に充てられる。
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