ロサンゼルス山火事、略奪で逮捕者も…ハリウッド観光にも影「コロナ禍以外ではこんな事態初めて」

７日、米ロサンゼルス西部で発生した山火事＝後藤香代撮影

　【ロサンゼルス＝冨山優介】米ロサンゼルス近郊で相次いで発生した山火事は死者が１１人に達し、鎮火の見通しも立っていない。被害拡大が続く中、「映画の聖地」と呼ばれるハリウッドなど、一帯の主要産業である観光にも暗い影を落とし始めている。

　「人出はいつもに比べて１０分の１以下だ」。日本人にもおなじみのハリウッドの観光名所「ＴＣＬチャイニーズ・シアター」近くの土産物店の店長アダム・ロドリゲスさん（３０）はそう嘆いた。

　女優マリリン・モンローら著名人の手形や足形が刻まれた同シアター前の広場は通常、世界各地からの多くの観光客でにぎわうが、山火事発生後は閑散とした状態が続いている。

　この地で長年、観光客への案内を続けているグレッグ・ドノバンさん（６５）は、「コロナ禍を除けば、こんな事態は初めてだ。早くにぎわいが戻ってほしい」とため息をついた。

　「混んでいないのは助かるけど、少しさみしいよね」と話すのは、コロラド州デンバーから旅行に来ていた会社員セシリア・ザイトリンさん（５１）。「災害で大変な時だから、できるだけこの地域のためにお金を使うようにしたい」と語った。

　ロサンゼルス郡によると、１０日午前の時点で約１５万人が避難指示の対象となっている。８日にはハリウッド付近でも山火事が発生し、一時、近隣に避難指示が出た。ロサンゼルス北郊にあるテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド」も８、９の両日は休園の措置を取った。

　７日の山火事発生以降、燃え広がる激しい火災の映像がニュースで繰り返し流され、煙による健康被害も懸念されている。従業員が出勤できずに休業するレストランなども出ており、こうした状況も、観光客の足を一帯から遠ざける要因となっている。

　混乱に乗じた避難指示地域での窃盗などの犯罪への懸念も強まっている。既に略奪容疑での逮捕者も出ているといい、ロサンゼルス郡地方検察は、「略奪、詐欺、窃盗、強盗などのいかなる犯罪行為も裁かれる」と警告を出した。

　ロサンゼルス郡の検視担当者は１０日、山火事に関連する死者が１１人になったと発表した。地元当局によると、焼失面積は約１４５平方キロ・メートルに及び、少なくとも建物１万棟が焼失した。さらに約５万８０００棟に延焼の危険があるとしている。

　カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は１０日、自身のＸ（旧ツイッター）で、トランプ次期大統領に、被災地域の視察を求める手紙を送ったと明らかにした。