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[New門]「女流」棋士と「女性」棋士、同じ棋士でも大きな違い…間にそびえる高い壁

読売新聞 / 2025年1月12日 5時0分

将棋界と女流棋士 50年の歩み

 将棋の西山朋佳女流三冠が、女性初の「棋士」になるまで、あと1勝に迫っている。「女流五段」という段位を持っている西山女流三冠だが、七冠を保持する藤井聡太竜王(九段)が頂点に君臨する棋士の序列には入っていない。将棋を職業にしている共通点はあるが、棋士と女流棋士には大きな違いがある。

「棋士」は四段以上のプロ

 将棋で「棋士」とは「四段以上のプロ」のことで、現役の棋士は174人いる。規定の条件をクリアすれば、男女を問わずなれるが、これまで棋士になった女性はいない。

 「女流棋士」とは女性限定の別制度だ。歴史的に男性中心の将棋を女性にも普及させようと、日本将棋連盟が1974年に創設し、蛸島彰子女流六段ら6人が一期生となった。現在82人が現役で活動している。

 棋士を目指す西山女流三冠が現在挑戦しているのが「編入試験」だ。試験は、試験官を務める若手棋士との五番勝負で、3勝すると四段になれる。昨年9月に始まった試験で、西山女流三冠は、第4局を終えて2勝2敗。最終第5局は22日、関西将棋会館(大阪府高槻市)で行われ、柵木ませぎ幹太四段に勝てば、史上初の女性棋士が誕生する。

 今回の試験官5人はいずれも若手の四段だが、女流のタイトルを保持する西山女流三冠でも簡単に勝てる相手ではない。彼らは、棋士になるための養成機関「新進棋士奨励会(奨励会)」での激戦を勝ち抜き、厳しい条件をクリアした猛者だからだ。

最終関門「三段リーグ」に3人苦杯

 奨励会は通常6級からスタートし、毎月2回の例会で行われる会員同士の対局で規定の成績を収めると昇級、昇段する。ただし、アマチュア高段者相当の棋力がなければ、入会することすらできない。奨励会員は現在、6級から三段まで計201人いるが、女性は6級に所属する竹内優月女流2級の1人だけだ。これまで奨励会入りした女性は西山女流三冠を含めて計21人しかいない。

 入会できても、奨励会には所属できる年齢に制限がある。21歳までに初段、26歳までに四段に昇段できなければ原則退会しなければならない。そしてプロ入りへの最終関門となるのが「三段リーグ」だ。リーグ戦は年2回行われ、各リーグで計18局を指して2位以内に入ると、四段に昇段し、念願の棋士になれる。進行中の第76回リーグでは44人がこの2枠を争っている。

 三段リーグを戦ったことのある女性は、西山女流三冠、福間香奈女流五冠、中七海女流三段の3人で、いずれも四段にはなれなかった。西山女流三冠は、第66回リーグで14勝4敗と健闘。上位2人と成績で並んだが、前期リーグの順位が3人の中で最も低かったため3位となり、史上初の女性棋士になり損ねた。

 14歳2か月という四段昇段の最年少記録を持つのが藤井竜王だ。デビューから公式戦29連勝という歴代最多連勝記録を達成した藤井竜王ですら、昇段を決めた第59回リーグでは13勝5敗だった。最終戦の相手は西山女流三冠で、藤井竜王は勝って1位となった。もし敗れていたら12勝6敗で6人が並ぶ6位にとどまり、昇段を逃していた。

 藤井竜王は以前、「プロは負けても次がある。奨励会員は勝たなければ次がない」と、タイトル戦よりも奨励会の方が緊張したと語ったことがある。

 一方、女流棋士になる条件は、棋士ほど厳しくない。奨励会の下部組織である「研修会」で勝ち星を重ねて、上位クラスに入れば、女流棋士2級となる資格を得る。当然、奨励会を突破した棋士に比べると、将棋の実力では及ばない。そんな女流棋士であっても、三段リーグを経験した西山女流三冠なら、初の女性棋士になる可能性は高い。

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