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韓国の大統領警護庁、捜査本部との「対決」崩さず…「政府機関同士が対立する未曽有の状況」

読売新聞 / 2025年1月12日 5時0分

11日、ソウルで集会に参加する尹大統領の支持者たち=AP

 【ソウル=依田和彩】韓国の尹錫悦ユンソンニョル大統領の逮捕状執行を巡り、合同捜査本部と尹氏を警護する大統領警護庁のにらみ合いが続いている。複数の韓国メディアは、週内にも合同捜査本部が逮捕状執行に踏み切るとの見方を伝えたが、警護庁は阻止する構えだ。与野党間の根深い対立が、政府機関同士の大規模な衝突につながりかねない混迷を招いている。

 合同捜査本部は高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)や警察などで構成する。警察は、10日に辞任した朴鍾俊パクジョンジュン・前警護庁長の権限を代行するキム・ソンフン次長に対し、尹氏の逮捕状執行を妨害した疑いで11日に出頭するよう要請していたが、キム氏は応じなかった。

 キム氏に対する出頭要請は3度目だった。キム氏は11日に発表したコメントで、出頭に応じなかった理由について「警護庁長の職務代行として一時も席を外すことができない」と主張し、対決姿勢を鮮明にした。警察はキム氏の強制捜査を検討しているという。

 韓国日報によると、キム氏は警護庁長も務めた金龍顕キムヨンヒョン前国防相に近い「強硬派」と評されている。合同捜査本部が逮捕状執行に踏み切れば、キム氏が指揮する警護庁と激しく衝突する事態が懸念される。

 合同捜査本部側は執行に向けて入念な準備を進めている。韓国主要紙・東亜日報は11日、警察関係者の話として、尹氏の逮捕状を執行する際の具体的な動きについて「大統領の逮捕は公捜庁が、警護庁(職員)の逮捕は警察が主導することにした」と伝えた。

 合同捜査本部は3日にも執行を試みたが、警護庁に阻止されて約5時間半で断念し、批判を浴びた。同紙によると、次回の執行では公邸前にテントなどで拠点を作って捜査員が寝泊まりし、長期戦に備える案も検討されている。再び阻まれれば合同捜査本部は抜本的な戦略の練り直しを迫られ、現職大統領が逮捕されれば韓国史上初の異常事態となる。

 警察は10日に続き11日も、朴前警護庁長の事情聴取を行った。韓国メディアは、朴氏の逮捕状請求も視野に検討していると伝えた。

 政界では、尹氏の逮捕に反対する保守系与党「国民の力」と、合同捜査本部に早期の逮捕状執行を求める左派系最大野党「共に民主党」の対立が続く。政府機関同士の一触即発の状況は、与野党間の断絶と関連している。

 国民の力の権寧世クォンヨンセ非常対策委員長は10日、「尹錫悦(大統領)に手錠をかけて連行することは、国の品格を大きく落とすことだ」と批判した。これに対し、共に民主党は11日に発表した声明で、朴前警護庁長の辞任を踏まえ「警護庁に亀裂が入り、要塞ようさいは崩れている。(尹氏の)逮捕と警護庁の廃止は時間の問題だ」と主張した。

 尹氏の大統領権限を代行する崔相穆チェサンモク副首相兼企画財政相は、10日に発表した声明で「逮捕状執行を巡り、公捜庁と警護庁が激しく対立する未曽有の状況だ」と指摘した。尹氏の内乱罪を捜査する特別検察官を任命するための法案成立に向け、与野党が協議を始めるよう要請したが、一堂に会するのは困難な状況が続く。

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