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アングル:ロシア情報機関に厳しい目、兆候見逃し乱射事件阻止できず

ロイター / 2024年3月26日 15時4分

モスクワ郊外で22日に起きた銃乱射事件をきっかけに、ロシアの情報機関である連邦保安庁(FSB)に厳しい目が向けられている。写真は事件現場の会場前で24日撮影(2024年 ロイター/Maxim Shemetov)

[ロンドン 25日 ロイター] - モスクワ郊外で22日に起きた銃乱射事件をきっかけに、ロシアの情報機関である連邦保安庁(FSB)に厳しい目が向けられている。プーチン大統領の敵対勢力の取り締まりで辣腕(らつわん)を振るう一方、今回の乱射事件では不意を突かれて多数の市民が死傷し、活動の優先順位や資源、情報収集のあり方が問われているためだ。

旧ソ連国家保安委員会(KGB)の流れをくむFSBは、国内でウクライナの破壊工作員を捜索し、反政府活動家を取り締まりつつ、敵対する外国情報機関の活動の妨害も図っている。

こうした多忙さが一因となり、今回の事件で犯行声明を出した過激派組織「イスラム国ホラサン州」など他の危機要因を見落としているのではないか、というのが専門家の見方だ。 

米中央情報局(CIA)のモスクワ支局長を務めたダニエル・ホフマン氏は「あらゆることをいっぺんに手掛けるのは不可能だ。国内の締め付けを強めても、潜在的なテロ攻撃について必要な情報が得られないこともある。今回はそこで失敗した」と分析。「FSBはウクライナ戦争や反体制勢力への対応に追われているのだろう。乱射事件はその間隙(かんげき)を縫う形で起きた」と述べた。

FSBは22日のコンサートホール襲撃が「入念に」計画され、犯人は慎重に武器を隠していたと発表した。

ロシア大統領府は25日、乱射事件が起きたのは情報機関が対応に失敗したからではないかとの質問に、ロシアは西側諸国と対立しており、情報共有が以前のように行われていないと回答。

ペスコフ大統領報道官は「残念ながらこの世界ではどの都市も国も、テロの脅威と無縁ではいられないということだ」と述べ、ロシアの情報機関は国を守るため、たゆまぬ努力を続けていると付け加えた。

とはいえ、乱射事件で少なくとも139人が死亡、180人が負傷し、国民の安定と安全を守るというプーチン氏の以前からの公約は大きく傷ついた。ウクライナ戦争に伴う暴力をほとんど体感することがなかったモスクワ市民の間でも衝撃が広がっている。

<兆候を見過ごしか>

実行犯がISの指示を受けたのか、ウクライナと何らかのつながりがあったのか、まだ判然としない。しかし、事件につながる前兆があったにもかかわらず、見過ごされていたようだ。

安全保障アナリストによると、今回の事件は襲撃や逃走の仕方から犯人は会場を広範囲にわたり事前に偵察していたと考えられる。ロシアの地元メディアは、銃撃犯の1人が早い段階で事件現場に来ていたことを示す監視カメラの映像を公開した。

在ロシア米国大使館は7日、米国人に対し「過激組織がモスクワで、コンサートを含む大規模な集まりを標的にする計画が差し迫っているとの報告があり、推移を注視している」とする警告を発した。

だが、プーチン氏は19日にFSB幹部を前に演説し、西側の警告はロシアの動揺を図る策略にすぎないと述べた。

ニューヨークのニュースクールで国際問題を教えるニーナ・クルシュチェワ教授の話では、FSBはISを視野には入れていたようだが、プーチン氏はロシアが米主導の西側諸国との存亡を賭けた戦いに巻き込まれていると考えており、そうした状況下ではロシア政府が米国からの安全保障上の警告を額面通りに受け取ることは難しいという。

<FSBが守るのはプーチン氏>

ロシアでの勤務経験を持つ元CIA幹部のジョン・サイファー氏は、FSBはプーチン氏と同氏に対する政治的脅威などに集中するあまり失態を演じてしまったのではないか見ている。「FSBは市民を守ることよりもクレムリンを守ることに力を注いでいる」と述べ、プーチン氏は今回の事件をテコに、新たな行動を正当化したり、西側諸国やウクライナに対抗したりするだろうと予測した。

今回の乱射事件では、ほかにも警告となるような動きが事前にあった。ロシア南部では2日、FSBの特殊部隊がISのメンバーであると特定した6人の武装集団を殺害。

また、FSBは7日、ISが計画していたモスクワのシナゴーグへのテロを阻止し、犯人が銃撃戦で死亡したと発表した。

イスラム過激派の研究者、リッカルド・ヴァッレ氏は、3月に入ってからの2つの事件で警戒を強めるべきだったと強調。「ロシア国内にISのネットワークが存在し、しかも武器を入手し、特殊部隊に対して強力に抵抗ができるものだと分かっていたなら、モスクワの治安機関に警鐘を鳴らすべきだった」と対応のまずさを指摘した。

2022年9月にカブールにあるロシア大使館が攻撃を受けた事件や、イスラム国ホラサン州による過去の声明や攻撃からも、同グループがロシアを標的にしていたことは明らかだという。

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