ミャンマーから2度逃れた〝ダブル難民〟軍事政権打倒デモで来日→民主化で帰国→クーデターで再来日 【あなたの隣に住む「難民」②】
47NEWS / 2024年3月8日 10時30分
「日本に逃れたのは2回目。私は〝ダブル難民〟だ」
横浜市の自宅アパートで、ティンウィンさん(68)は苦笑した。
ビルマ(現ミャンマー)の古都マンダレーの裕福な商家に生まれた。1988年、軍事独裁打倒を掲げた民主化活動が全土に広がると、地元でデモを組織。5カ月間、投獄される。
釈放後、ノーベル平和賞を受けたアウンサンスーチーさんが率いる政党・国民民主連盟(NLD)に参加し、国軍に追われるようになった。「地獄に落ちたような気分」で家族と別れ、96年に来日。法務省入国管理局(現出入国在留管理庁)に難民認定を申請した。
日本の難民審査は厳しく、認定される人の数も割合も欧米諸国に比べ桁違いに少ない。ティンウィンさんは、支援した渡辺彰悟弁護士が「この人が難民じゃないなら、誰を認めるの」と言うほど分かりやすいケースだったが、2年余りかかって認定された。(共同通信編集委員=原真)
「でも、何も変わらなかった」。ティンウィンさんは振り返る。
日本政府による無償の日本語教育を受けたものの、半年間では上達しなかった。母国では民主化のリーダーで、英語も堪能なのに、能力を生かせる仕事が見つからない。呼び寄せた妻と子ども3人を養うため、飲食店やパチンコ店、工場など、職を転々とした。
▽帰国後にクーデター
2015年、母国の総選挙でNLDが圧勝する。その翌日、ティンウィンさんは東京のミャンマー大使館に赴き、失効していたパスポートの再発行を求めた。「千載一遇のチャンスだ。民主化のために働きたい」。帰国して、故郷のNLD支部で活動を再開した。
ところが、インド系イスラム教徒のティンウィンさんは、多数派のビルマ人仏教徒から差別に遭う。「NLDは私を重要な役職に就かせなかった。失望した。民主主義への障害は国軍より、仏教ナショナリズムかもしれない」
「Z世代」と呼ばれる10、20代の若者を集めて政治について講義したり、外国使節の通訳を務めたり、活動は続けていた。しかし、21年2月1日、国軍がクーデターを起こす。
「全く予想していなかった。NLDに問題があっても、民主化は確実に進んでいた。だから人々は自由を捨てたくないと、身柄を拘束されたスーチーが呼びかけなくても、デモに立ち上がった」
そのデモを国軍は武力で弾圧する。近所に住む少女も犠牲になった。ティンウィンさんは葬儀に参列した後、再び日本に脱出した。
NLDは少数民族組織と連帯し、国軍に武装闘争を挑んでいる。内戦状態ながら、ティンウィンさんは楽観的だ。「若いリーダーは民族や宗教で差別しない。いずれ帰国できると信じている」
外部リンク
- 「平和愛する国なのに」なぜ日本は入国拒否?悪名高い収容所「グアンタナモ」に14年拘束、嫌疑晴れたベストセラー作家は「許しと和解」を訴える
- トランプ氏が共和党内で「敵なし」になったきっかけは、自身への「刑事訴追」だった 被告人の立場を最大限に有効活用 一方で「ボディーブロー」になるかも…【混沌の超大国 2024年アメリカ大統領選(4)】
- パレスチナ支援機関への資金拠出停止は「ガザ市民への死刑宣告」 食料や医療の「生命線」が断ち切られる恐れ、日本への失望も
- 能登の火葬場がほぼ使えない…葬祭関係者の知られざる奮闘 増え続ける遺体、でも「最後の尊厳だけは守りたい」
- 「やる気が萎えた」全国のヘルパーが激怒、訪問介護の基本報酬がまさかの引き下げ 国の方針のウラに隠れた「ある変化」とは
この記事に関連するニュース
-
スーチー氏「人間の盾」に 移送で所在不明、次男懸念
共同通信 / 2024年4月18日 22時32分
-
アングル:「すべてを失った」避難民850万人、スーダン内戦1年で続く苦境
ロイター / 2024年4月16日 16時0分
-
「母国の民主化を支援したい」 難民認定ミャンマー出身者が会見
共同通信 / 2024年4月14日 20時19分
-
自衛隊機による邦人避難より1年、世界最悪の飢餓の危機も。多くの犠牲を出しながらなぜ戦闘は長期化しているのか、4/9(火)最新のスーダン情勢とともに報告
PR TIMES / 2024年4月5日 18時45分
-
単身で軍に抵抗したミャンマー元警察官の願い スーチー氏の顧問を救援、日本で難民認定
東洋経済オンライン / 2024年4月5日 8時0分
ランキング
-
1傷害致死事件の“やり直し裁判”で無罪判決から一転 懲役6年の判決に… 新潟地裁は事件をどう判断したのか
BSN新潟放送 / 2024年4月27日 8時12分
-
2天然記念物ヤンバルクイナの羽を掃除する「良いダニ」発見 沖縄で新種 東邦・法政大のチーム「絶滅の危機」
沖縄タイムス+プラス / 2024年4月27日 8時14分
-
3みどりの窓口、長さ2mのステンレス材が天井突き破り落下…立ち入り規制し営業継続
読売新聞 / 2024年4月27日 14時11分
-
4クレマチス、きょうから特別公開
時事通信 / 2024年4月27日 8時55分
-
5橋の欄干にロープ巻き付け立ちすくむ男性…声かけた大学生「自殺かも」、悟られないよう110番
読売新聞 / 2024年4月27日 14時34分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください