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家の中はゴミだらけ、自慢の庭は荒れ放題に…30年ぶりに同居して知った70代実母の本当の姿

オールアバウト / 2024年3月28日 22時5分

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自分が家をでてから母は気落ちし、すっかり人見知りのおとなしい性格に変わっていた。父の死を機に母を引き取ったが、自分からは何もしないしどこにも行こうとしない。せっかくの自由を謳歌してほしいのに……。

実母とはいえ、長く別々に暮らしたあげく同居してみると、「この人、こういう人だっけ?」と思うことがある。親子なんて、案外、理解しあってはいないのかもしれない。

約30年ぶりの実母との同居

「私は大学入学と同時に東京へ出てきて、それ以来ひとり暮らしをしていました。15年のひとり暮らしを経て結婚。子どもも生まれました。家族4人で、忙しいながらも楽しい日々を送っていたんですが……」

そう話すのは、ノリエさん(48歳)だ。33歳のとき、長年の友人だった男性と結婚し、今年から中学生になる娘がいる。一昨年、実父が闘病の末に亡くなった。ノリエさんには弟がいるが、現在は海外暮らし。

母はひとりで暮らしていけると言っていたが、あるときノリエさんが様子を見に行くと、家の中はゴミがたまり、父の自慢だった庭も荒れ放題。

「もう付き合っている親戚もほとんどいないし、母を施設に入れるしかないのかなと考えましたが、母自身は家にいると言い張る。夫が見かねて『うちに来てもらえば?』って。

私自身、母と一緒に暮らしたのは18歳までだし、今さらうまくやっていけるのかと不安でしたが、とにかくひとりで置いておくよりはいいかと……」

母は以前の母とは違っていた

うちに来て一緒に暮らすのをどう思うかと母に聞くと、どんよりしていた目に急に力がこもった。家事は私がやるから、あんたも仕事に専念していいからと早口で言った。やはりひとりでは寂しかったのだろう。

「結婚したとき中古のマンションを購入したんですが、けっこう広いんですよ。4LDKあるから母にも個室を使ってもらえる。夫と娘も賛成してくれたので、昨年春、母を迎え入れました」

母はもともと東京生まれ。結婚して夫の転勤で中部地方のとある町に居を構えて落ち着いた。アヤカさんはそこで生まれたのだ。

「もともと東京の人だし、馴染めないこともないだろうとたかをくくっていたんです。私の知る母は社交的で、すぐに誰とでも仲良くなるタイプだったし」

ところが母は、以前の母とは違っていた。

家にひきこもる母

アヤカさん一家と同居するようになった母は、しばらくは疲れたのか寝てばかりいたという。70代半ばで環境が変わったのだからしかたがないと、アヤカさんもゆるやかに見守っていた。

「ただ、1カ月たっても外へ出ようとしないんです。母は歌舞伎を見たいと言っていたから、今月はこんなのやってるよ、行ってみたらといっても生返事をするばかり。

じゃあと、娘と一緒に3人で近所を散歩して、地域でこんなサークルがあるということもいろいろ教えたんですが興味がないみたいで」

マンション内には同世代の女性もいるので紹介もした。茶飲み友だちを見つけたいならと、地域の老人会へも連れていったが、母は気乗りがしないようだった。

「隣の駅前にはスポーツジムもあるし、やりたいことは何でもできるんだから何か見つけたほうがいいと言いました。少しずつ家事はやってくれていましたが、なんだか元気がないので心配だった」

ノリエさんの知っている母ではなかった。年齢のせいなのか、はたまたどこか悪いのか。弟にメールでそんなことを話すと、弟は「お母さんって、もともと人見知りだよ」と返事を寄越した。

「びっくりしました。弟の目にはそういう母だったのか、と。私と弟は8歳離れているんですよ。だから私が家を出たとき、弟はまだ10歳。弟が10代のときに見てきた母は、人見知りであまり外に出ることもなく、父の陰に隠れて生きているような人だったらしいんです。

私は授業参観に来て、他のお母さんと話している姿とか笑顔が印象的だったんですけど。弟に言わせると、私が進学で家を出てからおかあさんは元気がなくなったって。今さらそんなことを言われてもね……」

人見知りで引っ込み思案な母にショック

いくら子どもを愛していても、子の人生と自分の人生は違う。ノリエさん自身、そう思って子どもを育てているので、独立した娘を恋しがって元気をなくす母の気持ちがわからなかった。

「それから意識して母に接していたんですが、確かに母は私が誘えばついてくる。だけど自分から何かをしたい、どこかに行きたいとはいわないんです。

ただ、私も忙しいから、母にべったり付き添っているわけにはいかない。そこをわかってほしいし、母は今、自由なんだからその自由を謳歌してほしいと話したんです」

すると母は「人間って何のために生きてるんだろうね」とポツリと言った。ノリエさんは「何のためなんて考えなくていいの。生きてるうちは楽しめばいいの」と言い放った。

「あんたは強いねと母はため息をつきました。やはり30年も離れていると、お互い、こういう人だと思い込んで誤解が生じているんでしょうね。もともと母は人見知りで引っ込み思案なのかもしれない。

でも、そのままでいたら楽しくないのもわかっていると思うんです。あるとき、母が近所の人に挨拶されて、声も出さずに会釈するだけなのを見てしまった。そもそも人付き合いさえできないのかと、けっこう私は私でショックでしたよ」

夫は気を遣って、週末、母をドライブに誘ってくれる。少しずつ今の生活に慣れることが大事。日々、楽しいと思えるようにしてあげようと言ってくれる夫には感謝しかないと彼女は言った。

夫にそこまで深い優しさがあるとは思っていなかったらしい。それが思わぬ副産物だったかもと彼女はようやく笑顔を見せた。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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