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ドコモが狙う“スマホの次“ iPhoneから「Vision」の時代へ

ASCII.jp / 2024年3月20日 7時0分

筆者提供

 ここ数年、IT業界は「スマホの次」を掘り当てようと躍起だ。かつてはウェアラブルやIoTなどが期待されており、つい最近までは「メタバース」が盛り上がるとされていた。しかし、ChatGPTなどの生成AIが登場すると、業界は猫も杓子も「AI」をもり立てるようになった。

 一時期に比べてメタバースは沈静した感があるが、着実に市場は広がりつつある。

 NTTドコモの関連会社であるQONOQ(コノキュー)は開発中のARグラスを披露した。

 同社の丸山誠治社長は「いつでもどこにでも持ち歩けるデバイスを目指した。ナビゲーションや翻訳、リモート会議などの用途を狙っていく」と語る。

NTTコノキュー 丸山誠治代表取締役社長

 デバイスの製造はコノキューとシャープが合弁で設立したNTTコノキューデバイスだ。シャープということで、スマートフォンの開発、製造の実績もあり、チップはSnapdragon AR2を採用。ARグラスとスマートフォンを無線で接続する。

 プラットフォームとしてはクアルコムの「Snapdragon Spaces」を採用しており、Androidスマートフォンのアプリが動くようになっている。

 デバイスのコンセプトとしても「PCに対するスマホ的な立ち位置を狙う」(丸山社長)とのことだ。

 将来的に発売する意向だが、当面はデベロッパーに向けて、まずは仕様を公開していくスタンスだ。

「Apple Vision Pro」登場で再ブームの予想

 メタバース市場は昨年まで、メタ社が「Meta Questシリーズ」で孤軍奮闘していた感がある。

 コノキューでもメタ社の製品をリセールし、サービスとともに企業に販売してきた。

 丸山社長は「メタバースは、特に教育分野などで活用されている。不登校対策として学校に行けない生徒でも疑似空間で授業が受けられるのが評価されている」と語る。

 一時期、メタバースは盛り上がりを見せていたが、沈静化しつつあるのは事実でもある。

 そんな中、今年2月、アップルから「Apple Vision Pro」がアメリカで発売となった。アップルは「メタバース」とは一言も言っておらず、あくまで「空間コンピューター」として売り出しているが、没入感のある体験ができるという点においては「メタバースなデバイス」でもある。

 丸山社長はApple Vision Proの登場について「我々にとってプラスと言える。業界が再活性化し、ブームがまた起きることも予想される」と期待する。

XR業界の「キャリア」的な立ち位置狙う

 本体価格が50万円もするApple Vision Proが日本に上陸したとしても、すぐに爆発的にヒットするとは考えにくい。当然、アップルもそんなことは百も承知であり、今後数年かけて、スタンダードな「Apple Vision」、さらに廉価版の「Apple Vision SE」や、軽さにこだわった「Apple Vision Air」なんてモデルを矢継ぎ早に出すことで、空間コンピューターの市場を一気に奪っていくつもりだろう。

 ただ、コンテンツやアプリ開発の視点でいえば、Apple Visionシリーズが普及することは、他のデバイスにとって間違いなく「追い風」になる。

 丸山社長は「ゲームなどの開発環境はメタやアップル、コノキュー、どのデバイスであってもすべてUnity上で実行されている」と語る。 

 NTTコノキュー自体は、デバイス専門のメーカーではなく、XRデバイスとサービスをセットにして売る会社だ。NTTコノキューデバイスはメーカーなのでアップルとは競合となるが、NTTコノキューはXR業界ではスマホのキャリア的な立ち位置だ。

 いまのところは何も決まっていないようだが、日本でNTTドコモがiPhoneを扱ったように、コノキューがApple Vision Proを扱いつつ、これまで培ったXRアプリやサービスをApple Vision Pro向けに供給するという可能性も考えられそうだ。

「快適な日本語入力環境」実現に期待

 筆者はApple Vision Proを購入し、日々、使っているが、やはり「アプリの少なさ」と「文字入力の不便さ」に不満を感じている。

 アプリはデバイスが普及すれば増えていくだろう。一方で、文字入力に関しては、現在は英語のみしか対応していない。今後、Apple Vision ProのOSがアップデートされ、日本語対応となっても、どこまでなめらかに気持ちよく、日本語を入力できるかは未知数だ。

 他のXRデバイスでもコミュニケーション機能は備わっているものの、やはり日本語の入力はひとつの壁となっている。丸山社長も「インプットするのが難しいし、今後、ブレイクスルーは必要だ。(NTT)持株のNTT研究所でも取り組んでいる課題だ」と問題意識を抱く。

 せっかく、日本のNTTコノキューやシャープがXRに向けて取り組んでいるのだから、この「XRデバイスで快適な日本語入力環境の実現」という課題を解決して欲しい。それこそ、日本でXRデバイスが普及するための近道のような気がしてならない。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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