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自宅でレーザーによる「金属の切断」「金属の着色」「サビ取り」にチャレンジしてみた

ASCII.jp / 2024年3月27日 16時0分

金属刻印だけに使うのはもったいない

 「魔法の光線」のようなレーザー。その使い方はさまざまです。筆者が導入したレーザー機器による1064nm波長のレーザーでは(本連載の前々回「24万円を払ったのに音沙汰なし? レーザー機器の個人輸入が大変だった」をご覧ください)、金属に文字や模様などを刻印することが主な用途とされています。

出演場所の壁に貼られる筆者のサインプレートを製作(真鍮製)

 しかし、20Wというやや高出力のレーザーを金属刻印だけに使うのは、なんとなく機械を持て余してしまいそうです。

 ちなみにスペック上のファイバーレーザーの寿命は、およそ10万時間といわれています。もし、1日に4時間ほど、365日使ったとしても3年弱持つ計算です。

金の指輪に刻印してみた(18金)。1mm以下の極小文字も刻印できるのがレーザーのメリット

 そんなことから、今回は、金属板の切断、金属への着色、錆び取りなど、レーザーのいろいろな使い方を試してみました。

金属板の切断

 まず最初は金属板の切断です。金属が削れるということは、切断もできるはず。とくに厚さ1mm以下の金属板を曲げてしまわずに切るのは難しいうえ、時間もかかります。

 レーザーで切断可能ならラクなのですが、レーザーで金属の切断をする場合の注意点もいくつかあります。

 たとえば、レーザーの線径が極細で高温なため、普通にレーザーを往復させると切断した部分が熱で溶着してしまい、うまく切断できません。

 そこで、レーザーを螺旋状に動かし、切断する幅を0.1mmほど作って切断します。

切断時のレーザーの動き。レーザーが細すぎても切断できない

 レーザーだけで完全に切断してしまうと材料が高熱になり変形してしまうため、切断する金属の厚みの5〜8割ほどをレーザーで彫り、最後は板チョコのように割ることで切断できました。

 0.5mmの厚みの真鍮板なら、200回ほど往復させると簡単に切断できます。200往復というと時間がかかるのでは思うかもしれませんが、1分弱で作業は終了します。

 この方法は、切断面がわずかにざらつきますが、ノコギリなどを使った切断方法でも同じようになります。ネームプレートなど、手に触れる部品を作る場合は切断面に軽くヤスリをかけています。

レーザーによる着色

 レーザー加工によって、金属表面に色をつけることができます。とくに、ステンレスなどの鉄類やチタンはカラフルな加工が可能です。

『Gweike G2 Fiber Laser Colorful Engraving on Stainless Steel.』GWEIKE CLOUDチャンネルより

 金属表面に色が現れる原理は、酸化膜によるものです。レーザーの出力を大きく、照射の移動速度を遅くすれば材料の表面の温度が高くなり、逆に出力を下げて動きを高速にすれば、材料の表面温度は低くなります。

 そうしたレーザーの加工特性を利用して、さまざまな色に加工することが可能です。

 ちなみに、高級腕時計には「青針」と呼ばれるブルーのステンレスが使われていることがあります。職人による手作業で、絶妙な温度で作られた酸化膜によるもの。「青焼き」された針は、メッキより錆びにくく耐久性に優れているといわれています。

レーザーによるサビ取り

 レーザーによる刻印は、金属の表面を削り取る作業です。その原理を利用して、金属のサビを取り除くことができます。

レーザーを使った錆び取り。1分弱で終了する

 これは見ていて、とても気持ちのいい作業です。しかし、一度にサビを落とせる面積がそれほど大きいわけではなく、そのためだけに機材を用意するのも手間でしょう。現実的にサビ取りにレーザーを使うかというと、凹凸が多いなど、複雑な形状の材料に限られるかもしれません。

 また、レーザーの特性上、金属の表面に目に見えないほどのわずかな細かい線が入りますので注意が必要です。

次の課題は空調設備の増設

 レーザー加工で注意すべきは、前回の記事「レーザー刻印機を使った「金属に刻印」にハマっています」でも触れましたが、目を守ること。他にも、加工中や加工後の金属の匂いも気になります。おそらく、酸化した金属の微粉末を微量に飛散しているのかもしれません。

 鉛や水銀などに比べ、鉄や真鍮(銅、亜鉛)に強い毒性はありませんが、今後は注意したいところです。

 そうしたことから、次は空調設備……とはいっても、エアブラシのスプレーブースのような、簡易的な屋外への排気を設置しようと考えています。

 DIYでは、加工する楽しみや出来上がりを眺める過程はもちろん、何かが完成したときの達成感も魅力です。

 また、安全性を向上させ、思いついたらすぐに作業できる研究室や秘密基地のような作業環境を整えるのも、また格別な楽しみでしょう。それらが、DIYの喜びだと思っています。

前田知洋(まえだ ともひろ)

前田知洋

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、チャールズ英国王もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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