キヤノンの超望遠レンズ「RF200-800mm F6.3-9 IS USM」で話題のJKドライバーJujuを撮った
ASCII.jp / 2024年3月30日 12時0分
◆流し撮りに向かない望遠レンズで あえて流し撮りに挑戦する
昨年末にキヤノンから発売されたレンズ「RF200-800mm F6.3-9 IS USM」。この超望遠ズームを、サーキット撮影でテストした。
このレンジのズームならスポーツ撮影のほかにも、野鳥や航空写真などにも向いているだろう。事実、このレンズに装備された手ぶれ補正は、三脚で使うことを前提に設計されている。そのため、流し撮りにはまったく向かない。
そんなキャラクターのレンズを、あえて流し撮りに使用したらどうなるのかレポートしていこう。
レンズの仕様だが、F値は200mm側で6.3、800mm側で9が開放値だ。長さは314.1mm(短くした状態)、重量は2050g、レンズ径は最大102.3mmだ。今回はキヤノンの「EOS R3」とのコンビで使用したが、手持ちでも十分に扱える重量と大きさだった。
◆被写体は今話題の日本人女性ドライバーJuju選手
今回の撮影テストは、3月10日に三重県の鈴鹿サーキットで行なわれた、スーパーフォーミュラの開幕戦。そこでデビューした女子高生(4月からは女子大生)ドライバー、Juju(野田樹潤)選手を被写体として選んだ。スーパーフォーミュラとは、国内最高峰のフォーミュラカーレースで、多くのF1ドライバーが巣立ったカテゴリー。Juju選手はスーパーフォーミュラの歴史の中で日本人初の女性ドライバーとして、今年から参戦することとなった最年少ドライバーだ。
Juju選手の紹介はここまでにして、肝心のレンズについてレポートしよう。まずは機動性についてだが、前述のとおり手持ちでも十分いける。記事の1枚目と2枚目のポートレイトは、手持ちで撮影している。もちろんIS(内蔵手ぶれ補正)はオフだ。
1枚目の撮影データは「234mm、F解放、1/400sec、ISO200」、2枚目は「200mm、F7.1、1/125sec、ISO200」だ。このデータを見てもわかるように、重量的に重くないので1/125でもブレることなく撮影できている。持ち運びも一脚につけてしまえば楽に持ち運びができる。山中を歩いて登るときにも、大きなアドバンテージとなるだろう。
◆逆光でも順光でもディテールの再現性が高い
写真3枚目と4枚目は順光とサイド光の写真だ。3枚目は太陽が高く、ほぼ正面から光が当たっている。いわゆるベタ光に近いのだが、ヘルメットの丸さや赤いペイントのディテールが表現されている。4枚目はサイド光なのだが、影の感じや潰れきっていないシャドウがきちんと表現されている。写真5枚目の逆光も含め、Lレンズではないのにここまで再現性が高いのは驚きだ。撮影データは3枚目が「742mm、F14、1/640sec、ISO400」、4枚目が「800mm、F13、1/800sec、ISO400」、5枚目は「707mm、F16、1/800sec、ISO2050」だ。
写真6枚目は、EXTENDER RF1.4x(焦点距離を1.4倍に伸ばせるもの)を装着して撮影した写真だ。1.4xを装着することで、実質1200mmでの撮影になる。この撮影環境で、ディテールがこれほど表現されているのは驚愕に値する。しかもF値は解放だ。EXTENDERをつけてなおこの表現ができるなら、観客席からの撮影には大きな武器となるだろう。6枚目の撮影データは「1200mm、f13、1/800sec、ISO500」。
◆ISOを上げて撮影しても肌の濃淡がしっかり出ている
写真7枚目はISOを6400まで上げて撮影した写真だ。ISOを上げて撮影すると、ヘルメットの中の肌感がベタっとしてくるもの。ところがこのレンズは、顔の微妙な凹凸やまつ毛まではっきりと映し出している。陽の当たらない撮影状況で、微妙な肌の濃淡をしっかりと表現しているのは基本性能の高さの証明でもある。この表現力も、Lレンズに引けを取らない性能と言えるだろう。7枚目の撮影データは「672mm、F解放、1/250sec、ISO6400」。
◆一脚を装着すれば流し撮りでも文句なしの仕上がり
写真8枚目、9枚目は流し撮りをしたものだ。サーキットでの撮影は、基本一脚を使用して撮影する。この写真も一脚を使用しているのだが、カメラに装着した時のバランスが良いのか軽いのに安定している。これは200mmで撮った時も800mmで撮った時も感じたことだ。
レンズ経が細く軽いレンズは、バランスを取るのが難しいモデルもある。このレンズはその点も優れているため、ISをオフにしても歩留まりが良いと感じる。8枚目の撮影データは「208mm、F20、1/320sec、ISO400」、9枚目の撮影データは「600mm、F8、1/500sec、ISO320」。
最後にスタートを撮影した写真10枚目だが、多くのレーシングマシンが1フレームに入っているためデータ量が多くなる。そうなるとマシンのディテールなども損なわれやすいのだが、そこも心配ないようだ。ズームレンズだけに、ボケ味と言うのは単焦点の様にはいかないが、それを補ってもあまりある素晴らしいレンズと言えそうだ。10枚目の撮影データは「371mm、F11、1/800sec、ISO500」。
【まとめ】約32万円の価格だが、性能を考えれば妥当
今回テストした200mm-800mmの実力は、おわかりいただけたと思う。余談ではあるが、筆者もこのテストの直後に、レンズのオーダーを入れたほどだ。使い勝手の良さや解像力を含めたレンズの実力を鑑みれば、31万9000円は決して高くはないだろう。現在オーダーを入れても、手元に届くには時間がかかりそうだが、使うのが今から楽しみなレンズである。
■筆者紹介───折原弘之
1963年1月1日生まれ。埼玉県出身。東京写真学校入学後、オートバイ雑誌「プレイライダー」にアルバイトとして勤務。全日本モトクロス、ロードレースを中心に活動。1983年に「グランプリイラストレイテッド」誌にスタッフフォトグラファーとして参加。同誌の創設者である坪内氏に師事。89年に独立。フリーランスとして、MotoGP、F1GPを撮影。2012年より日本でレース撮影を開始する。
■写真集 3444 片山右京写真集 快速のクロニクル 7人のF1フォトグラファー
■写真展 The Eddge (F1、MotoGP写真展)Canonサロン Winter Heat (W杯スキー写真展)エスパスタグホイヤー Emotions(F1写真展)Canonサロン
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