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XPAN技術やWi-Fi 7、UWBなどをAIで統合した、クアルコムのFastConnect 7900

ASCII.jp / 2024年3月31日 9時0分

 米クアルコムは新世代の通信チップ「FastConnect 7900」をMWC Barcelona 2024において発表。さらに、ウェビナーで先週3月28日(米国時間)詳しく解説した。FastConnect 7900は、すでに200以上の製品に導入されている「FastConnect 7800」の後継だ。本連載でも触れてきたXPAN技術やWi-Fi 7、UWBなどを統合。さらにAIを活用して、それらを効率的に運用できる画期的なシステムだ。

FastConnect 7900

AIをチップに統合した世界初の製品

 クアルコムのMobile Connectivity部門担当副社長兼GMのJavier del Prado氏の解説の概略から説明する。

 まず、FastConnect 7900はWi-Fi性能を向上させるために、AIをチップに統合した世界初の製品であり、Wi-Fi、Bluetooth、UWBを統合した史上初の製品でもあるということだ。前モデルのFastConnect 7800では、Wi-FiとBluetoothを統合したが、それをさらに進めたことになる。

FastConnect 7900ではUWB、Wi-Fi、Bluetoothが統合され、AIで最適な接続方法を選べる。

 「競合他社が別々のチップによって実現することを我々は6nmプロセスの一つのチップで実現した点に意義があり、これは実装サイズと電力消費において有利となる」とJavier del Prado氏は語る。

AIがWi-Fiを効率化する。

 結果ユーザーが得られるメリットには大きく3つの柱がある。

1) AI-enhanced Wi-Fi 7(AI拡張されたWi-Fi 7) 2) Integrated Proximity capabilities(近接認識の統合) 3) Next generation multi-device experiences(新世代のマルチデバイス体験)

である。

FastConnect 7900の3つの柱

 順に解説していく。(1)については、現在我々はさまざまなシーンでWi-Fiを使用している。通話するにも写真を共有するにも、家でも会社でも空港でもだ。さまざまな場所や環境で使われることにはむずかしさがある。そして、従来のWi-Fiでは自分がどこで使われているかを聞きが知ることはない。ここでAIを活用すると、ユースケースに対して「動的な」最適化が可能となり、低遅延性や電力消費効率を向上できるという。結果、30%の電力消費低減が実現できるそうだ。また、これらをオンデバイスで実装すれば、セキュリティー向上にも役立てられる。

 さらに、FastConnect 7900はWi-Fiに加え、BluetoothやUWBでも同様の効果を適用できるそうだ。将来のデバイスに対して画期的な機能と言える。

 (2)の近接認識の統合については、最初にProximity awareness(近接認識)という概念を理解する必要がある。これはスマホを近づけて物を探すとか、車のドアにスマホを近づけるとロック解除するといった、物理的な近さ、対象との関連性を認識する技術だ。Wi-Fi、Bluetooth、UWBなどの規格は、どれも近接認識に使用できる。しかし、距離、正確性、電力消費などは一長一短があり、あらゆる場面で有利なものはない。FastConnect 7900は、これらを統合し、AIで最適化して使用する。

近接認識の例

 デモ動画では、PCを置いた仕事部屋にタブレットを持ったユーザーが現れる。入室しただけでスクリーンのロックが解除され、ノートPCと持っていたタブレットの画面が自動的につながる。タブレットを持って部屋を離れると、自動的にスクリーンロックがかかる。また、イヤホンをなくしたことに気づいたユーザーが、スマホを取り出し、枕の下にあるのを見つけるシーンなども描かれている。

 最後の新世代のマルチデバイス体験では、High Band Simultaneous(HBS)技術とQualcomm Expanded Personal Area network Technology(XPAN)技術の統合が解説された。高速かつ安定的にデータ接続できるHBS技術と柔軟なXPAN技術を組み合わせることでデバイス接続の可能性が広がるということだ。

 HBSとは、スマホにイヤホン、テレビ、プリンター、ネットワークハブなど、さまざまな機器がつながるシーンにおいて、2.4GHz、5GHz、6GHzの各周波数帯域で同時に、複数のチャンネルを設けられる技術だ。FastConnect 7800も実装していたが、FastConnect 7900では効率がさらに高いという。

従来のイヤホン接続

 FastConnect 7900ではXPAN技術を搭載することで、スマホとイヤホンの間を5GHz/6GHzの無線で接続できる。結果、高音質の再生を楽しめる。XPANを用いれば、スマホを机の上に置いたまま家や会社の中を歩き回っても、音が途切れることはない。さらにスマホを介さず、直接インターネットからストリーミング配信を楽しむこともできる。

XPANのメリット。ハイレゾロスレス伝送が可能となり、遠距離でも使用できるようになる。

 ちなみに、HBS技術は複数ワイヤレスデバイス間で5GHzと6GHzの帯域を同時に領域に同時に接続できる汎用技術。XPAN技術はイヤホンに特化し、Bluetooth接続で可能だった利用方法をWi-Fi接続とシームレスにつなぐ技術と言えるのではないだろうか。デモ動画では、スマホをテレビにつなぎ、イヤホンでBGMを聴きながらゲームをするシーン、スマホで音楽ストリーミングを楽しむシーンが映し出された。2.4GHz接続が5GHzや6GHzになることでより高音質で楽しめると解説されていた。

XPANにHBSを加えることで大容量データが流せるようになる。

 以上、FastConnect 7900は、AIをWi-Fiに適用した初めてのシステムであり、Wi-Fi・Bluetooth・UWBを統合したシステムでもある。また、近接認識による新しい用途が提案され、HBSとXPANによる次世代のマルチデバイス体験も楽しめるシステムということだ。

詳しい質問に説明者が感激する場面も

 Q&Aセッションでは、極めて技術に詳しい参加者が的確な質問をするので、Javier del Prador氏が答えに詰まりながらも感激する場面があった。いくつか抜粋してみよう。

イヤホンにWi-Fiを搭載したら電力消費が大きいのではないか? 長年開発してきた低電力W-Fi技術を使用して対応している

UWBでは別のアンテナが必要ではないか クアルコムの技術では現在、W-Fiと同じアンテナを使える

低電力Wi-Fiは将来的にBluetoothを置き換えるのか ハード(イヤホン)側には制約もあるし、すでにBluetoothの台数もとても多いため、完全になくなることはないだろう

 なかなか深い内容のウェビナーだったと思う。本連載では過去にWi-Fi 7やXPAN技術について書いてきたが、それが統合された製品がFastConnect 7900として形になることが分かった。

 端的にまとめるとW-Fi、Bluetooth、UWBを一個にするだけでもサイズや電力消費で有利だが、さらにそれらをAIで統合していいところ取りをするのがFastConnect 7900だ。HBS技術やXPAN技術によって、特に完全ワイヤレスイヤホンでは高音質かつ柔軟な楽しみ方ができるようになるだろう。FastConnect 7900が製品に組み込まれて登場することを楽しみにしたい。

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