「枕元に数ドル」は昔の話 チップもキャッシュレス時代です
ASCII.jp / 2024年4月24日 7時30分
日本ではあまり慣習がないため、海外旅行中に戸惑ってしまうことのひとつに「チップ」問題があります。どういったシチュエーションで、いつ、いくらくらい払えばいいのか、イマイチ分かりにくいですよね。特にアメリカはチップ大国。なにかあればすぐに「チップを払わなければ……」と身構えてしまうことが多くなります。
旅人ライターの筆者や、アメリカ出張が多い同業諸氏の肌感覚ですが、最近はアメリカで「現金でチップを払う」というシーンが、減ってきているように感じます。
ホテルでの「ピローチップ」 アメリカでは結構廃れた文化に
たとえば、現金でチップを払うケースが多かった「ホテル」。ベルボーイに荷物を運んでもらったり、ルームサービスを運んでもらったときには、今でも1~5ドル渡すのが一般的ですが、格安旅行でモーテルなどの安宿に泊まる場合はベルボーイやポーターがほとんどいないため、支払うことがなくなりました。
またルームサービスも、室内の電話からつたない英語で頼むより、「UBER Eats」経由で注文し、ホテル前までドライバーに持って来てもらうほうが頼みやすいので、めったに使わなくなりました。UBER Eatsの支払いはアプリからできますし、チップもあわせて決済できるので、現金でチップを手渡す必要がないのです。
ホテルでのチップでいちばんポピュラーなのは、「枕銭(まくらせん)」や「ピローチップ」などとよばれる、ハウスキーパーへのチップ。枕元に数ドル置いて、室内清掃の際に持っていってもらうのですが、実はこの習慣はアメリカでも結構廃れているというか、大多数の人は払っていないようです。自分もその話を聞いてから、アメリカでは枕銭は置いていませんが、特にトラブルには遭遇していません。
タクシードライバーへの「チップ」は 端末から選択してまとめてカード決済
チップを支払うシチュエーションとしては、タクシーもよく言われますよね。ただこれも、最近は決済時に現金ではなくクレジットカードを使うケースが多く、決済端末でチップの金額を「%」で選べるようになっているので、15%〜20%で選べばオーケー。
さらに言うと、最近はタクシーは使わず、「UBER」や「Lift」といったライドシェアを使うことが増えました。先ほどのUBER Eatsと同じように、アプリでチップぶんまでを決済できますから、やはり現金は使いません。スーツケースなどの荷物をトランクへ出し入れしてくれるドライバーさんもいますが、基本的に現金でチップを手渡すことはしていません。
自分がアメリカ滞在中に現金でチップを渡すシチュエーションは、たとえばエンターテイメントショーを見ながらのディナーを楽しむ際、アテンドしてくれた案内係にステージが見やすい席にしてもらうためにチップを渡す、といったくらいですかね。それもめったにありませんが。
このように、現金でチップを手渡すケースは減ってきていますが、一方でキャッシュレスでの支払いでチップを要求されることが増えてきています。
(次ページ:飲食店での「チップ」は?)
飲食店での「チップ」も支払時に選択 こちらも合計金額をまとめてカード決済に
たとえば飲食店。これまでも店内に着座してサーブされる形式の一般的なレストランでは、会計に対して15%から20%のチップを支払っていました。クレジットカードでの支払い方法の典型的なパターンとしては、まずテーブルに届いた明細を確認した上でクレジットカードと一緒に渡します。すると、一度店側が会計をしてあらたにレシートが複数枚渡されます。
このうち1枚は「Customer Copy」と書いてあり、自分で持ち帰るためのレシート。もう一枚は「Marchant Copy」と書かれており、店用のコピーになっています。この店用のコピーに、チップの金額と合計金額を書き込むと、その金額でクレジットカード決済されるようになっています。
ちなみにレシートには、15%くらいから3パターンほどのチップの金額が記載されているので、その金額を目安に書き込めばオーケー。ただし最近では、ハンディタイプのクレジットカード決済端末を持って来て、その場で決済するといった場合も。その際にはタッチディスプレーが用意され、チップの%を選べるようになっているので、自身でタップして選ぶ方式になっています。
日本と同じように、レジカウンターで支払う場合もありますが、ここでも最近はタッチディスプレーの決済端末が利用されていることが多く、チップの%や、No Tipを選んで支払えるようになっています。
チップが必要なかったスーパーでも デフォルトで20%要求される場合がある
ただ、このタッチディスプレーの決済端末が結構厄介で、これまでチップを払う必要がなかった、テイクアウトのお店や普通のスーパーなどでも、標準でチップが15%や20%が選ばれた状態になっていたりします。これが、キャッシュレスでの支払いにチップを要求されることが増えてきている理由です。
もちろんチップを0%にするボタンもあります。テイクアウトの店で、店員さんがパパッと操作して0%にした状態にするケースも何度かあったので、0%でも問題はないようですが、店員さんの目の前で「No Tip」は心理的に押しにくいですよね……。
このあたりはアメリカでも「チップ疲れ(Tip fatigue)」として報道(該当記事)されていますので、今後変わっていくかもしれません。
というわけでチップ大国のアメリカでは、最近は現金でチップを渡すケースが減ってはいるものの、キャッシュレスではチップを要求されるケースが増えてきているといった感じです。
(次ページ:ヨーロッパや東南アジアは?)
ヨーロッパや東南アジアの「チップ」は? タイは意外とチップ文化が広まっている
ちなみにそのほかの国では、アメリカほどチップを気にする必要はありません。ヨーロッパなどはホテルや飲食店の場合、サービス料として別途上乗せされていることが多いので、それがチップに充当します。明細を確認してもしサービス料がなかったり、大人数でテーブルアレンジなどをしてもらったりといったときに、別途現金で渡せばオーケーです。
東南アジアもそこまでチップ文化はなく、ゴルフのキャディーさんやマッサージなど対人でのサービスを受けたときに、正規料金とは別に、担当者へ渡すくらいです。ただしタイは意外とチップ文化が広まっていて、高級店などではチップを払ったほうが良いケースもあります。ですがこの場合でもサービス料が計上されていればチップの必要はないので、まずは明細をしっかりと確認しましょう。
以上がここ最近の海外でのチップ事情です。円安ということもあり、不要なチップなら極力払わず節約したいところですが、特別対応や十分なサービスを受けた対価として快くチップを渡せば、相手も禁止されていない限り気持ちよく受け取ってくれます。
日本には馴染みのない習慣なので、煩わしさも感じますが、「郷に入り手は郷に従え」ということわざもあるとおり、極力現地の習慣に合わせてスマートに旅をしたいですね!
この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)
世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。
- 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン)
- 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン)
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