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「いい音で聴ける」カセットテーププレーヤーFIIO「CP13」実機レビュー

ASCII.jp / 2024年5月10日 19時0分

FIIOのポータブルカセットプレーヤー「CP13」をレポートします

 今回は中国のFIIO Electronics(フィーオ)が発売した、レトロでスタイリッシュなデザインのポータブルカセットプレーヤー「CP13」の実機レポートをお届けします。

カセットテープをいい音で聴きたいファンのためのプレーヤー

 筆者は小学生だった1980年代後半ごろに、邦楽歌謡曲の魅力に取りつかれました。当時は自分用のCDプレーヤーを持っていなかったので、おこづかいを貯めて買う音楽作品はもっぱらカセットテープでした。

 現在も数は多くないものの、カセットテープで新しくリリースされている作品があるようです。レコードショップの棚を意識してみるとK-POPのアーティストが新作の限定版をカセットテープでも販売していたり、邦楽の復刻版にもカセットテープのタイトルが見つかります。筆者は去年アニメのサントラを買ったら、アルバムの中から1曲をピックアップして収録したカセットテープが特典として付いてきました。

 今もカセットテープを聴きたいという音楽ファンのために、ポケットサイズのポータブルプレーヤーから、ハンドル付きのラジカセタイプまでハード機器の側にも様々な商品が販売されています。

 FIIOのCP13は「音質」にこだわり抜いたポータブルカセットプレーヤーです。価格はオープンですが、実売価格は2万円前後。ポータブルカセットプレーヤーの中では少し高価ですが、FIIOブランドの商品を取り扱うエミライの担当者に聞いたところ「CP13は発売直後から飛ぶように売れている」そうです。

シンプルな使い心地を極めたCP13

 FIIOはCP13を商品化するために、今や稀少なカセットテープの再生メカニズムを製造するサプライヤーを探して、なおかつ音質を高めるためにメカニズムの要所をチューンナップしています。例えばテープの走行を安定させるための回転機構と、データを読み取る磁気ヘッドの部品を厳選しました。内部はバランス回路設計として、厳選したオペアンプICチップ「JRC5532」により増幅した歪みのないクリアな音声信号を、3.5ミリ端子に接続したヘッドホン/イヤホンに送り出します。

 CP13は有線接続専用のカセットプレーヤーです。Bluetooth機能は搭載していません。代わりにというわけではありませんが、約13時間の連続音楽再生が楽しめる充電式バッテリーを内蔵しています。筆者にとってポータブルカセットプレーヤーの電源は単3電池が当たり前だったので、本体に直接USB充電ができる使い勝手は新鮮でした。

CP13は3.5mmステレオミニ出力による有線リスニング専用のプレーヤーです。バッテリーは充電池。USB-Cケーブルでチャージする感覚が新鮮でした
本体のボタンで音楽を再生。独立した電源ボタンはなく、再生・停止ボタンが代わる役割を果たすシンプルな仕様
カセット再生の音質を決める大事なパーツのひとつである磁気ヘッドには、厚みを増したカバーを採用。繰り返しの再生による摩耗や外部からの干渉に対する耐性を高めて長寿命化を図っています

 ひとつ注意点として、CP13が再生できるメディアは最もスタンダードな「Type I=ノーマルポジション」のカセットテープのみになります。またテープの長さも60分以下のものが推奨されています。

 カセットテープの種類にはノーマルポジションのほか、ハイポジション/フェリクローム/メタルという大別すると4つのタイプがあります。市販されている録音済みカセットテープの商品は多くがノーマルポジションなので、おそらくはCP13で問題なく楽しめると思います。またFIIOはCP13で非対応のテープを再生しても本体やテープが破損することはないとしていますが、音声が正常に再生されない場合があることについても注意を喚起しています。

市販のカセットテープ。黄色い線を引いた箇所に「NORMAL POSITION TYPE I」の記載があります

 筆者の世代はラジオ放送を録音したり、友だちに借りた音源をいい音でダビングして聴くためにハイポジション以上の高価なテープを使ったことがある方も多くいると思います。録りためた昔のカセットテープをCP13で聴く前には、テープの種類を確認しましょう。

デ・ラ・ソウルが2023年にカセットテープ版を発売した「3 Feet High And Rising」を聴きました

圧巻の高音質、CP13を聴く

 筆者が愛用するシュアのイヤホン「AONIC 5」をCP13に接続して、デ・ラ・ソウルのアルバム「3 Feet High And Rising」から『The Magic Number』を聴きました。2023年に“カセット再発プロジェクト”で復刻された新品のカセットテープ版タイトルです。

 伸びやかなボーカル、ずしんと響く低音の迫力が伝わってきます。一般的にはデジタル音源に比べると、カセットテープの音源は解像感が粗い印象があると思いますが、CP13のサウンドはその先入観を覆すほどに雑味がなくきめ細やかです。音楽の輪郭が太くシャープに描かれます。音場も広く、立体的に描かれる空間の中に高音域の余韻がふわっと満ちるようなリスニング感が味わえます。

 デ・ラ・ソウルの同じ楽曲はApple Musicなどの音楽配信サービスでも聴けます。iPhone 15 ProとAirPods Proを組み合わせれば、空間オーディオにダイナミックヘッドトラッキングをプラスした最先端のポータブルリスニング環境でも楽しめるので、それぞれを比較しながら聴いてみると色々な発見があると思います。筆者はCP13で聴くカセットサウンドの温かみに生演奏のリアリティを感じました。

注目のポータブルカセットプレーヤーと聴き比べる

 筆者が昨年に衝動買いをした東芝エルイートレーディングのポータブルカセットプレーヤー「AX-W10C」と、CP13を聴き比べてみました。CP13の高い解像感と音色の艶やかさはまさしく別格でした。これから本格的にカセットテープによる音楽再生を試してみたいと考えている方は、少し奮発してCP13を選ぶべきです。

 一方、AX-W10CにはBluetooth再生やバーチャルサラウンドの機能があります。カセットテープの音源をワイヤレススピーカーで再生したり、Bluetooth対応機器の豊富な選択肢が活用できる魅力が本機にはあります。スウェーデンに誕生したMONDO BY DEFUNCのワイヤレスヘッドホン「MONDO Freestyle」のような、スタイリッシュなワイヤレスオーディオとのコーディネートも楽しめます。

東芝エルイートレーディングのポータブルカセットプレーヤー「AX-W10C」と、MONDO BY DEFUNCのワイヤレスヘッドホン「MONDO Freestyle」

 好きなアーティストがカセットテープで制作した音源を勢いで購入したものの、再生できるプレーヤーがなくて困っていたという方に今回のレポートが参考になれば幸いです。

   

筆者紹介――山本 敦  オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

 

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