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一般人の放射線治療の知識は不十分も、メリットの理解は進む 乳がん患者、放射線治療の正しい知識は不十分ではあるが、生活の質は高く満足度も高い

@Press / 2021年8月31日 15時15分

図1
公益社団法人 日本放射線腫瘍学会事務局(JASTRO)は、日本人のがんに関する知識や放射線治療に関するイメージの変化を明らかにすることを目的に、健康成人を対象とした調査を昨年に引き続き実施しました。調査の背景には、がんの3大治療の一つとされる放射線治療の施行件数が他の治療法より少なく、諸外国と比較しても大きな隔たりを認める日本の現状があります。そこで人々のがん治療に関する知識量や情報量、治療に関するイメージを明らかにするために本調査を実施しました。
また、同時期に乳がん患者に対しては、これまで患者目線に立った治療の印象や放射線治療の認知度などについての報告が少なく、国内の実状を明らかにするために調査を行いました。


<調査結果の主なポイント>
【健康成人調査】
◆放射線治療に関する正しい知識がまだまだ不十分であることが明らかに。
◆がんの3大治療のイメージ、放射線治療はわずかだが全体的に良い方へ推移。
◆中でも『治療後も生活の質が保たれる』が昨年と比較して10.1ポイント上昇。
◆「治療期間が短い」や「治療と就労の両立が可能」も5ポイント以上アップ。

【乳がん患者調査】
◆乳房温存手術後に本来必要な放射線治療を受けていない人が1割超。
◆放射線治療で「髪が抜ける」「入院が必要」など誤ったイメージを持つ人が多い。
◆放射線治療を実際に受けると、治療前に思っていたより楽だったと感じる人が4割超。
◆手術・化学療法に比べて、放射線治療は勤務状況に変更をきたしにくい。


〔調査概要〕
■調査方法 :インターネット調査
■調査実施期間 :2021年5月10日(月)~5月11日(火)
■調査実施委託先:株式会社マクロミルケアネット
■監修 :東京大学医学部附属病院放射線科
中川恵一、扇田真美、南谷優成、向井智哉

〔健康成人調査 対象〕
■調査対象 :がんと診断されたことがない20歳以上80歳未満の日本人男女
■解析サンプル数:3,090(男性1,570、女性1,520)

〔健康成人調査 回答者属性〕
男性20代 :249名 8.1%
男性30代 :312名 10.1%
男性40代 :316名 10.2%
男性50代 :349名 11.3%
男性60代以上:344名 11.1%
計 1,570名

女性20代 :290名 9.4%
女性30代 :300名 9.7%
女性40代 :296名 9.6%
女性50代 :321名 10.4%
女性60代以上:313名 10.1%
計 1,520名

〔乳がん患者調査 対象〕
■調査対象 :乳がん患者
※初発の乳がん診断後1年以上5年未満の女性患者
■解析サンプル数:309名

〔乳がん患者調査 概要〕
■回答者属性
女性20代 :1名 0.3%
女性30代 :13名 4.2%
女性40代 :105名 34.0%
女性50代 :120名 38.8%
女性60代以上:70名 22.7%

■乳がんステージ
0期 :6名 14.9%
1期 :122名 39.5%
2期 :90名 29.1%
3期 :31名 10.0%
4期 :9名 2.9%
正確なステージ不明:11名 3.6%


【健康成人調査】
■健康成人調査:がんの放射線治療、正しく認識されていない現状明らかに
問いの文章内容が「正しい」、「誤り」か「わからない」のいずれかで回答。3,090人の参加者の中から、「全てわからない」と回答した284人を抜いた2,806人の正答率は図1の通りです(正答率が高い順)。今回の調査から、放射線治療ががん治療に使われているという事実はおおよそ理解されていますが、その詳細に関しては知らない人が大半であるという実情が明らかになりました。放射線治療はテクノロジーの進歩とも結びついており、治療技術の進歩も目覚ましいものがあります。また、治療費も手術・化学療法と比べて安い場合が多く、通院で治療ができるため、仕事や生活との両立も可能です。しかし、欧米と比べると、まだまだ放射線治療が行われる割合は少ないのが現実です。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_1.jpg
図1

■健康成人調査:がんの3大治療のイメージ
がん治療のイメージに関して昨年と同じ設問で回答してもらい、その結果を比較しました(2020年調査条件「がんと診断されたことがない20歳以上70歳未満」サンプル数3,094)。以下の結果は2020年調査に合わせ、2021年は20歳以上70歳未満のデータ2,885人を対象としています。
双方を比較したところほとんど変化が見られない手術や薬物療法に比べ、放射線治療ではわずかながらもそのイメージに有意な向上(p値

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_2.jpg
図2

年代別に放射線治療のイメージの変化をみると、図3のように20代から60代まですべての年代で肯定的に受け止めています。中でも50代(p値

画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_3.jpg
図3

詳細なイメージの変化をみると、「とてもそう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人の割合が、『治療後も生活の質が保たれる』が34.3%から44.4%と10.1ポイントも上昇しました。『他の治療法と比べて治療期間が短い』が19.1%から26.0%とこちらも6.9ポイント上昇しています。また『治療と就労の両立が可能』は33.8%から39.3%に5.5ポイント上昇しました。
一方で、「イメージがつかなくて怖い」と回答した割合が今年は「とてもそう思う」「どちらかといえばそう思う」を合わせて54.7%で、昨年の51.5%から3.2ポイント上昇する結果となりました。
また、放射線治療の正しい知識の設問と合わせて比べると、放射線治療に関する正しい知識を持っている人ほど、放射線治療に対して全般的に肯定的な意見を持っており、『完治率が高い』『昔と比べて治療技術が進歩している』など個々の項目に対してもより肯定的であることが明らかになりました(図4-1、図4-2)。

画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_4.jpg
図4-1、図4-2

【乳がん患者調査】
■乳房温存手術患者の13.6%が放射線治療を受けていなかった
乳がん初回治療において、乳がん患者309人のうち乳房温存手術を実施した人は49.8%(154人)、全切除術を実施した人は46.3%(143人)でした。乳房温存手術後には原則的に放射線治療を追加することが必要ですが、乳房温存手術を受けた患者154人のうち、放射線治療を受けていない人の割合は13.6%でした*(図5)。

画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_5.jpg
図5

■乳房温存手術後に放射線治療が必要であることを知った時期「診断から手術までの間」が最多
乳房温存手術後は標準治療として放射線治療が必要であることを知った時期は、「乳がん診断から手術までの間に知った」が72.1%と最多で、「乳がんになる前から知っていた」は11.7%に留まりました。また、「乳がん手術後に知った」が9.7%いたほか、「今まで知らなかった」は6.5%いました(図6)。

画像6: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_6.jpg
図6

■乳房温存手術後に放射線治療が必要であることの情報源、乳腺外科医からが80.3%と最多
乳房温存手術後に放射線治療が必要であることを知っていた人を対象にどのように情報を得たのか訊いたところ、一番多かったのが「乳腺外科医から聞いた」80.3%で、次いで「テレビ・インターネット・本・新聞などの医療機関以外の情報」22.9%、「放射線治療医から聞いた」は9.2%でした。広報活動などを通じて、患者の放射線治療のリテラシー向上を図る必要があると思われます(図7)。

画像7: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_7.jpg
図7

■放射線治療前後の印象の変化、治療後に「大変」と感じた割合は22.7ポイント減少
乳がん治療を受ける前のそれぞれの治療に対する印象と、実際に治療を受けた後の印象について尋ねたところ、放射線治療では治療前に「とても大変」「どちらかと言えば大変」を合わせた割合が83.4%でしたが、治療後では60.7%と22.7ポイントも減少。治療前のイメージと違い大変ではないが7.4%から23.9%と16.5ポイント増えました。他の治療法と比較しても治療後に大変だったという人の割合は放射線治療が一番少ないことが明らかになりました(図8)。

画像8: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_8.jpg
図8

■放射線治療で「髪が抜ける」「入院が必要」など誤ったイメージを持つ人が多い
治療前の放射線治療のイメージについて聞いたところ、「髪が抜ける」13.3%、「入院が必要」8.7%など誤ったイメージを持っている割合が多いことが分かりました(図9)。

画像9: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_9.jpg
図9

■放射線治療を実際に受けると、治療前に思っていたより楽だったと感じる人が4割超
治療後の印象において「手術、放射線医療、抗がん剤・分子標的薬」いずれの治療法も実施した回答者に絞ってみたところ、「治療前に思っていたより楽だった」と回答した割合は放射線治療が41.4%と他の治療法よりも高い結果が出ました(図10)。

画像10: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_10.jpg
図10

■標準的な放射線治療の治療回数を約7割が許容できると回答
乳がんの術後の放射線治療の標準的治療回数は15-30回ですが、放射線治療を受けた回答者に許容実施回数について尋ねたところ、一番多かったのが「25-29回」で30.1%、次いで「10-14回」19.6%、「30回以上」17.2%の割合の順となり、7割以上の人が標準的な治療回数は許容できると考えていることが分かりました(図11)。

画像11: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_11.jpg
図11

■放射線治療は満足度の割合が高いことが明らかに
「手術、放射線治療、抗がん剤・分子標的薬」いずれの治療法も実施した人では「放射線治療」の満足度が85.7%と他の治療法よりも高い結果となりました(図12)。

画像12: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_12.jpg
図12

■手術・化学療法に比べて、放射線治療は勤務状況に変更をきたしにくい
診断時に働いていたかどうか尋ねたところ、全体の62.5%が働いていたと回答。そのうち、65.8%が勤務状況の変化があったことが分かりました。具体的には「休職した」が28.0%で最多、次いで「退職した」20.2%、「時短勤務した」15.0%の順となりました(図13)。

画像13: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_13.jpg
図13

勤務状況の変更理由となった治療法を見ると手術が54.1%と最も多く、次いで抗がん剤・分子標的薬22.6%で、放射線治療は16.5%と3大治療法の中では最も少ないことが分かりました。これにより、放射線治療は仕事に影響を及ぼしにくいことが明らかになりました。

■個人年収の変化、30.6%が減収と回答
治療前と治療後の個人年収の変化について尋ねたところ、最も多かったのは「変わらない(50万円未満の増加または減少)」で67.9%でしたが、30.6%が50万円以上の減収になったことが明らかになりました(図14)。

画像14: https://www.atpress.ne.jp/releases/273169/LL_img_273169_14.jpg
図14

〈放射線治療を受けて治療前後で異なっていた点の患者の声(抜粋)〉
・治療前はメディアからのイメージが先入観として不安が大きかったが、関係者にカミングアウトしたり、医療者や体験者の話が大きく参考になり、思っていたより負担が少なかった。メディアの情報も基準となっていて、負担が少ない分自信につながった。(東京都 53歳 会社員)

・放射線治療自体は想像していたよりも楽だったが、毎日通院しなければならないのが大変でした。(神奈川県 53歳 専業主婦)

・放射線治療に毎日通うので体力的に大変だったが、短時間で終わるので最後まで通うことができた、治療前はすごく嫌だと思っていた。(東京都 44歳 専業主婦)

〈放射線治療に対する意見や要望(抜粋)〉
・しょうがないことですが、男性が対応してくれていたこと。やはり女性のほうが嬉しいです。(群馬県 48歳 パート・アルバイト)

・体中に放射線を当てるための線を描かれるのが嫌だった。(京都府 47歳 専業主婦)

・放射線治療は特に苦痛だと思わなかったが、毎日通うのが面倒であった。コロナ禍だったので、治療が中断するのではないかと不安だった。(兵庫県 50歳 自営業)

・私は職場の理解を得られたので問題なく行えましたが、毎日通院するのは仕事をしていると辛いと思いました。ですが、診察と違って予約時間通りに行われるので、スケジュール調整はしやすいと感じます。(兵庫県 48歳 パート・アルバイト)

・放射線治療は大変でしたが、女性スタッフの方がとても親切で、痛々しい胸のケアを親身になって治療法を教えてくれたのが嬉しかったです。(兵庫県 43歳 会社員)

・できれば女性技師の方にやってもらいたい。(千葉県 46歳 会社員)

・この治療でがんが死滅するのなら、絶対にやるべき。(広島県 51歳 専業主婦)

〈今回のアンケート調査結果から〉
■東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授
中川恵一

放射線治療は、臓器の形態や機能を温存できることが最大の特徴です。
また、体への負担も少ないため、通院が原則です。費用も99%近くのケースで健康保険が利きますから、高額な自己負担は不要です。手術と放射線治療が同等の治療効果を示すがんは少なくありませんが、日本では欧米ほど行われていません。アメリカでは新規のがん患者の約半数が放射線治療を受けていますが、日本ではその半分程度と考えられています。公益社団法人 日本放射線腫瘍学会では、昨年度に引き続き一般人を対象に、がん治療に関する知識や放射線治療に関するイメージについてアンケート調査を実施しました。
その結果、まだまだ、誤解が多いことが分かりましたが、全体的なイメージとしては、前年よりも肯定的となり、特に、50代、60代では、有意なイメージの改善が見られました。放射線治療の個別のイメージについては、『治療後も生活の質が保たれる』が34.3%から44.4%と10.1ポイントも上昇しました。『他の治療法と比べて治療期間が短い』も6.9ポイント、『治療と就労の両立が可能』も、5.5ポイント上昇していました。
一方で、「イメージがつかなくて怖い」と回答した割合が今年は54.7%で、昨年より3.2ポイント増える結果となり、放射線治療の普及に向けたさらなる啓発活動の必要性も明らかになりました。

■東京大学医学部附属病院 放射線科助教 放射線治療専門医
扇田真美

乳がんは日本人女性で最も多いがんで、放射線治療を受ける患者さんの大きな割合を占めます。乳房温存手術後は原則として放射線治療を行うことが標準治療なのですが、そのことを事前に知らない方が多いことが今回の調査で明らかになりました。放射線治療が必要なことを知ったきっかけは乳腺外科医からという回答が多く、一般の方への周知や放射線治療医の関与が低いことが分かりました。
アメリカでは放射線治療を行うかどうかに関わらず、乳がんの治療前に放射線治療医からも話を聞くそうです。日本では放射線治療医の人数も少なく同様の体制をすぐに整えるのは難しいかもしれません。しかしながら今回の調査の結果、放射線治療について誤ったイメージをもっていたり、実際に治療を受けてみると思ったよりも楽だったと感じる方が多いことから、もっと放射線治療について皆様に知ってもらうよう我々放射線治療医は努めていかなくていけないと感じました。乳がんは他のがんと比べて就労・子育て世代が多く、治療と仕事や家事育児の両立が問題となることもあります。就労状況の変化以外にも治療のために様々な影響がでていることと思います。患者さんの状況に応じた治療ができるよう努めていきます。
今回の調査結果が多くの方々に放射線治療について興味をもっていただくきっかけとなることを願います。


詳細はこちら
プレスリリース提供元:@Press

【関連画像】

図2 図3 図4-1、図4-2

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