議論ははじまったばかり!近ごろウワサの「走行税」について、バイクユーザーが知っておきたいこと
バイクのニュース / 2023年7月14日 9時10分
近年話題となることの多い「走行距離課税(走行税)」は、いわゆるガソリン税の減収を補うものとして、2022年10月に開催された政府の税制調査会の議題に上りました。ただ、現時点ではバイクはもちろん、クルマへの導入も不透明な状態のようです。
■まだまだ議論ははじまったばかり!正確かつ冷静な議論を!
2022年10月に開催された政府の税制調査会では、「走行距離課税(走行税)」についての議論がなされました。
2022年10月に開催された政府の税制調査会の議題に「走行距離課税(走行税)」が上がった
その名のとおり、走行距離に応じて税金が課されるという性格を持つ走行税ですが、いくつかのメディアがセンセーショナルに報じたこともあり、多くのユーザーが批判的な見解を示しました。ただ、あくまで議題に上っただけにすぎず、2023年6月現在、具体的な税額や導入時期について決定した事実はありません。
走行税の導入が議題となった背景にあるのは、いわゆるガソリン税の税収減です。揮発油税や地方揮発油税などからなるガソリン税による税収は、クルマやバイクの燃費性能の向上と反比例するように減少していきます。
また、近年増加傾向にある電気自動車(EV)はガソリンを一切使用しないことから、EVの普及が進めば進むほど、ガソリン税による税収はさらに減少していくことが予想されています。
走行税の導入が議題となった背景にあるのは、EV車の普及によるガソリン税の税収減
2023年度予算において、ガソリン税(揮発油税)は1兆9990億円もの税収が見込まれています。これは69兆4400億円が見込まれている全税収のおよそ3%に相当するものであり、減収による財政への影響は決して少なくありません。
また、地方揮発油税は国税ではあるものの、実際にはその全額が地方公共団体へと譲与されるものであり、譲与額は国道や県道、市町村道の距離や面積に応じて決定されるため、道路が多い地域ほど税収減の影響を受けることになります。
一方、たとえガソリンを一切使用しないEVであっても、道路を利用することには変わりありません。ガソリン車がほとんどすべてを占めていたなかでは、ガソリンの使用量と道路の使用量は正比例の関係にあったと言えますが、EVの時代が到来するとその関係は崩れ去ります。
その点、走行税が導入されれば、実際に道路を使用した量によって課税されることになるため、その点で言えば公平な税体系と言えます。
カーシェアリングなどが普及すると、「購入」や「所有」に関する税収が減少することが予想される
走行税は、近年注目されつつある「シェアリング・エコノミー」とも相性が良いとされています。現在の自動車・バイク関連税は、「購入」「所有」「利用」という3段階にわけて課税されるものとなっていますが、カーシェアリングなどが普及すると、「購入」や「所有」に関する税収が減少することが予想されます。
一方、「利用」に対して課税される走行税では、シェアリング・エコノミーが浸透した場合でも一定の税収を確保できることになります。
とはいえ、走行税には課題も少なくありません。
トラックやバス、タクシーなどは、走行税が導入されると膨大な税額が課されてしまうことになる
たとえば、トラックやバス、タクシーなどは国民の生活を支える重要な存在ですが、走行距離の多さで言えば一般ユーザーの比ではないため、走行税が導入されると膨大な税額が課されてしまうことになります。
また、そもそも走行距離をどのように測定し、車両ごとにことなる税額をどのように納めるのかなどの運用面での課題もあります。
現状では、こうした課題に対する具体的な解決策まで議論されているわけではありません。そのため、現時点では、走行税はあくまで将来のアイデアのひとつにすぎないというのが実際のところのようです。
※ ※ ※
バイクの税体系は基本的にクルマに関する税金に準拠しています。クルマのほうが保有台数や市場規模が圧倒的に大きいことから、まずクルマの税金について議論がなされ、そしてバイクへと波及していくというのがこれまでの大きな流れでした。
走行税に関しても、クルマへの導入と同じタイミングでバイクへも導入される可能性が高いと思われます。ただ、ここまで述べたように、現在は走行税に対する議論がはじまった段階であり、バイクに対してはもちろん、クルマに対しても具体的なことは一切決定していません。
電動化が進み始めた二輪車
誰しも、新たな税金が増えることはうれしいものではありません。しかし、ほとんどのユーザーが、かつてに比べてガソリン税を納める額が減っているのも事実です。
そのようななかでは、時代に即した税体系の構築に向けた冷静な議論が必要なのは言うまでもありません。走行税についても、センセーショナルな報道に踊らされるのではなく、あくまで議論のたたき台としてすべてのユーザーが正しく理解を進めることが求められています。
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