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暴力団が闇バイト強盗に「当家は断固たる処置を取ります」と宣戦布告した“納得の理由”「一昔前は半グレでも今よりずっと…」

文春オンライン / 2025年1月11日 7時0分

暴力団が闇バイト強盗に「当家は断固たる処置を取ります」と宣戦布告した“納得の理由”「一昔前は半グレでも今よりずっと…」

写真はイメージ ©AFLO

 昨年8月以降、首都圏を中心に発生した“闇バイト強盗事件”によって国民の体感治安は極度に悪化した。

 一時期は鎮静化したように見えたが、年が押し迫った12月22日にも千葉県内で2件の強盗事件が発生し、年が明けた1月1日にも愛知県春日井市で2人組による強盗、2日には茨城県鉾田市で4人組による強盗未遂事件が相次いで起きている。めでたい正月に、闇バイトに襲われてはたまらない。

“トクリュウ”と呼ばれる「匿名・流動型犯罪グループ」の「闇バイト強盗」に神経をとがらせているのは一般市民だけではなく、なんとヤクザも一緒だという。

「ヤクザになって上下関係でピリピリするよりも、楽にカネを得ようと…」

 東京に活動拠点を置く指定暴力団幹部は、「なり手不足」の暴力団社会の近況についてこう打ち明ける。

「かつて不良の若者たちは、ヤクザに憧れて組織に入門するのがお定まりのルートだった。しかし最近は入門せずに半グレのような組織に入ってオレオレ詐欺をするやつが増え、さらに今はSNSで闇バイトを募って強盗を企むようになったのだろう」

“不良の若者”たちがヤクザではなく半グレや闇バイトのような形を選ぶのには、ヤクザ業界特有の事情があるという。

「最近の若者は暴力団に入りたがらない。入門した若い衆には、『部屋住み』という修行が待っている。親分の自宅兼事務所に住み込んで、掃除や洗濯、料理、親分が外出するときは運転手兼ボディーガードもするという身辺の世話役だ。そういうヤクザの社会特有のしきたりや厳しい上下関係が、若者から敬遠されている。一般社会と同じで我々の社会も少子高齢化で、なり手不足状態が続いている」

 当のヤクザたちも、厳しい慣習が若者から避けられていることはよくわかっている。

「ヤクザになって上下関係でピリピリするよりも、気の合う仲間たちと一緒にいた方が楽しいに決まっている。10代後半の不良仲間の延長だ。そのまま年を重ねて20代、30代の半グレのような連中が闇バイトで一般の若者たちを募集して、楽にカネを得ようとしているのだろう。かといって、若者を集めるためにヤクザ側が伝統や慣習を変えることはない」

 さらに暴力団社会特有の“ある習慣”も、若者に敬遠される理由になっていると話す。

「ヤクザになって不祥事を起こすと、自分の手の指を切断して親分に差し出す、いわゆる『指詰め』がある。自分も若いころに指を詰めた。大した不始末ではなかったがけじめをつける必要があったし、当時は指を詰めた方がヤクザとして一人前という意識もあった。詰めた直後に医者に縫合してもらったが、麻酔が切れたら激痛だった。ただ、それでようやくヤクザになれた気がしたのも確かだ。しかし今の半グレの連中からすると、失敗して指を詰めるなど考えられないことなのだろう」

 現在は暴力団対策法で指詰めが禁じられているため、近年はこうした習慣は行われていないとされている。それでも一部では依然として“無理強い”に近い形で指を詰めるヤクザが存在し、暴対法に基づいて中止命令が出されたり、悪質な場合には強要容疑で組織の責任者が逮捕されるケースもある。

暴力団が「闇バイト」の“取り締まり”を宣言する異常事態も

「闇バイト」に若者が流れていると推測され、“人材獲得”に窮している暴力団だが、地域によっては、暴力団が直に闇バイト強盗を抑えようと動きはじめたところもある。

 昨年11月、関東の暴力団関係者や警察当局の捜査幹部の間で「告知」と題された次のような内容の書面の画像がSNSで共有されていた。

「告知 昨今 闇バイト、オレオレ詐欺 強盗等 多発しておりますが それらの者、組織、団体には碑文谷一家の縄張りに於いて当家は断固たる処置を取ります(品川区 大田区 世田谷区一部 目黒区一部) 安心した地域づくりを心掛けております 十一代目碑文谷一家」

 碑文谷一家とは指定暴力団稲川会の有力傘下組織で、上記のように東京の南西部に活動拠点を構えている。暴力団社会では、関東だけでなく全国に老舗組織として名が知られている組織だ。

 ヤクザが「安心した地域づくり」とは皮肉だが、このような告知をメッセージとして発信したのには理由がある。同じく東京圏で活動する指定暴力団の幹部は、「自分たちはこのような強盗事件に関わっていないとのメッセージだろう」と話す。

「一昔前は半グレでも今よりずっと律儀だった」

「ヤクザの世界では強盗や窃盗、詐欺などに手を染めることは恥と考えられてきた。それが反社会的勢力としての排除が強まり、食えなくなった者がオレオレ詐欺に手を出すようになった。しかし近年は詐欺の実行犯が逮捕されるだけでなく、組織のトップが“使用者責任”を問われ、裁判所から数千万円の賠償金支払い命令が出るようになったことで、どこの組織も『詐欺はやるな』と言っている。親分にダメと言われたことをやる奴はいないから、今オレオレ詐欺をやっている人間はヤクザではない。闇バイトもそうだ」

 この幹部によると、かつてはヤクザに加入していなくても、組織の縄張りの近くで活動する半グレの若者や組織のことはおおよそ把握していたという。しかし、現在は闇バイト強盗の首謀者の情報は全く入ってこない。

「一昔前は半グレでも今よりずっと律儀だった。地元の半グレから面会の申し出があり、『仕事を始めたいので出資してほしい』というからカネを出してやったことがある。縄張り内でオレオレ詐欺のアジトでも借りる資金だったんだろうが、『何に使うんだ』と聞いてしまうと、後でその連中が警察に摘発された時に、芋づる式に自分も共犯になってしまう可能性がある。だから何も聞かずにカネを渡したんだ。その後は定期的に(上納金として)カネを持ってきて、ある程度は半グレの連中の動きも把握できていた。それが最近は一向に分からなくなった」

 SNS空間の安全地帯で若者たちを操って闇バイトを企むトクリュウの本丸の特定に警察は苦戦しているが、闇社会の住人である暴力団にとってもその動向をつかむことは簡単ではないようだ。

(尾島 正洋)

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