「見えない女性たちを可視化したかった」『バティモン5』ラジ・リ監督が明かす
cinemacafe.net / 2024年5月6日 16時0分
パリ郊外に存在する、再開発を目前に控えた移民居住棟エリア=通称「バティモン5」を舞台に、行政と住人たちがある事件をきっかけに衝突する『バティモン5 望まれざるもの』。
この度、前作『レ・ミゼラブル』でその名を世界に轟かせたフランスの新進気鋭監督ラジ・リが、「<見えない女性たち>を可視化したかった」と想いを明かすインタビューがシネマカフェに到着した。
ラジ・リ監督自身が生まれ育った、パリの犯罪多発地区モンフェルメイユ。彼が実際に見聞きしてきた出来事を基に生まれたのが、第92回アカデミー賞にもノミネートされ、世界に衝撃を与えた『レ・ミゼラブル』だが、新作『バティモン5 望まれざるもの』も「実体験が出発点」と明かす。
その例として、バティモン5エリアに住む団地の住民たちが行政から突然理不尽な退去を迫られるシーンを挙げる。「劇中、住民に起きたことを、私や家族も経験してきました。私の両親はこの物語の人々と同じように高金利でマンションを購入しましたが、20年かけて支払い終えた矢先に『建物が劣化しすぎている』と言われて家を追い出されてしまったのです」という。
「都市再生計画によって同じような目に遭った人は私の周囲にも大勢いますし、似たような出来事はモンフェルメイユのみならず、他の都市や国々でも起こっています。残念なことに、ジェントリフィケーション(都市再開発)は東京を含む世界中の大都市すべてに関係する、普遍的な問題なのだと思います」と案じる。
また、前作では実在の街モンフェルメイユが物語の主軸となったが、今作では架空の街<モンヴィリエ>が舞台に。その理由についても「架空の街を舞台にしたのは、作品に普遍性をもたらし、誰しもが共感できるようにするため」と言う。「今回は、群像劇を選択したのも同じ理由ですね。市長から活動家、その友人、副市長と(様々な立場で)それぞれの足跡を辿り、重層的に物語を探求していきました」と語る。
怒りに満ちた「バティモン5」の住民たちを先導する女性アビーを演じるフランスの新進俳優アンタ・ディアウにも「ぜひ注目して欲しい」とアピールする監督。アビーはもともと住民のために区役所で働く、ごくありふれたスタッフだったが、あまりの政府の横暴と理不尽さに怒り、声を上げることを選ぶ。アンタはその心情の変化と溢れる気迫を演じ切った。
郊外出身の新人俳優を起用「新たな才能に光を当てたい」
「アンタ・ディアウとは、私が共同脚本・製作に加わったキム・シャピロン監督作『Le Jeune Imam』(23年/日本未公開)で出会いました」と監督。
「私はベテラン俳優と新人俳優、その両者と仕事をすることを好みます。それは演技経験を積んでいない人の発するリアリティや自然な振る舞いが、私の作品に符号するためです。また私と同じく郊外出身の新人俳優をメインキャストに据えることで、新たな才能に光を当てたいという思いがあります」とコメント、「フランス映画界というのは閉鎖的な世界でもあるので、それを変えていくためにも、埋もれている才能を積極的に見つけ、育てていきたいと考えています」と打ち明ける。
実際、本作にはアビーをはじめ力強く、積極的に主張する女性たちが多く登場する。その意図について「バティモン5のような地区に暮らす女性は、劇中で描かれているのと同じくらいに力強く、熱心に政治活動や市民運動に参加している人々が大勢います。本作はそんな女性たちへオマージュを捧げたいと考えていました」と監督。
「残念ながら そういった女性たちが声を上げようとしても、第三者が勝手に主張を代弁したりして、彼女たちに直接主張をさせない傾向にあります。だから 私は彼女たちに敬意を表すると共に、彼女たちが本当に存在し、社会にとって重要な役割を担っているということを、映画を通じて可視化したかったのです」とその想いを明かしている。
移民たちの居住団地群の一画=バティモン5の一掃を目論む「行政」とそれに反発する「住人」による、“排除” vs “怒り”の衝突。本作では、恐れと不満の積み重ねが徐々に両者間の溝を深くし、憎しみのボルテージが加速していく様が息もつかせぬ緊迫感で描かれる。コミュニティ内にある「権力」「革新」「暴力」の3つの視点を交錯させることで炙り出されるバンリュー地区の実態、ひいてはパリの実態は見逃せない。
『バティモン5 望まれざるもの』は5月24日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
息もつかせぬ衝撃とカオス! ラジ・リ監督作「バティモン5」冒頭&キャラクター紹介特別映像
映画.com / 2024年5月18日 10時0分
-
「マイスモールランド」川和田恵真監督、移民問題を描いた「バティモン5」に込められたメッセージを語る
映画.com / 2024年5月16日 21時30分
-
“団地と移民“テーマの「少年・イン・ザ・フッド」SITEによる、「バティモン5」応援イラスト披露 「レ・ミゼラブル」再上映も決定
映画.com / 2024年5月10日 17時0分
-
花の都パリが抱え続ける社会問題を描く俊英ラジ・リ監督 新作「バティモン5」は、マクロン大統領への「痛烈なアンサー」
映画.com / 2024年5月3日 15時0分
-
フランスの新進気鋭監督ラジ・リ最新作『バティモン5 望まれざる者』公開記念!『レ・ミゼラブル(2019)』『インスペクション ここで生きる』など社会派ドラマ映画全5作品を特集放送!
PR TIMES / 2024年4月22日 18時15分
ランキング
-
1旧態依然とした日本映画界に風穴を 日本発の映画製作ファンドがカンヌで会見【第77回カンヌ国際映画祭】
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年5月18日 22時47分
-
2このページは削除されました。
スポニチアネックス / 2024年5月18日 21時40分
-
3『ダイヤのA actII』アニメ続編制作決定 お祝いイラスト公開
ORICON NEWS / 2024年5月18日 21時0分
-
4「あれから30年」鈴木保奈美、『東京ラブストーリー』共演女優と3ショット 「すごいメンバー」と感激の声
クランクイン! / 2024年5月18日 17時30分
-
5吉川愛、愛犬との「キス」ショットにファンもん絶!「破壊的に可愛いです」「なんて愛おしいんだ」
スポーツ報知 / 2024年5月19日 7時24分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください