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『オッペンハイマー』は本当に広島・長崎を描かなかったのか…原田眞人監督&森達也監督が激論

シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年4月6日 18時10分

 第96回アカデミー賞で作品賞を含む最多7部門に輝いたクリストファー・ノーラン監督最新作『オッペンハイマー』の公開記念トークイベントが6日、丸ノ内ピカデリーで行われ、映画監督の原田眞人と森達也が出席。本作で賛否を呼んでいる、“広島・長崎の惨状を直接描かなかったこと”について語り合った。この日は、フリーアナウンサーの武田真一がMCを務めた。

 ピュリツァー賞を受賞したカイ・バード、マーティン・J・シャーウィンによる伝記を基に、“原爆の父”と呼ばれたアメリカの物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの栄光と没落を描く本作。日本では3月29日より全国343館403スクリーンで初日を迎え、初週3日間で観客動員数23万1,015人、興行収入3億7,927万620円を記録。IMAX版は、ノーラン監督作品史上最高の数字となった。

 ノーラン監督渾身(こんしん)の作品を鑑賞した両監督は、ともに「すばらしかった」と称賛。映画史において『市民ケーン』から『アラビアのロレンス』『レッズ』『ラストエンペラー』『アビエイター』などに連なる1本と指摘する原田監督が「これらの映画は全部、歴史上に名を残した人物の栄光と挫折を描いて、一大スペクタクルにした映画ですが、本作はその最高峰の1本だなと、興奮しながら作品を観ていました」と語り、「『市民ケーン』には“ローズバッド”というキーワードが出てきて。その意味は最後に明かされるわけですが、この『オッペンハイマー』でもキーになる言葉があって、それが最後に出てくる。そこまで完璧に描いたことに胸を打たれました」と舌を巻く。

 一方の森監督も「広島や長崎が描かれていないと言われてきたわけですが、映画を観て、しっかりと描いていると思いましたよ。間接話法と直接話法というものがあるわけで、直接的に描けばいいというものではない。その意味で、僕はものすごい反戦映画であり、反核映画だと思いました。おそらくノーラン監督には、それほど強烈なイデオロギーはないと思うんですが、オッペンハイマーを描くことで必然的にそういう映画になってしまった。だからそういう意味で、今の世界にとって大事な映画になったと思います」と持論を展開する。

 さらに「テレビは足し算なんです。情報だけでなく、テロップ、効果音をつけたり、タレントの顔をくりぬいて出したり、足し算をしないと不安でしょうがない。だけど映画は、料金を払っているからこっちのもの。過剰に説明する必要がない。だから間接話法でいいんです。その方が絶対に届きます。そういう意味でもノーランは、オッペンハイマーの苦悩、広島長崎の惨状、被爆国のつらさを間接話法で描いた。これはテレビでは描けないですね」と指摘した。

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