菅田将暉の何が凄いのか?黒沢清監督が驚いた二つのシーン
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年10月5日 12時15分
日本映画界の第一線を走り続け、近年も『銀河鉄道の父』『君たちはどう生きるか』(声の出演)、『ミステリと言う勿れ』(いずれも2023)など映画出演が相次ぐ菅田将暉。ミュージシャンとしても活動し、多忙を極める彼が出演オファーを即決したというのが黒沢清監督と初タッグを組んだサスペンス・スリラー『Cloud クラウド』(公開中)だ。菅田が本作で演じたのは、転売屋として「真面目にコツコツと悪事を働く」青年。撮影中、菅田の演技に「なんでそんなにうまいのか」とたびたび唸ったという黒沢監督が、菅田の演技の魅力を語った。
本作は、町工場に勤める傍ら、ハンドルネーム「ラーテル」として転売業で稼いでいた吉井良介(菅田)が集団ヒステリーに巻き込まれていくストーリー。黒沢監督が菅田と初めて顔を合わせたのは、2013年の第66回ロカルノ国際映画祭でのこと。菅田は主演映画『共喰い』(2013)で同映画祭に参加しており、黒沢監督は同作の監督を務めた青山真治から菅田を紹介されたという。黒沢監督は、その時の印象をこう振り返る。
「記憶は鮮明に残っているのですが、失礼ながらその時はまだ青山の『共喰い』も観ていませんでしたし、菅田さんのことを存じ上げなかったんです。ロカルノに行った時にたまたま菅田さんがいて“初めまして”と。 その後彼がこんなに人気者になるとは思っていなくて、“普通の若者”だなという感じで、どちらかというと引っ込み思案な印象でした。映画祭とか海外に慣れていらっしゃらないのか、あまり楽しそうには見えませんでした。それで、今回仕事で菅田さんにお会いして、その時の話をしたら“めっちゃ楽しかったです”と(笑)。ですから、完全に僕の誤解でした(笑)」
当時はまだ菅田と仕事をすることを想像していなかったが、菅田が「自身の転機となった作品」と公言もしている『共喰い』を観て、途端に見方が変わったとも。
「後に『共喰い』を観て“なるほどな”と。大人しそうな青年がこんな風になるんだと驚きました。『共喰い』で演じた役柄からして、イケメン、いい人とはかけ離れた、土着的でかなり屈折した若者ですよね。ですから、最初から菅田さんに対してはいわゆるイケメン俳優とは少し違うイメージからスタートしました。その後、みるみるうちに人気者になっていって……。俳優ってみるみる成長するんだなと」
初タッグとなった『Cloud クラウド』では、菅田から役柄をつかむための参考資料を求められ、アラン・ドロン主演の『太陽がいっぱい』(1960年・ルネ・クレマン監督)のタイトルを伝えたという黒沢監督。アラン・ドロンが演じた主人公の「真面目にコツコツと悪事を働いていく」人物像を伝えるのが目的だったが、とりたてて黒沢監督が意図を説明することはなく、菅田の解釈に委ねたという。
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