菅田将暉の何が凄いのか?黒沢清監督が驚いた二つのシーン
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年10月5日 12時15分
「菅田さんが“役の参考になるような映画があったら観たい”とおっしゃったのでこの映画を観てもらって、菅田さんと1時間ぐらいディスカッションの場を設けたんですけど、そのほとんどが“『太陽がいっぱい』って面白いですね”“面白いでしょ?”“アラン・ドロン、なんであんなにかっこいいんですかね”といった他愛もない話しかしていません(笑)。菅田さんはアラン・ドロンを観て、おそらくほぼ直感的に吉井のキャラクターはこういうことなのかなとつかまれたんだと思います」
ところで、撮影中に何度も「なんでそんなにうまいんですか」と聞いてしまうほど菅田の演技に魅了されたという黒沢監督だが、菅田の何がすごいのか?
「例えば、“いいよ”の一言で、主人公のイエスともノーともつかない曖昧さみたいなものを的確に表現してくれるところ。持って生まれたものもあるんでしょうけど、“いいよ”って言いながら、半分は“弱ったな”と思っている。そんな、どっちつかずの“いいよ”です。ただ漠然と曖昧にやると、なんとも意味不明になってしまうんですけど、菅田さんが演じると“この人どっちつかずなんだな、半分は嫌なんだな”という心情が確実に伝わってくる。“ちゃんと”曖昧さを表現しているっていうところが驚異的です。普通、俳優ってわかりやすく喜怒哀楽、感情を伝えることを訓練しますけど、はっきりしない感情って相当な技術がないと表現できないもので。それをあの若さでちゃんとつかんでいらっしゃって、びっくりしました」
黒沢監督が特に目を奪われたのが、冒頭のシーン。吉井が安く買いたたいた大量の医療機器をネットで転売し、その売れ行きを見守るというシチュエーションだ。
「吉井が大量に買い占めた医療機器が完売するのをじっと見ている。素晴らしいと思いましたね。全部売れたわけですから“やった!”とあからさまに喜ぶ芝居もできなくはないんです。でも吉井は喜びつつも半分は“この先は大丈夫なんだろうか”という不安がある。とりあえず売れた、目の前の目標は達したけど、この先どうしようっていう微妙な心境みたいなものが手に取るように伝わってくるというか。普通の人ってまさにこんな感じだと思うんです。すごくいいことがあっても、手放しで喜べない微妙なニュアンスを全て含んだ菅田さんのあの表情は見事だなと思いました」
ちなみに、菅田はシネマトゥデイのインタビューで「これまでに経験したことがない」演出として同シーンを挙げていたが、黒沢監督が菅田に伝えたのは「PCから3メートルぐらい離れてほしい」という指示だったという。
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