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「阿修羅のごとく」昭和のドラマが今も人気の理由 勝又&滝子カップル、なぜ支持される?

シネマトゥデイ 映画情報 / 2025年1月21日 6時2分

 では、勝又と彼以外の男性キャラとの決定的な違いは何か。それは勝又以外の男たちが、四姉妹の父親・恒太郎を含め、全員、パートナーの女性を裏切っているということだ。恒太郎には小学生の息子がいるシングルマザー・友子(戸田菜穂)という7年越しの愛人がいる。貞治は料亭を切り盛りする妻・豊子(夏川結衣)の目を盗みながら、綱子と密会を続け、修羅場になると逃げ腰だ。鷹男には秘書の赤木(瀧内公美)との不倫疑惑がある。陣内は同棲時代、咲子がバイトでいない間にアパートに女を連れ込んで、その浮気がバレてしまう。

 食卓シーンを通して、親子やきょうだいの絆を描くのと同じくらいの比重で、日常生活のさまざまなシーンや会話を通して“性”を描くのが向田作品の特徴だ。少々多すぎるようにも感じる浮気や不倫のエピソードは、向田が“家族”の最小単位であり、親子やきょうだいと違って血のつながらない“夫婦”を描く上で切り離せない要素だった。とりわけ「阿修羅のごとく」には性の気配が濃密に漂い、それは今回のドラマ化でも鮮明に表現されている。

今も変わらない男女の性愛における意識

 そんな本作において際立つのが、勝又が恒太郎に伝える「もしも結婚したら、あの人、大事にしますから。一生、浮気、しないすから」というシンプルなセリフのインパクト。そして、これと対照的なのが、浮気していた父・恒太郎を泣きながら責める巻子に対し、鷹男が「誰にも迷惑かけず、少しだけ人生のツヤを楽しむのが、そんなにいけないのか」と言うシーン。そこには夫の不倫に人知れず苦しむ女性への寄り添いは見られない。義父をかばいつつ、自分を含む世の男たちの不倫を正当化するセリフなのだが、現代でも彼の言葉に密かに同調する男性は案外多いような気がする。

 母親ふじと巻子の間で交わされる「女はね、言ったら、負け」というセリフ。当時理想とされた良妻賢母は、夫の浮気も見て見ぬふりをし、口に出さないのが鉄則だった。本作は、つらい状況の中でもたくましく生きる女性の強かさ、怖さを描いた作品ではあるが、そうした女性の態度が、男性を甘やかせ、つけ上がらせてきたともいえる。女性も男性も、どちらか一方が我慢しなければならない関係では幸せにはなれない。

 オリジナルドラマの放送から6年後、1985年(昭和60年)に男女雇用機会均等法が成立されて以来、社会的、経済的な男女差は少しずつ埋まり、女性のマインドは劇的に変化した。にもかかわらず、本作の女性たちが抱えるヒリヒリした痛みは、“ノスタルジックな昔話”ではすまされない切実さをもって、観る者の胸に鋭く突き刺さる。

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