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「仕事が続かない欠陥人間」 雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第17回

ココロニプロロ / 2015年2月6日 14時45分

もうひとつ気になるのは、ぽくさんの価値観が二元論のように、きっぱり分かれているように見えるところです。「仕事ができない=欠陥人間」「やりたい仕事=充実した仕事」のように、かなり単純化して考えておられるような気がしてならないのです。理想と現実をはっきり分け過ぎというのでしょうか。そんな感じがします。

理想を壊したくて言うのではありませんが、やりたい仕事の中にも苦悩はあります。人間関係で嫌なこともあります。楽しさややりがいしかない仕事なんてあり得ないし、尊敬できる人しかいない職場もあり得ないと思います。もちろん、楽しさが多い仕事を選んだほうがいいですし、苦痛が自分のキャパシティを超えて心身を蝕むようなら転職を考えたほうがいいでしょう。「どんな仕事にも苦労はある」という、ありきたりなことが言いたいわけではなくて、「やりがい」とか「やりたい仕事」とか、そういうものは、単独できれいな形で存在しているのではなく、さまざまな複雑なものの上に成り立っているのだということを、私は言いたいのです。

人は、気が重いことの中に面白さを見つけたり、幸せの絶頂の中にはかなさを見つけたりする生き物です。お葬式のあとに宴会をやったりします。そういう複雑さが、仕事にもあります。嫌なことの中に面白さがあったり、楽しさの中に苦さがあったりします。

ぽくさんは、仕事にいろんなものを求め過ぎているのではないでしょうか。自分のやりたい仕事に就くことが、アイデンティティの問題に強く深く関わっていて、だからこそ「周囲に受け入れてもらいたい」ということも含めてこんなに悩んでおられるのではないかと思うのです。

私は今でこそライターという、非常に不安定で、収入も多くない仕事をしていますが、ライターになろうと考えたのは25歳です。それまではなれると思っていませんでしたし、なりたいと考えたこともありませんでした。自分なんかが選択して良い職業だとは思ってなかったのです。でも「文章書いて生きていけたら、楽だなー」と思って、ずうずうしい気持ちでこの仕事を選びました。文章を書くのは、あまり苦にならなかったからです。本が出るまで十年ぐらいかかりましたから、そんなにすごく向いていたわけでもなかったんですけどね。

言うまでもありませんが、私の仕事は、アイデンティティと結びつきやすい仕事です。だからこそ、結びつけすぎると命を縮めます。命を削るようにして書く人の仕事にも価値がありますが、私はそういう能力は自分には欠如していると思いますので、アイデンティティと結びつく部分はあれど、どこかで「仕事があってもなくても、自分は自分」という気持ちを持たなくては、生きていけない気がしています。そもそも、世の中に必要な仕事ではないわけですしね。ライターというのは。

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