ダイハツ ムーヴキャンバス新旧比較
CORISM / 2023年2月10日 7時7分
両側スライドドアを持つハイト系新旧キャンバスを徹底比較評価!
ハイト系ワゴンに両側スライドドアを装備したモデルの売れ行きが好調だ。
2016年、初代ダイハツ ムーヴキャンバス(以下キャンバス)が登場して以降、ライバル不在でこのクラスではキャンバスの1人勝ち状態が続いていた。
しかし、2021年にスズキが満を持して、ムーヴキャンバスの直接的なライバル車としてワゴンRスマイルを投入。かなり攻めた価格ということもあり、販売は好調。
そして、ワゴンRに続き、2022年7月にキャンバスも初のフルモデルチェンジ。購入後、後悔しないために新型キャンバスの進化を新旧で徹底比較してみた。
ダイハツ ムーヴキャンバスの歴史
初代ムーヴキャンバス
2016年、初代ダイハツ ムーヴキャンバスがデビューした。この頃すでに、スーパーハイト系であるタントやN-BOXなどが高い人気を誇っていた。これは、高い全高による広大な室内と、両側スライドドアの使い勝手が理由だ。
当時スーパーハイト系に対し、ハイト系は手詰まり感があった。「ハイト系にもスライドドアを装備すれば、売れるのでは?」という声が強まっていたからだ。しかし、スズキはスライドドアを装備すれば価格が高くなり、ハイト系を好む顧客は買ってくれないと判断していたのだ。
そんな定説を覆すように登場したのが、ハイト系に両側スライドドアを装備したキャンバスだった。
ダイハツは、軽自動車ユーザーのニーズが多様化していることに注目していた。ライバルであるスズキは売れないとしていたモデルをあえて投入するという、ダイハツにとって攻めの戦略を取ったのだ。
キャンバスは、デビュー直後から大ヒットとはいかなかったものの、着実に販売台数を積み上げていった。主力だったムーヴより売れ、シリーズ全体でキャンバスの販売構成比は6~7割と言われている。その結果、キャンバスの販売台数はワゴンRシリーズ超えに大きく貢献した。
2代目ムーヴキャンパス
2022年7月、2代目キャンバスが登場した。外観デザインは、キープコンセプト。新旧の違いが、すぐには分からないくらいよく似ている。それほど、初代キャンバスのデザインが好評だったのだ。
そして、プラットフォーム(車台)などは刷新され、走行性能は大幅に向上した。
ターボ車を設定したことで、ライバルであるスズキ ワゴンRスマイルとの差別化を図っている。
コンセプト&エクステリアデザイン
新たなマーケットを創り出した画期的なモデル
初代ダイハツ ムーヴキャンバスは、ライフスタイルを楽しむ女性に寄り添う新感覚スタイルワゴンとして登場した。ターゲットを女性に限定し、可愛らしいデザインに両側スライドドアという実用性も加えた。
ハイト系に両側スライドドアを装備すると高価になり売れないというのが定説だったが、ダイハツは果敢にチャレンジした。結果ヒットモデルとなり、新たなカテゴリーの創出に繋がった。
外観は角を丸くしたボックス形状のボディに、大きく丸いヘッドライトが組み合わされた可愛らしいデザインだ。パステルカラーの2トーンボディを中心に、個性的かつ柔らかな雰囲気を演出している。女性を中心に高い支持を得た。
初代の可愛らしさを継承しながら、男性もターゲットに!
2代目キャンバスの外観デザインは、初代キャンバスとの違いが分からないくらいよく似ている。初代キャンバスのデザインは完成度が高く、現在でも古く見えないというのも利点だ。ブランドイメージを上手に引き継いでいる。
初代キャンバスのユーザーは、ほとんど女性だった。そんなこともあり、2代目キャンバスでは、男性ユーザー獲得にもチャレンジしている。従来のボディカラーであるパステルカラーの2トーンに加え、「セオリー」というシックで落ち着いたボディカラーのグレードが登場した。
安全装備&インテリア
予防安全装備はわずかに進化。インテリアは質感がさらに向上
初代キャンバスの予防安全装備は一定レベルにあった。予防安全装備パッケージ「スマートアシストⅢ」は全車標準装備されている。これには対車両と歩行者に対応する自動ブレーキなどが含まれている。
初代の惜しい点は、法規制前のモデルであることだ。サイドエアバッグが標準装備化されておらず、カーテンエアバッグは用意されていない。
2代目キャンバスは自動ブレーキがやや進化し、夜間の歩行者にも対応した。初代キャンバスには装備されていなかったサイト&カーテンエアバッグも全車標準装備となっている。しかし、日産デイズなどの用意されているSOSコールなどの安全装備は用意されていない。
後付けできる安全装備も用意された。
BSM(ブラインドスポットモニター)…後側方車両接近警報
急アクセル時加速抑制機能
購入後にも装備できる安全装備という点では、高く評価できる。しかし、もはやローテクかつローコスト技術でもある。ならば、標準装備化して欲しいところだ。
外観デザインは、初代と2代目で違いが分からないほどだ。しかしインテリアデザインは、まったく異なるデザインとなった。
初代キャンバスはセンターメーターで、全体的にややコッテリとしていた。しかし2代目キャンバスは通常のメーターになり、水平基調のデザインとなっている。
最近のトレンドであるノイズを抑えたシンプルな線と面で構成されており、落ち着いた雰囲気にまとめられている。
エアコンなどの使用頻度の高い操作系は、タッチ式ではなくダイヤル式だ。ボタンを見ずに操作することが可能なので、タッチ式より扱いやすく安全性も高い。
お勧めは初代? 2代目? 続きをcar-topicsで見る
走り、メカニズム
燃費は約10%向上したものの・・・ターボ車の走りは好印象
初代、2代目キャンバスの出力と燃費は以下の通りだ。(燃費はFF、WLTCモード)
出力 | 燃費 | |
---|---|---|
初代 | 52ps&60Nm | 20.6km/L |
2代目 | 52ps&60Nm | 22.9km/L |
2代目(ターボ) | 64ps&100Nm | 22.4km/L |
2代目キャンバスは、プラットフォーム(車台)の刷新などによって車重が約50kg軽量化された。エンジンはほぼキャリーオーバーだが、燃費は約10%向上した。
ライバル車であるスズキ ワゴンRスマイルの燃費は以下の通りだ。(FF、WLTCモード)
・マイルドハイブリッドシステム装着車…25.1km/L
・マイルドハイブリッドシステム非装着車…23.9km/L
2代目キャンバスは、初代キャンバスより燃費が向上したとはいえ、ワゴンRスマイルと比較すると、やや物足りない燃費値といえる。
走行性能面では、少しだけキビキビと走るようになった。2代目キャンバスは初代より約50kg軽量化された影響だ。とはいえ車重が880kgもあるので、勾配のキツい登り坂や高速道路では非力感がある。
こうしたパワー不足を払拭するために、2代目キャンバスではターボモデルが追加された。最大トルクは100Nmあるので、高速道路などでは余裕ある走りが可能だ。ターボ車はダイレクトなフィールとワイドな変速比幅をもつ最新のD-CVTと組み合わされた。ターボ車なら、ロングドライでも疲れにくい。
ハンドリングは初代、2代目キャンバス共にダル(スロー)だ。ステアリング操作してからクルマが曲がり出すまで時間がかかる。
キャンバスは女性ユーザーがほとんどなので、クルマが機敏に動くと不安に感じられるからという理由だ。だが、これから男性ユーザーを獲得したいのであれば、もう少しハンドリングに関しては煮詰める必要があるだろう。
乗り心地と静粛性に関しては、2代目キャンバスは初代とは比べ物にならないくらい進化した。基本骨格やサスペンションなどが刷新されたことで、乗り心地は軽自動車トップレベルだ。軽自動車は、大きな凹凸が苦手傾向にあるものの、2代目キャンバスは意外なほど強烈な突き上げ感をいなしてくれた。
静粛性では、初代キャンバスで感じたCVTのキーンという音が消えていた。走行中、不快に感じる音はほとんどなく、助手席との会話もはずむ。
ただ、やはりマイルドハイブリッド車と比べると、アイドリングストップからの再始動時に、キュルキュルブォーンというモーターの音とエンジン音、振動は完全に抑え込めていない。だが、初代キャンバスよりは快適性や静粛性が増している。
<レポート:大岡智彦>
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