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この春訪れたい、美食都市・ドバイ 地元食材を使いサステナブルを徹底する 絶品レストラン3選

CREA WEB / 2024年3月5日 7時0分

 世界屈指の大都市へと変貌と遂げたアラブ首長国連邦(以下、UAE)のドバイ。ドバイには「200Nations 1Country」という言葉があります。多様な人々が集まるからこそ、ドバイは世界の食が集まる“美食都市”。その最先端を行くレストランを紹介します。


石油の採れないドバイが美食都市になれた理由

 ドバイは石油が採れない。

 オイルマネーを背景に発展したと思われがちですが、ドバイは石油埋蔵量が少なく、質の良くない石油しか採油できなかった――という歴史があります。UAEは、その名の通り7つの首長国から構成される連邦国家。7つの首長国は、それぞれ独自の行政の下で政治や経済を動かします。そのため、石油が潤沢に眠っていたお隣のアブダビは、オイルマネーを手にすることができましたが、石油の採れないドバイは別の道を模索するほかありませんでした。

 ドバイは、エコノミックフリーゾーンを創設することに活路を見出した結果、名だたる企業が集まるようになり、高い競争力を誇る世界屈指の都市へと成長。結果、「200Nations 1Country」と呼ばれるほど、ヒトやモノが集まるようになりました。

 ドバイの金融街の中心にある、モダン・ヨーロピアン・レストラン「BOCA(ボカ)」は、「進化」という言葉がぴったりのレストラン。「BOCA」は、スペイン料理を基調としながら、地場の食材を使うことで“ドバイらしさ”と向き合っています。

「ドバイには、現代的な表現がなかった。少し遊び心があって、創造性を発揮できるレストランを作りたかった」(オーナーシェフOmar Shihabさん)。

「PURE HARVEST’S TOMATO AND STRAWBERRY GAZPACHO」で使用するイチゴとトマトは、地元UAE産のものを使用しています。国土の大半を砂漠が覆うUAEで、「どうして野菜や果物が収穫できるのか?」と思うかもしれませんが、組み上げた海水を真水に変える淡水化プラントが多数あり、その水を利用した水耕栽培が各地で行われているのです。単に美味しいだけではなく、「驚き」を与えてくれることも、現在進行形のドバイの食の面白さの一つです。


「PURE HARVEST’S TOMATO AND STRAWBERRY GAZPACHO」(70ディルハム)。クリスタルブレッドの上に飾られたヤギのチーズも自家製。

「SUPERFOODS & DESERT PLANTS 」(85ディルハム)。昔から、ドバイの人々は砂漠に自生する植物を収穫して、食べていたそう。

「SEARED CONFIT ARTICHOKES 」(105ディルハム)。ドバイ産のアンティチョークをコンフィに。ナスとたけのこの中間のような食感が美味しい。

スペイン・アンダルシア地方のデザート「トチーノ・デ・シエロ」(左)は、濃厚でクリーミー。「ココナッツ・アロス・コン・レチェ」(右)は、バスク・チーズケーキの周りに、バニラのショートブレッド、ラズベリーとホワイトチョコレートのガナッシュ、ピスタチオが添えられている。どちらも55ディルハム。

食材も環境もサステナブルに!

「BOCA」のオリジナリティは、料理だけではありません。

「廃棄物ゼロ、再生可能エネルギーのみで運営するなど、サステナビリティに配慮している点も私たちの強みです。たとえば、私たちは使用済み食用油をドバイの地元企業に送り、バイオディーゼルに変えてもらっています。そうすることで、二酸化炭素排出量の5%を削減することができます。また、「BOCA」は店内で利用するエネルギーを、すべて太陽光発電にシフトしているため、100%再生可能エネルギーで運営されています。私たちは、環境への影響を詳述した初の炭素排出のレポートも発表しています」(Omar さん)


ミニマルでシック、モダンな店内。エネルギーはすべて再生可能エネルギーでまかなわれている。

 ドバイの砂漠には、「ムハンマド・ビン・ラーシッド・マクトゥーム・ソーラーパーク」という巨大なソーラーパネル施設があります。街には送電網が張りめぐらされていて、1年分の消費電力を申請すると、その分をソーラーパークから供給されるシステムが構築されているのです。

「UAEの耕作可能な土地は、国土の5%ほどしかありません。その5%を少しでも増やすことが、私たちの小さな使命でもあります。「BOCA」は、生ゴミを含む廃棄物を大量に回収し、新しい表土を作るための堆肥にするUAEのスタートアップ企業と協力し、課題に取り組んでいる。また、店舗に廃棄物担当者という役職を設け、長期にわたって廃棄物のデータを記録しています」(Omarさん)

 フードロスに対しても貪欲です。料理に使用した柑橘類の皮をカクテルのベースに再利用する、パイナップルの皮からソーダを作る……ムダをムダだと切り捨てない姿勢が通底しています。「BOCA」は果敢に新しい取り組みに挑戦することで、2022年にはミシュランと双璧をなすレストランガイド「Gault&Millau」の「サステナブル・キッチン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、その翌年には、サステイナブルな活動において最先端のレストランのみが授与される「ミシュラン・グリーンスター」も獲得しました。

「ドバイには強力な循環型の経済があります。だからこそ、我々も直線的な消費から、より循環的な消費へとシフトする必要があるのです」(Omarさん)


「BOCA」オーナーのOmar Shihabさん。

BOCA

所在地 GATE VILLAGE 6, DIFC DUBAI INTERNATIONAL FINANCIAL CENTRE DUBAI, UNITED ARAB EMIRATES
https://boca.ae/

コミュニティをデザインするために地元食材を使用

 東京ドームおよそ24個分の大きさを誇る、世界最大級のショッピングモール「ドバイ・モール」の中には、イギリスの高級スーパー「Waitrose」があります。世界各国から集められたさまざまな食材の中に混ざって、UAE産の野菜や果物が並んでいる姿からは、この国の農業に対する本気度を垣間見えるはず。


「Waitrose」内の生鮮食品売り場に並ぶUAE産の野菜。

「私たちは、サステイナブルかつ季節性のある料理を重視しています。地場のものにこだわることは、生産者を含む地元のコミュニティをサポートする、そのデザインを描くことでもあるんです」

 そう話すのは、「Orfali Bros(オーファリ・ブロス)」のオーナーシェフ、Mohamad Orfaliさん。ミシュラン・ビブグルマンにも選ばれるなど、いまドバイでもっとも熱視線を送られるレストランの一つです。

 といっても、店内に気取った雰囲気や堅苦しさはありません。陽気でカジュアル。昼時になると、どこからともなく常連客が集まり、スタッフと笑い話が聞こえてきます。その光景は、「Orfali Bros」がコミュニティのハブになっていることを物語っています。


「Orfali Bros」内観。開放的でモダンでカジュアル。

「ここで提供するものは、私たちが旅から得たインスピレーションを織り交ぜた料理です。私たち自身が食べたい料理なんです(笑)。国境を越えるような想像性豊かなレストランを作りたかった」(Mohamadさん)


「shish barak a la gyoza」(75ディルハム)。

「『シシュ・バラク・ア・ラ・ギョーザ』は、ホットオイル、ガーリックヨーグルト、松の実、ミントを添えた和牛餃子です。私のフードスタイルは、アジア料理からもインスピレーションを受けています。しかし、私は自分たちの料理をフュージョンだとは思っていません。我々は常にフリービルドを好む。今あるものを維持しながら、新しい何かを生み出すことが好きなんだ」(Mohamadさん)


「eat H」(47ディルハム)。出てくる料理すべてが、見たことのないものばかり。

「burnt leeks & truffle」(95ディルハム)。焦がし玉ネギとトリュフをメインに添えたトルコ風ピザ「ピデ」。自家製のブラウンバター味噌を生地に塗り、焼き上げる。ヘーゼルナッツ、ストラッチャテッラ、仕上げに自家製トリュフオイルをたっぷりとかける。

 発酵緑茶にカラマンシーやタイムをブレンドした「エルダーフラワー・コンブチャ」、ウルシ科の低木で果実を乾燥させて細かく砕いた香辛料「スマック」を利用した「スマック・コンブチャ」、発酵白ブドウジュースに麹とフェンネルを加えた「焙煎大麦・コンブチャ」、食通をうならせるオリジナルのコンブチャがずらりと並びます。ドバイは「モクテルの宝庫」でもあるのです。

「200以上の国籍を持つ人々が暮らす国際都市ドバイでは、すべての人を満足させる食の個性が求められる。私たちの食の個性は、3人の兄弟、シェフ、家族、そしてチームから生まれています。地場の生産者はもちろん、チーズメーカー、パンメーカー、肉屋、手工芸品店……私たちの料理はそうしたチームがいるからこそ、皆を満足させられる。コミュニティ料理を作らなければいけないんだ」(Mohamadさん)


「Orfali Bros」のコンブチャレッドチェリー・コンブチャ、アプリコット・コンブチャなども揃う。アルコールの提供がないにもかかわらず、「The World’s 50 Best Restaurants」に選出されていることからも、料理の質の高さが分かるはず。

「200以上の国籍を持つ人々が暮らす国際都市ドバイでは、すべての人を満足させる食の個性が求められます」と語るオーナーシェフのMohamad Orfaliさん。ドバイ産の大葉を例に、地場の食材の魅力を伝える。

Orfali Bros

所在地 Dar Wasl Mall , Al Wasl Road, Jumeirah, Dubai
https://orfalibros.com/

輸入に頼らないレストラン作り

 ジャダフ・ウォーターフロントにほど近い、「ジャミール・アーツ・センター」にある「Teible(テーブル)」は、食材の90%近くをUAEから調達する、地産地消を掲げるレストランです。


「Teible」の店内は、自然環境の保全に役立つ素材を使っている。2023年に、ミュシュラン・グリーンスターとミシュラン・ビブグルマンを獲得した。

「現在、私たちが使用する果物と野菜の60%は、ドバイの隣、シャルジャ(首長国)のファームから供給されています。また、牛肉や子羊肉などの肉製品や、ハーブやキノコといった特定の食材も地元の農場から仕入れています」(オーナーのPeter Ahnさん)


「Prawns Al Ajillo」(130ディルハム)。これだけ立派な海老がアブダビで養殖されているとは。

「Stracciatella Salad」(88ディルハム)は、シャルジャ産ストラッチャテッラ、UAE熟成和牛ブレザオラ(塩漬け肉)、そして先祖伝来の種から育てたという意味を持つヘイルームトマトなどを使用したサラダ。

「Passionfruit and Tarragon Pavlova」(45ディルハム)。シャルジャ産ラブネー(クリーミーなヨーグルト)、スイスメレンゲ、シトラスタラゴンソルベ、塩麹オイルからなるデザート。デザートも自国産にこだわる。

「UAEで、大豆を見つけることはできませんでした。しかし、料理人とともに、パンの端切れを60℃で過熱し、60~75日間、高湿度の空間で発酵させて作った醤油の代替品、「パン醤油」を開発しました。ドバイには魅力的なお店が多いです。独創性のあるお店も増えてきました。その中で、「Teible」を選んでもらうためには、伝統的な料理でありながら創造性を発揮するものを提供しないといけません。ですが、単なるビジネス上の決断になってはいけない。地元の生産者を支援する重要性を忘れてはいけないんです」(Peter さん)

「特に、UAEは夏になると高温になるため、農産物の調達が難しくなります。夏のメニューは地元産の食材は全体の15%ほどになります。そのため、「Teible」では、シーズンごとに提供する料理が変わります。生産者と相談しながら、どういったメニューなら構成できるかを決めています」(Peter さん)

 そのため「Teible」では、食材を長持ちさせることができる発酵技術や乾燥技術にも注力しているといいます。季節が真夏と夏しかないと言われているドバイで、「Teible」は、一期一会の体験を提供するオンリーワンなレストランです。

Teible

所在地 Teible Restaurant, Jameel Arts Center, Ground Floor Jaddaf Waterfont, Dubai
https://www.teible.com/

ビジット・ドバイ内日本語情報ページ

https://www.visitdubai.com/ja

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• X(旧Twitter): @visitdubai_jp

取材・文・写真=我妻弘崇

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