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慶應医学部&作家の二刀流『八秒で跳べ』作者が柳田将洋に聞いたミスとメンタルコントロール

CREA WEB / 2024年4月5日 11時0分

 日本バレー界を代表主将としてけん引し、現在もプロ選手として高い実力と人気を兼ね備える柳田将洋選手。一方、中学3年生で新人賞を受賞し、現在は医学部に通いながら2冊目の『八秒で跳べ』を上梓した作家の坪田侑也さん。ふたりを繋ぐキーワードは「慶應」と「バレーボール」だ――。



柳田将洋選手(右)と坪田侑也さん

坪田 僕が『八秒で跳べ』という作品を書いた理由のひとつが、自分で慶應の中学時代から、大学生になった今でも、ずっと医学部体育会でバレーボールをやっていて、バレーにおけるメンタルはかなり重要で、そこが小説とも親和性が高いと考えたからなんです。

柳田 メンタルはすごく重要な部分だと僕も思います。

坪田 試合中はどんな風に、ご自身のメンタルのことを考えているんですか。


坪田侑也さん

柳田 うーん、表現するのは難しいですね。自分自身でコントロールできるかどうかの場合もあれば、隣の選手とうまく調和しつつ、チーム力を上げる瞬間もあります。自分自身の力で突破するのと、自分が引っ張って周りを引き上げなきゃいけないところでは、表現の仕方というか、アピールだったり、雰囲気の出し方だったり、ぜんぜん違ってくる。これを瞬時に判断して、適切な行動をとれるかは難しいけれど、チームのリーダーだったら、それが出来ないといけないとも思います。

 たとえば、僕はサーブが得意な方ですけど、やはり練習通りに打てるかどうか――まず、練習でしっかり打てる前提があって、試合のシチュエーションでも同じことができるかは、メンタルが大きく関わってきます。0点対0点でのサーブか、23点対24点で負けている時のサーブで、まったく同じ気持ちで打てるかと言われたら、それは違いますよね。でも、そういう場面でも同じように、再現性のあるプレーが出せる人は、やはりメンタルが強いと思うし、プロであればそこで必ず結果も出します。

坪田 僕が観戦した東京グレートベアーズ(GB)の試合では、柳田選手がいちばん最初にサーブを打っていたのですが、最初のサーブってどんな感覚ですか。

柳田 最初はもう何も考えず、1回しっかり、次ももう1回、っていう感じです。コントロールミスもあるので、そこは100%ではなく、80~90%くらいの感覚ですけど、そこにプレッシャーは、今はあまり感じません。

坪田 バレーの試合は、ひとつひとつのプレーはすごく激しいのに、それが途切れる瞬間が必ずあります。ラリーが切れて、次のラリーがはじまるまでには、どんなことを考えているんでしょう?

いつもより動いている選手はメンタルが強い

柳田 仮にひとつ前のラリーで失点したとしても、それ自体には、あまり固執しすぎないようにしています。それよりも、修正しなければいけない要素があった時は、なるべく早く修正しなければならないので、コミュニケーションをとったり、もちろん、自分を落ち着かせるためにセルフコントロールをしたり。その局面、局面でやることが変わります。

坪田 自分がミスをした時には、柳田選手はご自身を落ち着かせるタイプか、逆に鼓舞させるタイプか、どちらですか。


柳田将洋選手

柳田 落ち着かせる方だと思いますね。でも、僕も人間なので、何でもかんでも100%、メンタルコントロール完璧です、というわけではないと思っています。気持ち的に向かっている方向を、無理に引き戻そうとすると、そこにもエネルギーを使う感覚があるから、悔しいんだったら悔しがっていいし、何も思わないんだったら、そのまま次のプレーに集中します。

坪田 ミスをした時にはこういう風に考えるみたいな、ルーティーンがあるのかと、勝手に想像していました。

柳田 ミスの後はこうするというルーティーンを持っている人もいるし、僕みたいなタイプもいます。いろいろあると思いますけど、本当に能力も気持ちも高い選手は、練習で100だったサーブを、試合では110、120で打つことができる。あとは、自分たちが良くないシチュエーションでも、いつもより動いている選手はメンタルが強い。チームに徹していて、負けたくないというのは、やはり気持ちの強い選手ですよね。

坪田 東京GBに今シーズンから加入されて、僕も先日、試合を観に行きました。以前、何かのインタビューで、柳田選手が「東京GBはVリーグに新風を吹かせられるチーム」ということをお話しされているのを読みましたが、具体的にどういったところに特徴があるんでしょうか。

柳田 まずは東京に拠点があるというのが大きいですね。東京GBはプロチームとして2年目のシーズンで、そこを一緒にやってきたわけですけど、日本のど真ん中、一番人口が多いところに、クラブがあるのが重要だと思います。会場での演出、さまざまなエンターテインメントを、観客の皆さまにお見せしているという部分でも、リーグでナンバーワンだと自負しています。バレーの試合を観ていただくことはもちろん大事ですけど、バレー以外の部分を楽しんでもらうことは、バレー界のみならず、スポーツ界全体でも大切なことなので。

Vリーグは何が変わる?

坪田 アメリカのメジャーリーグでは、球場はボールパーク=遊びに行くところだと言いますけれど、そういった感覚ですよね。

柳田 男子バレーボールはやはり女性のファンが多く、それは非常にありがたいことで、もっともっと増やしていきたいという気持ちです。ただ男性やご家族連れ、小さな子供だったり、色んな世代の方、誰にでも、最終的にバレーボールが楽しいと思ってもらえるよう、とにかく入り口をいっぱい作ったほうがいいじゃないですか。

坪田 僕が観にいった時も、中学や高校のバレー部らしき人たちも、たくさん観に来ていたんですが、実際、僕が高校の時には、周囲にVリーグを観に行ったという人はあんまりいませんでした。入口は、確実に広がっているのを感じました。


トスを上げる坪田侑也さん

柳田 僕が子供の頃は、バレーの試合を観に行っても、演出も何もなしで、試合を観たらそのまま帰るような感じでした。勝利者インタビューのようなものもなくて――そういう活躍した選手の話を聞きたいし、試合の前後にも楽しみがあるからこそ、また会場に来たいと思ってもらえる。こういった試みをチームはシーズンを通してやってきたのですが、僕もすごく楽しかったです。

坪田 すごく印象的だったのが、キャプテンの古賀(太一郎)選手のインタビューで、会場に足を運んでくれたお客様への感謝の言葉でした。バレーボールを盛り上げようとする想いが伝わってきて、僕も胸が熱くなりました。

柳田 僕らはプロチームとしてやっていて、そういう意味では皆さんに支えられている。試合ができるのも自分たちの力だけではないということは、選手ひとりひとりに自覚があって、それを古賀さんが代表して言ってくれました。ホームでもアウェイでも、東京GBの選手、チームスタッフ、フロント、ファンの方々、どれひとつが欠けても結果は残せなかったと、選手みんなが思っています。

坪田 来季はVリーグが再編されると聞いています。いろんな制度が変わると思うんですけど、結局、何が変わるのか? ファンとしては非常に気になります。

柳田 たとえば外国人枠が1人増えたりとか、将来のプランニングが短期からさらに中期になったりしています。少しずつ企業チームからプロのクラブ――JリーグやBリーグが先にやっていること、スポーツビジネスを参考にしながら、バレーボールでしっかり利益を出すことで、Vリーグを大きくしていこうという話だと思います。

坪田 バレーボールファンとしては、外国の有名選手が日本へ来るとなると、純粋に楽しみです。

リーグのレベルは間違いなく上がる

柳田 リーグのレベルは間違いなく上がりますよ。世界的な選手が実際に来るはずですから、僕らは大変ですよ。もちろん追いつけ、追い越せで、目指すところを高めていきます。

坪田 絶対にどの選手にとっても、いい刺激になりますよね。バレーボールって、人間の身体能力の高さを観るだけでも、派手で分かりやすい凄さがある。どんどん盛り上がって、バレーを知らない人にもそれが広がったら、僕も嬉しいです。

柳田 今日はいろんな質問をしてもらいましたが、『八秒で跳べ』だったり、『ハイキュー!!』のように、バレーを題材にしたコンテンツを読む機会は、これまでなかなかなかった。自分のやっていることに、どんな形でも共感をしてくれる人が、どんどん増えてほしいという気持ちです。また試合も観に来てください。

坪田 はい、必ず行きます。ありがとうございました。

柳田将洋(やなぎだ・まさひろ)

1992年、東京生まれ。東洋高校2年時に主将として春高バレー優勝。慶應義塾大学在学時に全日本メンバーに登録。15年、サントリーサンバーズ入団、17年、プロ選手としてドイツ移籍。18年から20年まで男子日本代表主将を務める。23年、杭州アジア大会でもB代表主将として銅メダル、東京グレートベアーズに入団。

坪田侑也(つぼた・ゆうや)

2002年、東京生まれ。2018年、15歳の時に書いた『探偵はぼっちじゃない』で、第21回ボイルドエッグズ新人賞を当時史上最年少で受賞、翌年KADOKAWAより出版された。中学、高校時代はバレー部に所属。24年、高校のバレー部を舞台にした青春部活小説『八秒で跳べ』を上梓。現在、慶應義塾大学医学部生。

文=第二文芸編集部
写真=榎本麻美
ヘアメイク=k.e.y小池康友
協力=東京グレートベアーズ

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