「私は私らしく」前を向き続けるpecoが経験した初めての“自己嫌悪”
CREA WEB / 2024年4月24日 11時0分
初の著書『My Life』(祥伝社)を上梓したpecoさん。自身のファッションブランドのこと、これからのことも語ってもらった。
ryuchellは、まさにお父さんと真逆のタイプ
――初の著書『My Life』(祥伝社)では、偏愛する80〜90年代ファッションへの思いも綴られています。pecoさんは1995年生まれということですが、周りに同じ趣味の人はいたのでしょうか。
pecoさん(以降、peco) いなかったですね。人と「違う」ことが嬉しかったし、逆に、制服といった「同じ」スタイルを強制されることが苦痛でした。
校則の厳しい学校に通っていましたが、ブロンドヘアに染めて、それを隠すために黒髪のウィッグを被って登校していました。
――たとえば結婚式や子どもの入学式といった“お決まりのフォーマル”があるような場ではどんなスタイルで行きますか。
peco それはマタニティウェアでも同じ悩みを抱えて、本当に困りました。こだわりがなかったらどれだけ楽だろうと、この時ばかりは自分を恨みました(笑)。
結婚式も、ドレスコードがあれば、その範囲内で遊べるから楽しめるんですけど、何の指定もない式ほど逆にTPOの圧を強く感じるから、いつも悩みます。自分を出してもギリギリ許されるラインのドレスを必死に古着で探してますね。
――ファッションをはじめ、戸籍にとらわれない家族のかたちといったオリジナルな道を貫く一方、育ったお家は亭主関白なお父さんと専業主婦のお母さんという、「昭和な家庭」だったそうですね。
peco 昔、友だちの家に行った時、足の裏にゴミがついて驚いたことがありました。その時、チリ一つ落ちていないほど毎日お母さんが掃除をしてくれていたことに改めて気づきました。掃除が苦手な自分には到底できません。
お父さんは、あまり大きな声では言えないですけど、「お父さんみたいな人とは結婚したくない」と思ってて(笑)。厳しく躾をしてくれたことには感謝していますが、パートナーに選んだのは私をお姫様扱いしてくれるryuchellで、まさにお父さんと真逆のタイプでした(笑)。
“おバカキャラ”を演じなくてはいけないテレビの世界に違和感を感じていた
――三きょうだいの末っ子で、ほとんど怒られたことがないというエピソードにも驚きました。
peco 自分で言うのもなんですけど、立ち回りが上手かったんです。上の兄姉が怒られているのを見て育っていたので、自然と学習したんだと思います。怒られそうだなと思ったら、瞬時に笑いに変えてしまう(笑)。
怖いお父さんに媚を売るのも上手かったんですけど、よく覚えているのは5歳の時、全然行きたくもないのに、「水族館行きた〜い」とねだったこと。自分でせがんだくせに、「お父さんを喜ばせるために行ってやった」と思ってました(笑)。
――小さい時から自分を確立していたpecoさんだけに、“おバカキャラ”を演じなくてはいけないテレビの世界に違和感を感じていたことも、著書で明かされています。
peco 自分が思っていないことを言わなくちゃいけないのが嫌だったんです。街中では着られないようなド派手なファッションができるのは楽しかったですが、偽りの言葉を言わなくてはいけないのはしんどかったです。
――ryuchellさんから、「2人はセットだから一緒に頑張ってほしい」みたいに言われることはなかったですか。
peco 一度もなかったです。ryuchellとは、テレビの仕事に対してのやる気にものすごい差があったわけですけど、それを攻められるようなことはなくて。むしろ、「ぺこりんはいるだけで可愛いから何もしゃべんなくていいよ」といつも言ってくれていたし、そうやってryuchellが守ってくれたから楽しくやれたんだと思います。
最近、人生でほぼはじめて自己嫌悪に
――pecoさんは、テレビに出たい、有名になりたいみたいな“欲”はないですか。
peco ないんです。今、自分のブランドのお洋服を作ってるんですけど、たとえばその分野でいえば、売れるものを作りたいわけじゃなくて、ただ私がその洋服が欲しいという理由で作ってるんです。生意気かもしれないけど、「買って!」とも思わないというか。
前に洋服を作っていた時も、「売れたね」って言われるのが嫌だったんです。
――売上は評価にならない?
peco 「最初やし、売れたのは物珍しさからやろ」と思っていたし、その後で売上が下がったら、今度は残念に思われるじゃないですか。自分はたくさん売りたいとは思ってないのに、周りに期待されたりがっかりされても……って思っちゃうんです。
――前回も、期待をかけられるのが苦手、と話されていました。
peco そもそも、集団行動が苦手なんです。自分のミスで周りに影響が出ることが耐えられないし、自分も人のせいにしたくないというか。だから、会社員のような働き方とか、サッカーみたいな団体スポーツも私には絶対できないです。
甘ったれた生き方をしてきてバイトもしたことがないですが、自分の気質をわかっていたからこそ、そういう場に行かないように自然と行動していたのかもしれないです。
――そうすれば自己嫌悪に陥ることもなさそうです。
peco でも最近、人生でほぼはじめて自己嫌悪に陥ったことがあって。息子がインターナショナルスクールに通ってるんですけど、英語が喋れない自分が入っても迷惑をかけるだけと思って避けていたPTAに、間違いで入ってしまったんです。
ミーティングの間、なんでこんなに自分は英語ができないんだろうって、はじめて自分が嫌になりました。
――その後、どうされたんですか。
peco でも、30分くらい経った頃にムクムクといつもの自分が復活してきて、「てか、英語しゃべられへんって言ってんのに、なんでもうちょっとゆっくりしゃべってくれへんの」みたいな怒りに変わっていて、ミーティングが終わる頃には自己嫌悪もなくなってました(笑)。
手違いとはいえ、自分で決めて来た場所で自分が嫌になるという状況が耐え難かったので、もう経験したくないです。
――著書からも、21歳での結婚や子作りに関してなど、常に覚悟と責任感を持って物事を引き受けてきた自負を感じました。
peco ryuchellからカミングアウトを受けた時は本当に衝撃を受けましたし、何回も泣きました。でも、結婚を決めたのも私だし、ryuchellと子どもを持つことを決めたのも私。人の性という誰も動かすことのできないことだからこそ、「しゃあない、前向くしかない」という、それだけでしたね。
繰り返しになっちゃいますけど、期待されるのも過大評価されるのも苦手なので、私は私らしく、芯を持ってのんびりやっていきたいと思います。
文=小泉なつみ
写真=佐藤 亘
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