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北朝鮮が外国人観光客に二重価格設定も、国民は「意味ない」

デイリーNKジャパン / 2024年3月10日 8時43分

馬息嶺スキー場を視察する韓国政府の先発隊(朝鮮中央通信)

国土交通省の統計によると、昨年10月の訪日外国人観光客数は、コロナ前の2019年10月の100.8%となる251万6500人となり、コロナ明け後で初めてコロナ前を上回った。各地では、「オーバーツーリズム」と呼ばれる、受け入れ能力を超えた数の観光客が押し寄せる状況が起きている。

これを受けて、外国人観光客に限って宿泊料、入場料を高く設定する「二重価格制」の議論が高まっている。価格を高く設定することで外国人観光客数を抑制する、得られた収益を公共交通など地域のインフラに維持に使うなど、様々な理由が示されている。しかし具体的な議論よりも、外国人、特にアジアからの観光客をネガティブに捉えたゼノフォビア(外国人嫌悪)が垣間見える場合もある。

一方、旧共産圏諸国は、自国民と外国人の価格を設けていた。ニッセイ基礎研究所上海事務所の板橋正氏は、1996年12月の調査日報で、当時の二重価格の状況を伝えている。例えば、国内線航空運賃は、中国国民は3割引き、高級ホテルは半額での利用が可能だった。また、観光地の入場料には数倍から数十倍の価格差が設けられていた。

そこには「外国人は金持ち、だから少しくらいお金を多く支払っても大丈夫」という意識があるとしており、日本で議論されている二重価格制の導入に通じるものがある。

なお、報告書が出された翌年、中国は二重価格制を廃止している。これが非関税障壁のひとつと見なされ、世界貿易機関(WTO)加盟のネックになっていたからだ。ベトナムも同様の理由で、二重価格制を廃止した。

北朝鮮では、今でも外国人から料金を高く取り、自国民の利用料金は安く抑えている。しかしそれでも、同国の人々にとっては、手が出せないほど高いサービスが少なくない。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、2月16日の光明星節(故金正日総書記の生誕記念日)に三池淵(サムジヨン)スキー場がオープンした。また、これと前後して、毎年恒例の氷の彫刻祭典が開催された。

(参考記事:「将軍様の生誕イベント」地球温暖化で中止の危機

朝鮮労働党は、全国の工場、企業所などの単位(職場)に対して、氷の彫刻祭典を観覧し、スキー場を利用せよとの指示を下した。

しかし、実際に現地を訪れた人はわずかだった。宿泊費、食費、入場料などは自腹を切ることを求められたためだ。また、ツアー参加は強制されなかった。そんな経済的余裕のある人はほとんどいないことが考慮されたためのようだ。結局、希望者だけを集めて、光明星節とイベント開催の祝賀行事の参加者として現地に向かわせることになったという。

まず、三池淵までの交通費として3万北朝鮮ウォンかかる。そして、氷の彫刻祭典の入場料は6000北朝鮮ウォン(約102円)で、スキー場の利用料とスキーウェア、スキー板のレンタル料金は1万6000北朝鮮ウォン(約272円)だ。1泊2日のツアー料金はなんと30万北朝鮮ウォン(約5100円)だった。

リフト代とレンタル代だけでも1万円前後する日本に比べれば、とても安く感じられるが、北朝鮮の人々にとってはかなりの負担になる。

最近、賃上げが行われ、この地域の平均的な月給は10万北朝鮮ウォン(約1700円)に引き上げられたが、それでも飲まず食わずで3カ月貯金してようやく調達できるほどの大金だ。

ただ、外国人料金と比べるとはるかに安く設定されてはいる。

先日、コロナ後初めて北朝鮮を訪れたロシア人ツアーの場合、スキー場利用料金は、ゲレンデの利用料、スキーウェア、スキー板、ヘルメットなどのレンタル料を含めて1日100ドル、ケーブルカーの乗車料金は15ドルと言った具合で、北朝鮮国民より圧倒的に高い。

(参考記事:「興味深い体験だった」コロナ後初、北朝鮮を訪れたロシア人観光客のホンネ

首都・平壌の東にある陽徳(ヤンドク)温泉文化休養地は、オープン直後にコロナのパンデミックが始まり、当てにしていた中国人観光客が全く来なくなってしまった。誰もいないスパリゾートでは、プロパガンダに使えない。そこで、多くの市民が半強制的にツアーに参加させられるはめになった。

三池淵は、中国との国境に接しているため、特別な旅行証(国内用パスポート)の所持が求められる。しかし、その手続きにはかなり時間がかかるため、両江道以外の地域からの集客は見込めなかった。そこで、道内の住民に「三池淵観光確認証」という三池淵の行き帰りだけに使える移動許可証を発行し、ツアー、個人を問わず、訪問を認める姿勢を取った。

別の情報筋も、費用が高すぎて貧乏人は誰も参加できなかったと伝えている。

1日あたりの費用は10万北朝鮮ウォンで、ホテルの宿泊費がない人は、民泊を利用することになった。

「一般住民も利用できるようにレベルに合った価格を提示しなければならないのに、誰のために観光地を作ったのかわからない」
「コメが6200北朝鮮ウォン(約105円)以上するのに、誰が2日間で20万北朝鮮ウォンに参加する人はどこにいるのか」(市民の声)

光明星節を祝ってオープンしたスキー場なのに、ガラガラでは絵にならない。そこで、無理やり人をかき集めることにしたようだ。

(参考記事:乗客が餓死する高原列車で行く北朝鮮「ブラック温泉」リゾート

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