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サルはなぜB型肝炎ウイルスに感染しないのか

Digital PR Platform / 2024年12月3日 10時0分

 以上の結果から、mNTCPではR158が引き起こす立体障害とN86での結合不安定性の二か所によって、preS1結合によるHBV受容体機能を失っていることが明らかとなりました。また、hNTCPでも内因性基質である長鎖胆汁酸によりpreS1結合が妨げられることも判明しました。


[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1706/100224/500_241_20241202125602674d2fd29b73e.jpg


図. HBV preS1結合はmNTCPタンパク質の2つの領域によって妨害される。
(a) mNTCP(シアン)-胆汁酸(オレンジ)複合体のクライオ電子顕微鏡構造。
(b) mNTCP (シアン)とHBV preS1(赤) (PDB: 8HRX) の仮想的重ね合わせ。
(c) mNTCPの86番目アスパラギン(青)によってHBV preS1結合は不安定となる。
(d) mNTCPの158番目アルギニン(青)によってHBV preS1の結合は妨害される。

 本研究は、hNTCPと96.0%ものアミノ酸が相同なmNTCPがHBV受容体となり得ない理由を、タンパク質構造の特徴の違いから明らかにしたものです。これによって、なぜサルがHBVに感染しないかの本質が理解できました。サルは、胆汁酸輸送能力を損なうことなくHBV感染を回避する機構を、進化の過程で獲得してきたと考えられます。

 本研究を主導した東京理科大学大学院の渡士幸一客員教授は、「ヒトとサルは進化的近縁種で、ゲノム配列が似ているにもかかわらず、サルはHBVに感染しません。このような『種間の壁』は、異なる動物からさまざまなウイルスの流入を守る役割を果たしています。一方、ウイルスの方もこの壁を何らかの方法で越える機会をうかがっていて、そこにウイルスと宿主の攻防があります。新型コロナウイルスのパンデミックも他の動物から種間の壁を越えてヒトに感染することで発生したと考えられており、種間の壁の実態を明らかにすることは大変重要です。私たちは『サルに学ぶ』という観点で研究を進めてきました。今回の研究成果は、ウイルスが動物種を越えて流入・伝播するリスクを考察する上で有用な情報です」と、コメントしています。

研究助成
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)、日本学術振興会科研費等の支援を受けて行われたものです。

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