トリプトファン-キヌレニン経路の変容により誘発されるうつ病の新たな病態メカニズムを解明
Digital PR Platform / 2024年12月12日 14時44分
藤田医科大学医療科学部レギュラトリーサイエンス分野 毛利彰宏教授、長谷川眞也大学院生、國澤和生准教授、鍋島俊隆客員教授、齋藤邦明学部長らは、精神・神経病態解明センター 神経行動薬理学研究部門 永井拓教授との共同研究により、うつ病に関与する新たな病態メカニズムの解明を行いました。これまでの研究で、必須アミノ酸のトリプトファンを起点としたトリプトファン-キヌレニン経路の変容がうつ病に関与することは示唆されていました。しかし、ストレスがこの経路をどのように変容させるか、その変容がうつ病に関与するのかは未解明でした。 本研究では慢性ストレス負荷によりうつ病モデルマウスを作製し、行動学的・神経科学的解析を行いました。その結果、うつ病に深く関与する脳領域である海馬※1において、慢性ストレスはトリプトファン-キヌレニン経路内の代謝物であるキヌレン酸を増加させました。このキヌレン酸は、α7ニコチン性アセチルコリン受容※2に結合し、社会機能や意欲の低下などの抑うつ様行動を引き起こしていることがわかりました。また、慢性ストレスによるキヌレン酸の増加にはキヌレニン-3-モノオキシゲナーゼ(KMO)※3を発現するミクログリア※4の減少が関与していることを発見しました。さらに、このミクログリアの減少にはストレスホルモンであるコルチコステロンの長期的な曝露が寄与していることがわかりました。 これらの研究結果は、日々の慢性的なストレスが脳内でキヌレン酸を増加させ、それがうつ病病態を形成していることを示唆しています。そのため、α7ニコチン性アセチルコリン受容体※2は新たな抗うつ薬の標的となることが期待されます。
本研究成果は、学術ジャーナル「British Journal of Pharmacology」のオンライン版で2024年12月10日に公開されました。
論文URL :https://bpspubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bph.17407
研究成果のポイント
慢性ストレスによる抑うつ様行動には脳内の海馬※1におけるキヌレン酸の増加を介したα7ニコチン性アセチルコリン受容体拮抗作用が関与することを証明
慢性ストレスによるキヌレン酸の増加には、コルチコステロンの長期曝露を介したミクログリア※4の減少が関与していることを発見
α7ニコチン性アセチルコリン受容体※2は新たな抗うつ薬の標的となる可能性を示唆
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