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【名古屋大学】日本人の自閉スペクトラム症患者の遺伝的背景を探索 ~国内初の全ゲノム解析結果を活用し、病態ベースの診断へ~

Digital PR Platform / 2024年12月13日 14時5分




【研究背景と内容】
1.研究背景
 自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的コミュニケーションや対人関係の障害、パターン化した興味や活動といった特徴をもつ神経発達症です。有病率は約1%と報告され、発症には遺伝要因が強く関与します。21世紀のゲノム解析手法の著しい発展により、ASD関連の一塩基バリアントやコピー数バリアント(CNV)が全エクソームシーケンス解析やアレイCGH(注10)により検出されてきました。しかし、上記の手法は小規模のCNVやCNV以外の構造バリアントは検出できません。この課題を克服する全ゲノムシーケンス解析は欧米諸国では行われ始めていましたが、日本人のASD患者での実施例の報告はありませんでした。

2.研究成果
 本研究では、我々の以前の研究(Kushima I et al., Biol Psychiatry, 2022)で病的意義のあるCNVが検出されていないASD患者57人および両親のDNAに対して全ゲノムシーケンス解析を実施しました。次世代シーケンサーから出力されたデータに基づき、全ゲノム領域にわたる一塩基バリアント、構造バリアント、短鎖リピート配列を検出しました(図1A)。検出したバリアントのうち、常染色体顕性遺伝形式が想定されるde novoバリアント(患者にはあって両親にはないバリアント)、常染色体潜性遺伝形式およびX連鎖性潜性遺伝形式が想定されるバリアントを抽出し、その中でもタンパク質機能に影響を及ぼしうるバリアントに着目しました。タンパク質機能に影響を及ぼしうるバリアントのうち、既知のASD関連遺伝子上にあるバリアント(病的バリアントの候補)が57人中18人(31.6%)に検出されました。知的発達症を伴う23人のASD患者では10人(43.5%)に既知のASD関連遺伝子上にあるバリアントが検出されました(図1B)。



 また、既知のASD関連遺伝子にかかわらず、タンパク質機能に影響を及ぼしうるバリアントがある遺伝子に着目し、遺伝子オントロジー解析により病態に関わる遺伝子セットを探索した結果、「成長の制御」と「ATP依存性クロマチンリモデリング活性」に集積していました。
 検出されたバリアント情報を使用して、近年話題となっているタンパク質の立体構造予測ソフトウェアであるAlphaFold3(注11)を用いて、患者に検出されたバリアント由来のタンパク質の立体構造を予測しました。その結果、細胞の増殖を制御するPTENタンパク質をコードする遺伝子のバリアントで、野生型と異なるパターンを示す可能性が示唆されました(図2)。当バリアントは、既報でPTENタンパク質の核への移行を阻害することが知られており、AlphaFold3で予測されたバリアント由来タンパク質の立体構造と機能的意義を関連づける例となりました。

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